電子の砂漠で踊るキミ 〜新人Vtuber、絵玲華・ロデオ・メトロドニックです!〜

あるかん

[自己紹介]絵玲華、本日デビューです!

 「クソガンモ!」


 あるマンションの一室に、男の怒号とコントローラーを壁に投げつける音が響く。台風の接近で荒れていた天気も通過後はすっきりと晴れ渡り、外は穏やかな日差しに包まれていたが、男の部屋はカーテンが閉め切られているせいで薄暗くて湿っぽく、カビと床に放置されたままのファーストフードのゴミが入り混じった臭いが漂っている。


 「チッ、やってられるかこんなクソゲー」


 未だ怒りが収まらない様子の男は吐き捨てるように言うと、テレビの電源を落とした。画面に映っていた倒れたままの男のアバターが消え、唯一の光源を失った室内は一層暗くなった。


 この男の名は太平健一おおだいらけんいち。28歳。都内の私立大学を2留した末に卒業後、就職した文房具メーカーでも持ち前のだらしなさを発揮し試用期間中に8回無断欠勤を繰り返しそのまま自然退職。以降はアマのe-sports選手と週3のアルバイトの二足の草鞋で活動を続けていたが、2週間前にバイトをクビになってからは好きな時に寝て好きな時に起きる自由な日々を過ごしていた。


 仕事も友人も、希望もない。それでも、太平はただ目の前のゲームの勝敗にだけ一喜一憂し、今の生活や将来に対する不安、恐れなど抱いたこともなかった。

 太平の父は地方都市の市議会議員で、実家には腐るほどの金がある。太平が都内で1人で暮らすには広すぎる今のマンションに住めるのも親が家賃を出してくれているおかげだし、普段の買い物やネット上での支払いも親に与えられたクレジットカードが全て解決してくれる。彼が唯一恐れるものがあるとすれば、現金しか使えないラーメン屋くらいだ。


 「はーー萎えたわ……今日はもうやめだやめ」


 太平はゲーミングチェアに腰掛けたまま床を蹴って真っ暗なテレビ画面に踵を返すと、今度はテーブルの上のパソコンを起動した。モニターに動画投稿サイト「Metubeミーチューブ」のホーム画面が表示される。画面に所狭しと並べられている動画のサムネイルには、美少女のアバターが歌ってみた動画やさまざまな企画に挑戦する様子が映っている。

太平は一通りサムネを眺めると、新着の動画をクリックした。たちまち画面いっぱいに美少女のアバターが表示され、甲高い声色の挨拶が響く。太平は無表情のまま、しかし食い入るように画面を見つめている。

 FPSゲームに並ぶ太平のもう一つの趣味にして彼の生きがい。それが「vtuber」の動画、配信視聴だった。


 Virtual Metuber、すなわちvtuberとは、架空のキャラクターの姿で動画投稿や配信活動を行う者のことであり、近年その人気は益々高まりを見せ、その総数は5万人を突破。彼等の活躍はMe tube内だけに留まらず、地上波への進出やメタバース上でのライブイベントなど活動の幅を広げている。

 バーチャルといっても彼、もしくは彼女らの多くは「中の人」が存在し、モーションキャプチャを身につけてリアルタイムで動きを反映させており、最近では高い技術力によりバーチャルの垣根を超えた実写動画などを投稿するVtuberも存在している。


 太平は以前からvtuberの配信や切り抜き動画をよく視聴していたが、アルバイトをクビになってからはゲームと睡眠以外の殆どの時間をvtuberの追っかけに費やすようになり、最近はまだデビューしたてでチャンネル登録者数人程度のvtuberの配信にも顔を出すようになっていた。

 今彼が視聴しているチャンネルも先月デビューしたばかりの新人で、流行りのシューティングゲームをプレーする様子を配信しているが同時接続数は100人にも達していなかった。

 

 「フフッ……『くしゃみたすかる』っと…………ん?」


 太平が缶ビールを片手にキーボードを叩き不気味なコメントを投稿していると、画面の隅にあるオススメ欄に見慣れないサムネイルがあることに気付いた。チャンネル名も初めて見るものだ。

