Count 10 大魔王、暴かれる驚愕の過去

「円東寺クン、パパさんいたんだ。ボクてっきり……」

 ん? ああ、勘違いさせたか、ごめんな。まだ両親とも健在だよ。まあコイツを父親と呼ぶ気は1ピコグラムもないけどな!

 そのクソオヤジは余裕振ってその場に立っている。

「存分に感謝するがいい。この【きみなぐ!】を立て直そうというお前に協力しようというのだ。有り難くて涙が出るだろう?」

 どこまでも上から目線だな。だが本当は別の理由があるんだろう? 大方の予想はつくがな。

「な、何のことだ」

 アンタがオレから奪っていった魔子マミが底を尽いたんだろう? それで【きみなぐ!】から引き出そうとしたらそれもできなくなっていた。それで様子を見に来た。違うか? 遊びまくって使い果たして、こんなふうになるなんて考えもしなかった。そうだろうがよ!

「ぐっ……そ、そもそもお前は何を勝手にしているのだ! 管理者はこの吾輩なのだぞ!」

 それ、全然似合ってないぞ、一人称わがはい。背が低いのに無理してマントなんて着るから端っこ踏んでるし。クックック。

「余計なお世話だ! チビなのは吾輩のせいではない!」


 だいたいアンタ、逃げた時点で管理者失格……いやそれより前だな。何も管理なんてしてなかっただろうしな。

 オレが来たときの【きみなぐ!】の荒れようは、廃業した遊園地さながらだったぞ。それをオレの貯めていた魔子マミを使ってちまちま修復して、非効率だった汲み上げポンプを改良して、だだ漏れだったダムも目張りしたんだ。そしてこれからというときにブラックバスを放流? ありえんだろ、1000パー無いわ。

「吾輩を外来魚扱いか! 少しくらい敬意を払おうと思わんのか!」

 敬意は人に求めるものじゃない。年や立場に見合った行動をしない人間が尊敬されるわけがないだろう。朝礼で校長先生に言われなかったか? ああ、アンタ学校に行ってないんだっけ?

「そんなものは些事だ! 吾輩は始祖の血統に連なるものなのだからな。現に吾輩は【琿虹】の元老院から免状を受けた大魔法使い……」

 その金を積んで箔付けした栄誉も、最初の討伐任務で逃げ出して、あっさりメッキが剥がれたんだろう? それで名前通りにヒキコウモリに。

「言うな! くそっ、誰だお前に余計なことをベラベラと喋ったやつは!」

 母さんだよ。もっと言ってやろうか? 結婚したときの経緯とか。アンタは結婚してくれなきゃ始祖の遺品を焼くと母さんを脅したんだって? しまいには涙と鼻水でドロドロになった床に土下座して……

「ええぃ、うるさいうるさーい! もう黙れってばよぅ!」

 麒麟人は涙目で小さいファイヤーボールを投げてくる。それもガス欠で届いてないけどな。


 だったら最後のチャンスをやろう。アンタが管理者だって主張するなら【きみなぐ!】の正式な名前を言ってみろよ。

「そんなもの簡単だ! きみ、君な……そうだ! 君とならグットバートナー!」

 そんなこったと思ったよ。不正解だ。そこでベソかいて一生転がってろ!


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