第7話

 そして次の日の朝。

「洋子、今日は仕事よね?」

「ええ、そうよ。

イベントの打ち上げでお酒を飲むのは解っていたから

家に車を置いたままなの、会社へはタクシーで行くわ」


「いいわよ。私が送ってあげる。

朝食を済ませたら3人で行きましょ」


 そう言うと祥子が食事の支度をしてくれて

3人で朝食を食べていると祥子の携帯が鳴った。


「あ!良介君(30)だ!」

そう言うと電話に出て暫く話し込んでいたが


「良介君が私達全員を車に乗せて行ってくれるって」

祥子は嬉しそうに言う。

「あ!それは良かった。助かるわ」洋子も嬉しそうだ。


 やがて良介が迎えに来て洋子を送った後、

サキと3人で何処かへ遊びに行こうと言う事になるが

サキは二人のデートの邪魔をする訳には行かないと思い

一人で散歩したいと二人に告げる。


「えっ!それはそれでいいのですが、

俺たちに気を遣われなくても良いですよ」

良介はサキの気持ちを察している。


「そうよ!私たちの事は気にしないでいいのよ」

良子も優しく言うが、

サキは二人の邪魔はしたくないと思う。


「サキさんは優しくて素敵な方なのですね。

俺たちに気を使われていらっしゃるのは良く解かります。」

良介はそう言うと


「あ!そうだ!弟が今日と明日が休みなので家に居ますから

話し相手になってやってくれませんか?


サキさんは素敵な人だし

イベントで特別賞を貰ったとても素敵な女の子だと聞いたら

弟は絶対に喜ぶと思います」


「あ!はい……私も弟さんに会ってみたいです」

サキはデートの邪魔をする訳にはいかないので

断る理由として良介の申し出を受けることにした。


「では、ちょっと待ってくださいね。弟に電話してみますから」

そう言って電話をするが弟は電話に出ない。


「おかしいなぁ~……電話に出ない!

あいつ、多分ゲームに夢中で聞こえてないな!


サキさん、これから俺たちと一緒に来てくれますか?

弟は家に居る事は間違いないと思いますから」


「は、はい……」


 そして良介の家に着き3人は家の中に入り弟の部屋に行くが、

弟は良介の言う通りヘッドホンをしてゲームに夢中だ。

良介はゲームをしている弟の前に顔を出しゲームの邪魔をする。


「え~~……邪魔するなよ~」

弟の良治(27)はヘッドホンを外して怒るが


「良治!素敵な女の子を連れて来た。

サキさんだ。今、一人旅の途中だそうだ。

軍資金を渡すから一緒に遊んであげてくれるかなぁ~……」


良治が慌てて後ろを見ると

ビックリするほどの可愛いくてスタイルのいい女の子が立っている。


「あ!こんにちは!良治と言います」

良治は大好きなゲームを止めてサキを見つめている。


「こんにちは。

済みません遊んでいらっしゃる途中にお邪魔してしまって。

サキと申します」済まなさそうに言うサキに良介は


「い、いえ!全然大丈夫ですから!」

良治は顔を赤くしながらサキを見つめている。

(うわぁ~可愛いなぁ~~~~)


「では、俺たちは失礼します。

サキさん暫くこいつと遊んでやってください。

夕方には迎えに来ますから。」

「はい。ありがとうございました」サキが頭を下げると、


「良治!後は頼んだぞ!」

「サキさん遠慮はいりませんので良治さんを

こき使ってあげてくださいね」

祥子は悪戯っぽく言う。


「ウフフ」サキもこれからどうなるのか楽しみにしている。

「では」良介はサキにそう言うと祥子と二人で遊びに行ってしまった。


「……」

後に残された良治は女の子と二人きりになったことが無く

何を話せばいいのか分からないで居る。


 しかし、ゲーム機を見たサキは

「それって、飛行機の操縦シミュレーターなのですか?」


「あ!はい!面白いですよ!やってみますか!」

良治は水を得た魚の様に元気になった。

「ええ。やってみたいです!」サキも大きく目を見開き嬉しそうだ。


「では、この椅子に座って下さい」サキを操縦席に座らせると

「右に有るこれが操縦桿で、

ジェット機を上下右左にこうやって動かせるんです。


操縦桿を右や左回すとジェット機の向きを

右や左に変える事が出来るんですよ」


良治は椅子の後ろからサキを抱え込むようにして操縦桿を動かして見せる。

「この左のレバーはエンジンの出力を上げたり下げたりして

ジェット機の飛行スピードを調整できるんです。やってみますか?」


「はい。お願いします」

良治はミサイルや機関砲の使い方も教えるとゲームをスタートさせた。


しかし、サキは敵機を次々と撃墜して行く。

(えっ!この子、初めてだと思うのだけど何でこんなに上手いの?)


「サキさん、とても上手ですね」

「いえ!ドキドキして緊張しています」

しかし、どんどんスコアを伸ばしていくサキに

良治はいいことを思いつく。


「サキさん、コンピューター相手ではなくて

ネットで対戦をしてみませんか!」

良治はサキが強いので、

いつも負けている相手と組ませて、相手をやっつけようと考えた。


「はい。いいですよ」サキは楽しくてしょうがない。


「ちょっと待ってくださいね」

そう言うと良治はロビーに行きいつもの対戦相手を探す。


「これからはコンピューター相手ではなく

人間相手ですから動きが複雑になります。頑張られてくださいね」


「はい」

しかしゲームが始まるとサキは、あっと言う間に相手を撃墜してしまう。


「おい!今のは本当にお前か!?動きが全然違うぞ!!!」

対戦相手は今までと違う良治の動きに不信感を持つ。


          続く



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る