第38話 いざ、学園へ

 レイドたちは、今馬車で王都に向かっている。

 まずはレイドの生家のあるエッセンを通り、そこから王都シャロンに向かう予定だ。


「ふふーん!」

 レシティアはものすごく嬉しそうな顔で、レイドたちが乗る馬車に乗っていた。


「レシティア・・・ 君の馬車には誰も乗っていないぞ?」

「いいのよ、元々一人で行く予定だったから。あの人たちの休憩場所にでもすればいいじゃない?」


 今、ロイク、カインが馬車の護衛で外に出ている。

 お世辞にも治安が良いとは言えない。そのため、カインが事前に賊を見つけてはロイクが処分しに行く、そのような方法を取っていた。


「なんかすまないな・・・ 本当は私が護衛任務に就くべきなのに・・・」

「大丈夫よ! 貴方、バイセン家の化け物たちの足元にもおよばないんだから!」

「レシティア様・・・? もう一回言ってください・・・?」

 

 マリーは必死に怒りをこらえている。


「ちょっと・・・ 落ち着いてください・・・」

 なんとも険悪な雰囲気だ。レシティアはいつもこんな調子なのか・・・?


「やっほ~ 皆大丈夫かい?」

「兄さん・・・ どうしたんですか?」

「そろそろユーラル家領都、エッセンが見えてくるよ~」


「エッセン・・・」

 すると、丘の下にエッセンの街並みが現れた。

 カインと初めて野宿した場所の近くだ。


「・・・レイド、いろいろと引っかかると思いますが、今は我慢してください・・・」

「・・・ああ、分かっている」


「前にも言ったけど、今のエッセンはひどい有様だよ~」

「・・・確か、そんなことを言っていましたね」


「一年くらい前から、エッセンは領としての機能が麻痺しているんだ~」

「どうしてですか・・・?」


「何とも、領の税収など、経理作業が全く追い付いていないらしいんだよ~」

「あっ!」


(そうだった・・・ 全部俺がしていたんだった・・・)


 レイドがユーラル家を離れてから、領地は大混乱に陥ってしまった。

 経理作業は全てレイドがしていた・・・ そのことを知らないまま追い出したので、後任なども一切決まっておらず・・・


「ちゃんとユーラル家に手紙を送っておいたよ。『おたくのレイドさんは経理作業がとても優秀です』ってね」


 そういって、ロイクは不敵な笑みを浮かべる。


「あれがエッセン? 父上に連れられて行ったことがあるわ。以前と比べてすごく廃れているわね」

「レイドと初めて会った時のことを思い出すな・・・ 馬車もなしに盗賊に追われていて・・・」


「・・・マリー、今はその話題を振らないでくれ」

「え!? レイド、馬車もなしにこっちへ来たんですか!?」


「ああ、まあな・・・」

「まさか、君がリヨンを救う英雄になるとは思ってもいなかったよ」


「マリーさん! ・・・レイドの武勇伝、聞きたいです!」

「良いですよ、エレーヌ様。まずは彼が・・・」


「止めてくれ! 恥ずかしい!」


 いつの間にかエッセンも通り越していた。

 馬車での時間は、流れるように過ぎ去っていく・・・



 翌朝・・・


「みんな! 王都が見えてきたぞ!」

 レイドたちはカインの大声によって起こされた。


「うう・・・ まだ眠いわ・・・」

 

 レイドもぐったりと起き上がる。そして、目の前に広がる光景を見て驚いた。


「うおぉぉ・・・! あれが王都か・・・!」


 大きな城を中心に無数の住宅が並んでいる。周りには、高い壁によって守られていた。


「あれがシャロン城ですか・・・! 初めて見ました!」

「ふふふ、エレーヌは初めてだったな。どうだ? 美しいだろう~」


「もしかして、あれが学園だったりするのか?」

 レイドはそう言ってシャロン城の隣にある、またもや大きい建物を指さす。


「そうだよ~ あれが学園さ~ 今から僕たちが行く場所だよ~」

「? ロイクさんは別の用事で来たんじゃ?」

「あっ! も、もちろんそうだよっ! 王様に用があるんだった!」


 怪しい・・・ まあ、今は気にしないようにしよう。



 そうして、数時間が過ぎ・・・


 

「みんな、学園に着いたよ!」

「わあ! まるで小さな城みたい!」


 そうして、レイドたちは馬車から降りた。


「他の受験生たちもたくさんいるな・・・」

「ああ、そうだな・・・」


「ちょっと! そんなに日和ってどうするのよ! 私たち全員で受かるのよ!」

(おお、レシティア。たまには良いことを言うじゃないか?)


「レイド、試験の科目を覚えてますか?」

「筆記試験のあとに実技試験だな」


「そうです。恐らく実技試験においては私たちが圧倒するでしょう。残りは筆記試験。しくじらないようにお願いします!」

「おおっ! 燃えてきたぜ!」

 

「カイン、お前は筆記試験が壊滅しないようにしろよ?」

「お、おう・・・ とりあえず頑張ってみるぜ・・・」


 

 合格するかどうか心配な奴もいるが、まずは自分だ。油断せずに、合格するぞ!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る