第41話 電磁的空間に刻まれし情報として

水に流す

その対義語は、

岩に刻む


岩に刻めど、風化もしよう。

天災によって岩自体が瓦解もしよう。

さすれば、その文字は消滅する。


だが今は、電子機器というものがある。

そこに行けば、電磁空間のどこかに必ず、

岩のように消えることまかりならぬ形で、

電磁的情報としてサイバー空間に刻まれる。

サイバー空間は、人類がこの地球上にいる限り、

ゆめゆめ、消えることなどないはずである。

岩のように消えることまかりならぬ形で、

電磁空間のどこかに必ず、そこに行けば、

数百年後でも見られること確実である。


さすれば、その情報は消滅せず。

天災によって瓦解することもなしに、

空間に刻まれ風化もしない。


水に流す

その対義語は、

岩に刻む


堂々巡りのループを今、脱出した。


文字を刻むべき岩。

それは今や、電磁的空間の岩。

もはや、物理的な岩ではない。

その地は、今後の人類とともに、

その歩みの道しるべとなる場所。


そんな岩のなかったあの時代のことも、

かの男にかかれば、免罪符に処されることはない。

かの男にかつてかかわった者たちは、

今、そのことに思いが至れているのであろうか。

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