第10話

 勢いで魔王の味方宣言をしてしまったのだが…。後悔はしていない。

 

 しかし、あとから冷静に考えるとまるで告白してしまったみたいではないか…! 

恥ずかしくなって私の耳が赤くなっていった。すぐ後ろにいるレイ様は気づいているのだろうか…? 


 「よくやったティア。ご褒美だ。」

レイ様はそう言っていきなり後ろから私を抱きしめてきた。

 いきなり何をするんだよ…。この状況でバックハグは反則だ。 

 「ちょっと…!」 

私は驚いて声を上げたのだが、レイ様に口をふさがれた。 

「ダメ。声出したら、悪い人に見つかるでしょう?」

耳元でささやかれ私はまた緊張してしまう。 

私の右肩にレイ様の顎がのっているなんて…。思わず左に顔をそらした。 

 

 よく考えると、レイ様は私より少し身長が高いんだ。 

 美澄玲奈は身長178センチもあったので、正直立った状態で私を後ろから抱きしめられる人は少なかった。 

「よし。いい子だ。」 

 そう言ってレイはまた一段と強く私を抱きしめた。 

 これ以上体が熱くなったら、私の気持ちは気づかれてしまう。 

 それにこんな顔を見られたら、恥ずかしくて死んでしまう…。

  

 なにより、向かうとこ敵なしの私をこんな気にさせるなんて。

 

 やっぱりこいつは魔王なんだ。 

 

***

 

 ある程度ことが片付いたようなので私たちはもう一度ショッピングモールに戻った。 

私は置きっぱなしにしていた買い物カゴから大量の洋服を取り出し、「本当にいいのでしょうか?」とレイ様に尋ねた。

 

「待て。やっぱり、ボディーガードにワンピースは着せられない。ズボンも追加しろ。」

 レイ様は私から目をそらし、照れたような顔をしてそう言った。

「ちょっと待って!もしかして、さっき戦ってた時に?」 

私はからかうようにレイ様に尋ねた。 

  

 私も思い当たる節はある。大外刈りをした時に、思い切り反動をつけて投げたからその勢いでワンピースがヒラリとめくれ上がった。そんなことを気にしている場合ではないため続けて回し蹴りも体落としも完璧にきめたが、よく考えるとまずかったと思う。 

 「別に。見てないし…。」 

レイ様は顔を赤くして頭をかいた。これは絶対に見てたな。

  

 結局、20万円分くらいの洋服をレイ様に買ってもらった。 

その後は一緒にパンケーキを食べたり、本屋に立ち寄ったりして、あっという間に時は過ぎていった。 

 時々満面の笑みを浮かべる彼の姿を見ていると、本当にこいつが魔王なのかと疑いたくなった。(余計な詮索は怒りを買うかもしれないので控えておいた…。) 

 

 3時を迎えブライン様と合流すると、私は昼にレイ様が誘拐されかけたことを伝えた。

 ひどく驚かれていたが、同時にレイ様が無事どころか無傷だったことに気づき私の実力にも驚嘆していた。 

「レイ様とは仲良くなられましたか?」 

ブラインにそう尋ねられた。 

 

仲良くというか…。惚れたよ。文句ある?

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