最終話:愛し合ってるなら話は違って来る。

私が現世にやって来た日は、ユウキの退院とかバタバタしてて彼と

ゆっくり、おしゃべりもできないで終わって、で、ユウキは気を使って、

自分が寝てるベッドじゃ嫌だろうからって彼が寝てる隣の部屋に布団を

敷いてくれた。


私は別にユウキと一緒でもいいんだけど、それほど潔癖症じゃないし、

二日三日お風呂に入らなくても平気だし・・・。


で、寝る前にユウキが私の部屋にやってきた。


「おやすみ、撫子ちゃん・・・今日はありがとう、君と出会わなかったら

僕はきっと黄泉の国へ行ってたね」


「どういたしまして、ユウキ・・・こっちこそ現世に連れてきてくれてありがとう」


「うん・・・ああ・・じゃ〜ね、あの・・・おやすみ」


(なに?この雰囲気・・・ナンパした子とはじめてホテルに来たカップル

みたいにドキマギしてるじゃん)


「なに?・・・ユウキ、私としたいの?」


「な、なに、言ってんの・・・いきなり・・・びっくりするだろ?」

「誰がそんなこと・・・なこと思うわけないだろ」


「だって、なんとなくエッチい雰囲気漂ってた気がして・・・」


「どこがだよ、おやすみって言っただけだろ?」

「だいいち仮にも神様に使える巫女さんだろ?」

「私としたい?なんてそんな赤裸々な発言しちゃいけないだろ?」


「そうだけど・・・巫女だって一人の女です」

「じゃ〜なに?巫女は恋しちゃいけないの?」


「そんなこと言ってないだろ?」

「撫子ちゃんが勝手に意識してるだけだろ・・・いきなり、したい?なんて

聞くなよ・・・」


「私に興味ないの?・・・私そんなに魅力ない?」


「そんなこと言ってないだろ?」

「撫子ちゃんは充分、魅力的だよ・・・」


「じゃ〜なんで?」


「あのね〜・・だからって愛し合ってもないのに、はいそうですかって

訳にはいかないの」

「こういうのはさ・・・愛し合ったカップルが自然とそうなって行くのが

ラブストーリーってもんだろ?」


「それに自分を安売りするもんじゃないの」

「いいから、もう早く寝ろよ」


「つまんない・・・」


「なんだって?」


「なんでもないです・・・もう寝ます」


そんなこんなで、なにもなく寝たのでした。


で、次の朝、目覚めた私・・・当然隣で寝てるユウキを起こしに行く訳で

・・・でも、ユウキはとっくに起きてたみたい。

なんだ・・・せっかく起こそうと思ったのに・・・。


部屋から台所に行ったら、ユウキがなにかしてた。


「あ、おはよう撫子ちゃん」


「おはようユウキ・・・早起きだね」


「いつもと同じだよ」

「待ってな・・・今、朝食出すから」


キッチンテーブルに私が食べたことないようなモノがふたつ並んだ。


「なにこれ?」


「だから朝食・・・俺は朝はパンだから」


「パン?」


「撫子ちゃんはパン、知らないの?」


「朝はコシヒカリと、お漬物にお味噌汁・・・それが私の定番」


「ま、食べてみ?」

「口に合わないと思ったら、ご飯炊いてあげるから」


「ごめんね・・・私は増えたから家計にもユウキにも負担かけるね」


「いや〜ひとり寂しく朝ごはん食べるよりずっといいよ」


朝ごはんはトーストってのとベーコンってのとスクランブルエッグってのと

コーシーとかって飲み物。


うん、悪くなかった。

これなら毎朝でもイケそう。


「あのさ、俺、しばらくは様子見で学校休むけど、そのうち学校へ行くように

なったら、撫子ちゃんひとりで留守番できる?」


「子供じゃないんだから・・・お留守番くらいできるよ」

「その学校ってすぐ帰って来るんでしょ?」


「朝出て夕方まで帰らないよ」


「え〜そんなに〜・・・ヒマだよ・・・退屈持て余しそう」


「向こうにいた時でもひとりで生活してたんだろ?」


「あっちはあっち、こっちはこっち」

「暇だからエステにでも行こうかな?」


「俺んちにそんな余裕ないよ」

「暇なら町内走ってくれば?・・・いい運動になるから」

「それが嫌なら歩きゃいいだろ・・・ウォーキング・・・健康的だろ?

それがいいよ」

「で、帰ってきたらスーパーに買い物に行く」

「それでけっこうヒマ潰れるよ」


「走るのも歩くのもボツ」

「スーパーになんか行ったことないもん」


「だろ?、けっこう大変だろ?現世になんか来るんじゃなかっただろ?」

「なんとか舎利ってところにいたほうがよかったんじゃないか?」


「なんで帰そうとするの・・・もう、イケず〜」

「ユウキの魂、救ってあげたでしょ?」

「女性には優しくするもんだよ」


「分かった、分かった・・・俺が休んでる間にいろいろ教える」


「いろいろって?」


「だから、いろいろ」


「具体的に述べよ」


「だから、ひとりでスーパーに買い物に行けるようになれるよにするとか」

「まあ、一緒にウォーキングするとか・・・」


「エッチいことするとか?」


「またそれ?」


「姫巫女ってそんなにエッチが好きなのか?」


「エッチが好きって言うより私はユウキが好きなの・・・大好き」


「ああ〜」

「・・・・そうなんだ・・・そう・・・じゃ〜話が違ってくるな」

「この先の俺たちの関係ついてじっくり話し合わなきゃ」

「実は俺も撫子ちゃんが好きなんだ」


「ほんとに?」


「嘘偽りなく」


「お互いの気持ちが分かったからには、今までとは違うよ撫子ちゃん」

「男と女がただ毎日顔を合わせてるだけじゃつまんないよね」


「おいで・・・こっちでゆっくり今後のことについて話し合おう」


で、私はユウキに手を控れて、ここでは言えないことを・・・。


相違相愛だって分かると、そりゃ男と女の関係は違ってくるよね。

よりディープにハードに。


私多分、ユウキと結婚しちゃうかも。


おしまい。











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うそ!姫巫女様なのに?。 猫野 尻尾 @amanotenshi

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