第52話 婚姻の発展的解消

日本国憲法 第二十四条1項

 婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。


婚姻こと結婚という事項に関し、本邦憲法は上記のごとく定めている。


・・・・・・・ ・・・・・ ・


さてここで、大槻家(仮称)の事例について考察してみたい。


大槻家は、福祉施設長の父親、専業主婦の母親、そして2名の息子で構成された、

典型的な昭和後期の「核家族」であった。

当時厚生省(現厚生労働省)がモデル化した、典型的な家族像でもある。


しかし、息子2名が相次いで成人・独立した。

残るは、負債こそないものの夫妻ばかりなり。

やがて夫人は公職に立候補し、選挙を経てその職に就いた。

そうして程なく、大槻夫妻は離婚に至った。


この離婚についての有責は、夫側にあると言われている。

離婚に際しての条件云々は、ここでは述べない。

そもそもそれらは、ここの主論点たりえない要件である。


婚姻の前提となる「両性の合意」が破綻したわけだが、

これは、合意によって解消されたと解釈すべきことである。

権利が同等であることは、論ずるまでのことではない。

相互の協力により婚姻を維持する余地がなくなっただけのことである。


ここに、大槻家というものは形式的にも実質的にも解消された。

その解釈は、確かにそのとおりであり、実情から外れてもいない。

しかし、世上での離婚というものにともなう負の要素は見られない。


或作家氏は、このように喝破した。


この事案は、大槻家が行き詰まった挙句に破綻したということを意味しない。

離婚という形を取られているが、家族構成員が離散したことも意味しない。

本事案は、大槻家の「発展的解消」と解釈するが妥当であると思料する。

まさに、チェコスロバキアがチェコとスロバキア両国に分離独立した、

いわゆる「ビロード離婚」と軌を一にしたものと言えないだろうか。


いかがでしょうか?

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