第32話高学年としての責任

 私が5年生での班分けで一緒になったのが、隅田大輔と渡部であった。6年生とともに下級生を引っ張っていく役目を最初に試されたのが、飯盒炊飯であった。前年までは箱作海岸で行われていたが、何か変更しなければならない事情があったのか、同じ南海本線沿線にある、貝塚市の二色浜で行われることになった。6年生が班をまとめる役目を果たしながら、私たちは下級生が危険なことをしていないか、班全体に目を配っていた。電車に乗って車内のマナーを守るように指導したり、駅からは道路を少し歩くので、車道にはみ出して車と接触することの内容に目配せをしたりと、4年生までとは違って、やらなければならないことは格段に増えていた。

 隅田は班の先頭で下級生を6年生とともに引っ張っていき、渡部が班の真ん中、私がが後方でサポートしながら二色浜海水浴場までの道のりを歩いて行った。

 二色浜駅について班の点呼をとった後、私たちは飯盒炊飯の用意をするため、かまどを作ったり、火を起こす準備をしたりしながら、下級生の様子にも目を配りながら作業を進めていった。時にはやんちゃな下級生もいて、火が燃えている近くでチャンバラごっこをするような子もいて、非常に危険であるため厳しく注意してやめさせるという一コマもあった。そこで、ご飯の用意などは6年生に任せて、私たち5年生は下級生が危険なことをしないように見張る役目をすることとなった。いくら注意してもいたずら盛りの下級生を相手にするのは非常に大変であった。とにかく怪我や火傷をさせてはいけないということで一生懸命であった。そんなやんちゃな下級生を見ながら

「自分たちも少し前まではあんなことしてたんやなぁ」

なんて思ったりもした。やがてご飯が炊きあがり、定番のカレーも出来上がってみんなで食事。昨年までと違って気を遣うことも増えたので大変ではあったが、とにかく無事に昼食が出来上がったことに安どしていた私である。昼食が終わって火の始末をして、それぞれ自由時間。私たちは昨年までだったら自分の思い思いの時間を過ごしていたが、やはり下級生が危険な遊びをしていないか、立ち入り禁止のエリアに行ってないかなど見回りもしなければいけなかったので、なかなか自由に遊ぶという時間を持てなかったのであるが、それでも下級生たちと一緒になって貝殻を拾い集めたり、カニを津捕まえて遊んだりしていた。なかには貝殻を大事に持って帰るという女の子もいて、帰る途中で貝殻が割れないように、飯盒炊飯の時に使うために持ってきていた、余った新聞紙に包ませて持たせたりもした。

 やがて学校へ帰る時間がやってきて、再び班員を集めて全員がそろっていることを確認したところで点呼をとって、先生に報告。二色浜駅に向かって歩いて行った。二色浜駅からは南海電車の臨時列車に乗って、学校に帰った後、再度点呼をとり、先生からの連絡事項を聞いて解散。帰りは姉と一緒に帰ったのであるが、姉は最上級生として責任も重大だったようで、

「楽しかったけれど、めっちゃ疲れた」

と言っていた。そして家に帰ってから荷物を片付けて少し横になっていると妹が

「遊んでぇ~」

と言ってくるので、私たちが飯盒市販で持ち帰った、きれいな模様のついた貝殻を見せてやった妹はその貝殻を見ながら

「宝石みたいやねぇ」

などと言って気にいったようであった。

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