 なんとなく興味を惹かれた太平は、そのサムネイルをクリックしてみた。たちまち画面が切り替わり、大きなテンガロンハットを被った美少女のアバターが表示された。


 「やっほー!画面の前のみんなー!¡hola! 新人Vtuberの絵玲華・ルォデオ・メトロドニックでーす!今日は私のデビュー生配信に来てくれてありがとー!」


 彼女は見た目に違わぬ元気一杯な自己紹介をしながらちぎれんばかりに両手を振っている。その動きに合わせて金髪のおさげが彼女の両肩の上で揺れる。

 

 「絵玲華・ロデオ・メトロドニック?……聞いたことない名前だな…………」


 太平は手元のスマートフォンからSNSのアカウントを起動すると、彼女の名前で検索をかけた。

 一般的にVtuberがデビューする際は所属事務所からの発表やSNSのアカウント等が先んじて公開されるのが通例だ。しかし、「絵玲華・ロデオ・メトロドニック」はアカウントが存在しないどころか、彼女に関連した呟きや投稿も何も存在しなかった。


 「事務所に所属している形跡もなし、下準備もゼロ……『未知数』ってわけか……。面白い、お手並み拝見といこうじゃないか」


 太平は検索する手を止めてそう呟くと、パソコンの画面に目を戻した。配信の来場者数は太平を含めて現在6名。Vtuberのデビューにしては過疎配信もいいところだが、当のチャンネル主は気にする様子もなく元気に1人喋りを続けている。


 「あたし、Vtuberってずーっと憧れてたんだよねー!みんなキラキラしてるし、楽しそうじゃん?それに…あっ!みんなともお喋りできるし!?だからみんなどんどんコメントとか、チャットとか送ってねー!待ってるよー!あ、あたしのことは絵玲華って呼んでね!まあなんでもいいけど!それでね……」

 「おいおい、止まんねえな……なんなんだコイツ……」


 太平は次から次へとお喋りが止まらない絵玲華を前にしばし圧倒されていたが、気を取り直すとキーボードの上で指を踊らせた。暗い室内にタップダンスのような軽快なステップが響きわたる。


 『KEN:絵玲華ちゃんデビューおめでとう(^^)』

 『KEN:今日の配信では何するの?』


 殊更に大きなタイピング音が響くと、数秒後に絵玲華の配信画面にコメントが表示された。

 絵玲華はハイテンションでひたすらマシンガントークを続けていたが、太平のコメントに気がつくと文字通りにそのエメラルドグリーンの瞳を輝かせた。


 「わー!初コメントありがとー!嬉しいなー……えーと、『今日の配信では何するの』……何する、何するかー、うーん……実は特に何するとか決めてないんだよねーアハハハハ!」


 無邪気な様子で笑っている絵玲華を見て、太平は呆れるように口を開いた。


 「ノープランって……本当にやる気あるのかよ?……はぁ、仕方ねーな」


 大仰にため息をつきながらキーボードを叩く太平。再びパソコンの画面上にコメントが表示される。『KEN:絵玲華ちゃんは何か特技とかあるの?見てみたいな(^^)』


 「なんかとりあえずみんなとお喋りすることしか考えてなかったんだよな〜、逆に何かしてほしいこととかある?……あ、またコメント!……特技か〜〜、何かあるかなー?」

 

