第4話 2.5次元が歴史モノを救うかもしれない!

こんにちは、坂口です!

このエッセイでは、かなり暗い問題ばかり話題にしてたのですが、たまには希望の湧く話を!


前の章で少し触れた通り、わたしは元教員です。そこでヤベーくらいの活字離れと歴史離れを目撃しまして、「何かせねば!」と一念発起して歴史入門書を書くようになりました。(アマゾンで出してるよ。立ち読みしてね)


……ていうと、いかにも子供らの活字離れに危機感を覚えたように聞こえますよね?違うんです。わたしが衝撃を覚えたのは、同僚の先生たちです。


先生たちってのは、しょっちゅう授業研究会を行って「より良い授業」のやり方を研究してるのですが、ある時、国語の授業研でこんなことが……


「国語を教えるなら、まずは先生がたくさん本を読まないと!いい本をたくさん知ってないと、子供に読解も書き方も教えられないよ!」


国語指導で有名な年配の先生が、若い先生方にこう言ったんですよ。国語を教えるために読書をたくさんするなんて、言われなくたって当たり前のことだと思うんですが、ところが若い先生たちは、


「本って全然読んだことないです。時間もないし……」

「てゆーか、何を読めばいいんですか?どれ読めばいいか分かりません」


……もう、なんて言ったらいいのか……。よくそれで、「先生」って呼ばれて恥ずかしくないね⁈って思いました。そうか、今、教える側の先生が本を全然読まないんだ。活字離れなんて言葉がはやってずいぶんになるけど、先生の間でさえ、それが起こってるんだ。そんなヤベー時代なんだ!


まあ、それで本を書き始めたわけです。目指すは、「本読まない先生たちが、面白く読めて、授業にも役立たせることができる歴史の本」です!とにかく書いて、書いて、アマゾンに出しまくりました!


こうして走り続けること、約十年!その成果は……ほぼ売れません。当たり前ですね、無名作家ですから。


ただし――「ほぼ」です。ゼロじゃないです。ある程度は売れたんです。その、買ってくれた人たちが、わたしに素晴らしい世界を教えてくれたんですよ。その「素晴らしい世界」とは、2.5次元と呼ばれるものです!


ご存知、2.5次元とは、漫画やアニメの世界を2次元のニンゲンがミュージカル化した奴なのですが……わたしは全然知らなかったのですが、実は歴史モノがムチャクチャ多いんですね!


これを知ったきっかけは、わたしが書いた作品「曽我兄弟が熱を込めて」が、みょ~にバカ売れした時のことです。奇妙に思って調べたところ、


「曽我兄弟が2.5次元でミュージカルになってた」→「曽我兄弟ファン急増」→「コアなファンがわたしの本を見つけて買ってた」


とゆーことが分かったのです!(お気づきでしょうが、この2.5次元は刀剣乱舞だ!)


「いつの間に、こんなことに!でも曽我兄弟って……相当コアな歴史ファンでも知らない人ばっかりなのに、ミュージカル化って……?一体どんなミュージカルなんだい?」


その場でネットで調べまして、見ましたよ、この2.5次元の世界!いや、正直、最初は腰抜かすほどビビりました。こ、これはマジで曽我兄弟?鎌倉時代の人?イイクニ作ろうの時代?


なんか知らんがビシッとスーツ着てるし、頭がカラフルだし、顔なんかギリシャ彫刻のような!


お分りでしょうが、わたしはマジで古いタイプの人間なので、このリアルアニメな世界には仰天でした。目の色は何種類もあるし、髪形は地球の重力に逆らってる人もいるし、着てるものは平安朝からSFなものまで!ろくに勉強しないでテキトーに書いてる歴史漫画はムカつきますが、ここまで独自の世界にしてると、むしろ尊敬しかありません……!


さて、仰天しながらいろいろ見てるうちに、「こういう歴史の入り方って、最高なんじゃ?」って思ったのです。


皆さんも身に覚えがあるでしょうが、学校じゃ新選組とか曽我兄弟とか、幕末のサイコーに楽しいキャラクターとか、教えてくんないんです。時間がないから(先生が知らないからっていう理由もありますが)。でも、歴史ってそういう、ちょこっと脇道にそれたキャラクターこそ魅力なんですよね。


そういうキャラクターに、2.5次元がスポットを当て、きらびやかなミュージカルにして、ファンに歴史の面白さを伝えてくれているのなら、それは素晴らしいことじゃないですか……!


ところが、この2.5次元の世界、いわゆる「オタク」と呼ばれるジャンルですから、心無い言葉を浴びせられることも…。


アタマが固い歴史ファンや専門家の間で、2.5次元のことを「あんなの歴史じゃない」とか「邪道だ」といかいう人が結構いて、2.5次元ファンの方が「あの……すみません、アニメでファンになりまして、勉強不足なんですけど……」っておそるおそる言う場面をちょくちょく見かけます。これは嘆かわしいことです。こんなのはタダのいじめで、本当にココロが狭いです。


どんな学問も、「興味を持つきっかけ」は何だってかまわないはず。アニメだろーが、テレビだろーが、何だっていいのです。一番大切なのは、「それにのめり込んで、もっと知りたい!と夢中になること」のはず。歴史の楽しみ方なんて、百人いりゃ百通り。その人の自由でいいはずです!


わたしは「曽我兄弟より熱を込めて」を書いたきっかけで、その地元の寺社仏閣を回ったのですが、そこの神主さんや住職さんが、


「もう地元でも忘れられかけてるこの神社に、2.5次元ファンの方が最近たくさん来てくれるようになった。このままじゃ曽我兄弟が完全に消えてしまうかと危機感を覚えていたから、本当にうれしい」


とおっしゃっていたのが忘れられません。歴史離れで、どんどん危機に追い込まれていく史跡を守る人々は、この日本中に数えきれないほどいます。その人たちと、2.5次元でファンになった人たちが、こうして新たな絆や出会いを産み出していけたら、それは新しい歴史の楽しみ方、新しい産業を築いていけるかもしれません。


……長くなりましたが、要するにわたしが何を言いたいかといいますと――、学校の先生たちが本を読まないことにショックを受けて、「先生たちが読める本を!」と歴史モノを書き始めたわたしですが、今は、この2.5次元ファンの人たちが、これからの歴史モノを支えてくれるのではないか?と考えてるわけです!


2.5次元ファンの方、マニアの方。歴史にはたくさんの魅力的なキャラクターがいます。大好きなゲームやミュージカルを通じて、素晴らしい出会いを見つけて下さい!



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

歴史作家もラクじゃない 坂口 螢火 @uehara4869

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