第3話   教室から異世界

一限目の授業に間に合った。上崎は教室に着くまで質問責め「二条、なんか変よ。何もないところで話したり。もしかして、お化けでも見えてるの?」

僕は即答。「そうそう、お化け、お化け見えるんだ。夏だからな。

なあ、イケ。」苦しい言い訳だ。

イケも「そう、急に見えてさ。困るよなあー。」

上崎が「まあ、いいわ。」僕らは席へ着く。

授業が始まり、僕は窓際の後ろから2番目の席。横はイケ。上崎は一番前だ。

『朝、一番の授業が古典か。』正直退屈な授業だ。僕にはそそらない。しかしイケは好きらしく真剣に聞いている。

上崎はもちろん、ノートをとって真剣な顔だ。『横顔いいな。』スーッと気持ちが上崎にすい寄せられた。えっ、何を僕は。だめだ。だめだ。あの上崎だ。僕のアイスを取り上げた、食いしん坊のガサツな女子だ。ただの幼なじみだ。

僕は気持ちを切り替え、窓の外を見た。7月1日。雨の季節が終わり夏を待っている空の色だ。『気持ちがいいな。』

昨年の高1の7月1日の天気はどうだったかな?

何も覚えていない。まあ、そんなものか。

ただ時間だけは過ぎてるんだよな。

実感がないのはこわいな。

古典の活用形。あてられた生徒が立って呪文のように答えている。意味は分からないがリズムがいい。ボーっとした僕の脳内に言葉がしみてくる。イケが古典が好きだといってたこと、今ならなんとなくわかるな。

僕はノートをとるのをやめてまた窓の外を見た。

空に「えー!」パブロがいる。ここは2階だ。

僕は大声をあげてしまった。

先生が「二条君。大丈夫ですか?何かしました。」

「虫が。虫がいました。」みんなが笑った。横のイケも「二条、大丈夫?」

「あーあ、大丈夫だ。」

先生は「二条君、次、虫を見たら大声の前に先生を呼びなさい。」

?とりあえず「はい。」と返事をした。授業は続けれれた。

パブロが宙に浮いて僕に手を振っている。『あー、忘れていた。パブロ。』

学校がそうなのか?校門をくぐって教室へ行くと、不思議だが、学校以外のことはだいたい僕は忘れる。目の前のことしか入ってこない。僕は単純な人間だ。

異世界のベルガル王国の騎士団長パブロ。この世界に騎士候補をスカウトに来たんだった。選ばれた僕とイケ。放課後を待たず。このまま行っちゃおうかな。

横をみて「イケ、僕は行くぞ。」イケも窓の外のパブロを見た。「あー、行こう。」

僕の言葉と同時に眩しい光が教室を照らす。その中に上崎の顔が。





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