 絵玲華はコメントに気付くと、顎に指を当てて考え込むような仕草を見せる。


 「うーーん……特技ねー……あっ!みんなの住んでいる場所、都道府県とか当ててあげよっか!これ本当に当たったら結構凄くない?」


 そう言ってニコニコ笑う絵玲華。太平はポカンと口を開けたまま画面の中の彼女を見つめていたが、急に自分のことを呼ばれ、ビクッと身体を震わせた。


 「まずはコメントくれたKENさんの住んでるところ当ててあげるね!うーん……東京! どう?当たってるでしょ?」


 太平は背中に冷たいものが走る感覚に襲われた。彼女の解答は正解だった。太平は今都内のマンションからこの配信を視聴している。

 得意気な顔の絵玲華と目が合うと、何故か本当に見つめられているかのような錯覚に陥った。その錯覚を振り払うように目を閉じて机を蹴飛ばしパソコンから距離を取る。


 インターネット上の存在に突然個人情報を特定されたことに対し多少の恐怖があったものの、少しすると徐々に冷静な思考が戻ってきた。


 「……フン、こんなのたまたまに決まってる。偶然当たっただけだ。それに、今は7人に1人が東京に住んでいるんだ。当てずっぽうで言ったって当たる確率だろ」


 冷静さを取り戻した太平の耳に彼女の明るい声が入ってくる。


 「あれ?KENさんからコメント返って来ないな……もし当たってたらスパチャ送ってねー!」

 「……チッ、こんなことでいちいちスパチャなんか送るわけねーだろ」


 画面の前で思わず舌打ちする太平。当然彼女の声は無視してコメントもスパチャも送らなかったが、何故か視聴を中断することはできなかった。


 その後も新人Vtuber絵玲華・ロデオ・メトロドニックは陽気なテンションで自分の好きな話題を気の向くまま一方的に喋り続けていた。彼女の設定(年齢は5歳)やインターネットに関する話題など取るに足らない内容が殆どだった。


 「……それにしても、視聴者数って意外と増えないもんなんだねー」


 SNSで見かけた面白画像の話題が一区切りついたところで絵玲華は画面の左端を覗くような体勢になって言った。

 配信が始まって30分ほど経過していたが、現在の視聴者数は19人。コメントも太平が投稿したものを除くと2.3件のみだった。


 「Vtuberの放送とかで何万人とかアクセス集めてスパチャも何百万って稼いでるのをよく見かけたからあたしでもできるかなって思ったんだけど、中々思うようにはいかないね〜。どうすればもっと稼げるかな?」


 飄々と話す絵玲華を見て、これまでぼーっと流し見していた太平は次第に自分の内から沸々と怒りが込み上げてくるのを感じた。彼女の言動は彼が人生を賭けて応援しているVtuberたち、ひいては彼自身に対する冒涜に感じられた。

 先人たちの苦労を知らない無知な新参者に対して湧き上がる怒りに任せてキーボードを叩く。


 『KEN:配信で稼げるVなんてほんの一握り。その一握りの人気者たちだって色んな努力をして今の地位を築いてる』


 『KEN:Vtuberを甘く見るな』


 続け様に2つのコメントが投稿され、画面に表示される。絵玲華はコメントが投稿されたことに一瞬喜んだが、その内容を読んでこれまで見せなかった真剣な表情に変わった。常に明るいハイテンションだった彼女も流石に堪えたのだろうか。


 「ふん、どれだけ甘い考えだったのか今更気付いたのか。大体、デビューしたてのVtuberがスパチャを貰おうなんてのが素人丸出しの考えなんだ。収益化の仕組みすら分かって……」


 太平が画面の前でぶつぶつと早口でVtuberについて講釈を垂れていると、黙りこんでいた絵玲華が静かに口を開いた。


 「そっか……確かにKENさんの言う通りかもしれない……」

 「っ……」


 これまでの明るかった口調から一転した静かな声のトーン。エメラルドグリーンの瞳が微かに潤んで見えるのは気のせいだろうか。太平も思わず言葉に詰まる。

 

 「人気のVtuberになってお金を稼ぐには色々努力が必要なんだね。あたし、何も知らなかった……。KENさん、教えてくれてありがとう、残念だけど大物Vtuberになるのは諦めようかな……」


 数多のVtuberを見守ってきた太平にとって、彼女らの引退の場に立ち会うのはさして珍しいことではなかった。何十万のフォロワーを抱える人気Vtuberでも突如として引退を余儀なくされることもある。まして昨日今日デビューしたばかりのVtuberがファンを獲得できないまま志半ばでこの業界を去っていくとなど日常茶飯事だ。

 しかし、太平は目の前で寂しげな表情を浮かべている美少女のアバターから目を離すことができないでいた。

 再び絵玲華が口を開く。


 「……大物Vtuberになるのは諦める代わりに、スパチャだけいっぱい貰っておこうかな!KENさんありがとー!」


 さっきの落ち込みようが嘘のように、絵玲華は天真爛漫な明るい笑顔で画面に向かって手を振っている。支離滅裂とも思える彼女の発言に太平の脳内は疑問符で埋め尽くされた。

 

 「なっ……どういうことだよ、何言ってるんだこいつは……それに、今日デビューしたばかりの配信者が収益化できるわけ……」



 『KEN:¥10,000』



 突然、画面に赤く縁取られた無言のチャット『赤スパ』が表示される。送信したアカウントは太平のものだった。

 絵玲華は上機嫌で画面に手を振りウインクをかます。


 「わー!ありがと〜☆どんどん送ってねー!」


 あり得ない光景に言葉を失う太平。口を半開きにして呆然と絵玲華を見つめていたが、画面の上部に表示されている赤スパを見てようやく何が起きたのか気づいた。真っ暗な部屋に成人男性の絶叫がこだまする。


 「……は?……えっ!?なんだよこれ!!……なんでスパチャが……てか、これ俺のアカウント……!」

 


 『KEN:¥10,000』

 『KEN:¥10,000』

 『KEN:¥10,000』


 『KEN:¥50,000』



 太平が騒いでいる間に、画面は太平のアカウントから続々と送られる無言赤スパに埋め尽くされていく。太平は慌ててキーボードに飛びつき無我夢中で叩く。


 「ちょっと待てって!止まれ!止まれよ!クソッ……なんなんだ、新手のコンピューターウイルスなのか!? ……クソッ、クソッ!!」



 『KEN:¥50,000』

 『KEN:¥50,000』

 『KEN:¥50,000』

 『KEN:¥50,000』

 『KEN:¥50,000』


 

 サイトを閉じようとあちこちクリックしてもパソコンは何も反応しない。その間にも高額のスパチャは止まることなく連投され続けている。太平の額からは汗が吹き出し、マウスを握る手は激しく震えている。


 「ハアッ、ハアッ……ど、どうしよう……どうすれば…………そうだ!」


 太平はそう叫ぶとドタドタと床を転がり、コンセントからパソコンのプラグを思い切り引き抜いた。

 ブツンッと音を立てて絵玲華はモニターから姿を消し、唯一の光源を失った部屋は闇に包まれる。真っ暗な空間で太平は四つん這いになったままプラグを片手に大きく肩で息をする。まだ震えが止まらない。


 「ハアッ、ハアッ、ハアッ…………終わったのか……?……なんだったんだよ、あいつは……」

 

 何とか呼吸を落ち着かせ、先ほどの光景を思い出そうとする。上手く思考がまとまらない。


 突然、けたたましい電子音が室内に響きわたる。神経過敏になっていた太平は思わず身体をのけぞらせ、尻餅をつく。パソコンデスクの上に小さな光が灯り、振動している。スマホの着信音だ。


 すっかり腰が抜けていた太平は怯えた目でスマホを見つめていた。振動を続けるスマホが机の上から落下し、大きな音を立てると太平は「ヒィッ」と情けない悲鳴をあげた。

 スマホは太平の足元まで転がってくると、勝手に画面が切り替わった。

 

 「も〜〜、なんでパソコン閉じちゃったの?スパチャまだ全然足りないよ〜!」


 真っ暗な部屋に明るい少女の声が響く。


 「ヒッ、お、お、お前……!」


 画面に映っている絵玲華を見て、太平は声を震わせる。目の前で何が起きているのか、理解できない恐怖に襲われていた。


 「ふーーん、KENさん結構良い部屋に住んでるんだね〜!お金もいっぱい持ってそう!……うーん、でもこのモニターじゃ小さいなあ…………あっ!いいの見つけた!それっ☆」


 絵玲華はテレビ通話でもしているかのような調子で太平の部屋を眺めていたが、壁に掛かった60インチ16kテレビに目を留めると手を伸ばすようにして指を鳴らした。

 次の瞬間、16kテレビの電源が入り、真っ白な画面に絵玲華が姿を表した。

 

 「それじゃ、お邪魔しまーす!」


 怯えている太平をよそに絵玲華は明るい口調で言うとテレビの縁に手をかけるようにして身を乗り出してきた。

 モニターがバチバチと激しく火花を散らす。3D映像のように絵玲華の姿が浮かび上がってくる。

 モニターの下部に足をかけピョンと飛び出すと、モニターから一際大きな火花が弾け絵玲華の実像は完全にモニターから独立した。


 「よっと……ふう。……うーん、いい部屋だけどきったないねー!ちゃんと掃除したほうがいいよ?ま、あたしはお金があれば気にしないけどさ!」


 突如太平邸に降臨した絵玲華はぐるりと周囲見回し、配信時と変わらない陽気な口調でそう言うと室内を物色し始めた。


 信じられない光景の連続を前に、太平の精神は既に限界を迎えていた。とにかくこの異様な空間から逃げ出したい。自分の部屋をうろつく正体不明の美少女を前に、太平は逃げることしかできなかった。

 呼吸を必死に抑え、床を這いつくばるようにして後ずさる。震える手がテーブルにあたり、エナジードリンクの空き缶が落ちる。小さく悲鳴をあげる太平。室内を物色している絵玲華の手が止まる。


 「あっ、忘れるところだった!」


 絵玲華の頭上で火花が弾ける。くるっと振り返ると、地面を滑るようにしてテーブルの側で震えている太平に近づいてくる。

 今にも泣き出しそうな太平に顔を近づけると、彼の額に笑顔で指を近づける。


 「ちょーっと静かにしててねー☆」

 「ヒッ、えっ…………キャンッ!」


 バチンッと閃光が弾けるのとともに、太平の視界は真っ暗になった。




〜〜



 「…………はっ!」


 遠くから聞こえるスマホの着信音で太平は目を覚ました。

 常に真っ暗な室内のせいで、今が昼なのか夜なのかわからない。どのくらい眠っていたのだろう。


 「……夢……だったのか……?」


 眠る前、最後に見た光景を思い出す。自分の顔に向かって手を伸ばす画面から飛び出してきた美少女のアバター。一瞬背筋が寒くなる。あれは幻だったのだろうか。

 スマホの着信音が太平の思考を妨げる。ぼんやりとした頭のまま、スマホに手を伸ばす。画面を見ると、母親からだった。

少しほっとした気持ちで通話に出る。


 「あっ、やっと出た!全く、いつまで寝てんの!」

 「……チッ、うるせーな、いいだろ別に……」

 

 いつもは鬱陶しい母親の声も、今聞くと安心させられる。しかし、電話口の母親の様子はいつもと違う。


 「アンタね全く……って、そんなことはどうでもいいの!今朝クレジットカードの会社から電話があったんだけど、アンタ、500万円も何に使ったの!?」

 「えっ!?500万!?」


 スマホを片手に思わず絶句する。同時に、身体の表面がにわかに粟立つのを感じる。

 さっきの出来事、Vtuber絵玲華の存在は夢じゃなかったのか!?


 「何アンタが驚いてんの!一晩で500万なんて、何に使ったかキッチリ説明してよ!……ちょっと、ちゃんと聞いてんの!?」


 スマホのスピーカーから母親の金切り声が響く。しかし太平の意識は既に別へ移っていた。いつの間にかパソコンのモニターに電源が入っており、真っ白な画面にローマ字の筆記体が並んでいる。


 『Eleca rródeo Metrodonic 』


 文字列の周りで火花が弾ける。バチバチと明滅する度に文字の並びが入れ替わっていき、やがて2つの単語が出力された。


 太平の頬に汗が伝う。

 

「…… Merodeador Electrónico(電子の略奪者)……」

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