第39話 相談⑥ 終幕
2階層休息所でリスティルとの会話後、冒険者ギルドに戻った両パーティー。
【
ナナセ達は1人で依頼を見に来ていたマルヴィナ方に歩いて行く。
「ソロでの活動もしてるのか?」
突然背後から声を掛けられて驚くマルヴィナ。
振り返るとそこには知った顔がある。
「あんた等かよ、驚かせないでくれ。これから出発なのか?」
「ん? 違うよ? あっち見て」
そう言ってユウカはとある方に視線を向ける。
釣られてその後を追うマルヴィナは声を掛けられた時以上に驚く。
「もう連絡が付いたのかよ!」
「というより、2階層入口側の休息所に上がって来てたんですよ。ほら、例の爆発音が3階層にも響いてたみたいで」
ティナが早々に連絡が付いた事の説明をしてくれる。
「あー成程な、そしたらアタシがメルディ達を呼んで来てやるから待ってな、30分位で戻ってくっから!」
「あ、ちょっと!」
もし悪い方の結果となった場合、パーティーメンバーとしてメルディがどんな行動をするか聞きたかったが。
ナナセの言葉も虚しく、マルヴィナはギルドを飛び出していく。
「間に合いませんでしたね」
「ああ……ジタバタしないで、腹を括れって事か」
ただ人の目の在る所で口論になると面倒だし、ギルドの一室を借りられないか聞いてみるか。
借りられれば多少大きな声になった所で、壁とギルドの喧騒で誤魔化す事が出来る、伝えるなら上の立場の職員に話すのが手っ取り早いな。
ナナセはそう考えギルド職員の動きを少し見ていた。
その中で1人の男性職員が指示を出したり、報告を受けているのが見てたのでその職員へ声を掛ける。
「すみません」
「どうかしたか?」
「複数のパーティー間で話し合いをしたいので、どこか一室借りる事は出来ませんか?」
「それは面倒事になる可能性があるからか?」
うげっ………どうしてこう話す人話す人鋭いんだ、まだこっちは何も言って無いだろうに。
しかもこの人、間髪入れずに面倒事って指摘して来たし。
「不思議そうな顔だな、指摘した事はそう難しいことじゃ無い、一室借りようとする者の大半が面倒事に使うのが多いだけだ、2階の左一番奥を使って構わない、使い終わったら受付に言ってくれ、但し、物を壊した場合弁償してもらう、いいな?」
「わかりました。あの、あなたは?」
「なんだ、知らずに声を掛けてたのか。フロント業務主任のバーナードだ、よろしく頼む」
「【
互いの挨拶後、バーナードはそのままギルドの奥に消えていった。
残されたナナセはその場にいる関係者に部屋を借りた事を説明。
マルヴィナがメルディを連れて来るまで、束の間の休息を取った。
―――――――――
メルディ並びに【白い牙】のメンバーが揃った所で2階の一室。
「それで、私に話って言うのは何? 自分のメンバーを救ってくれた恩人まで使って呼び出すって事は、あなたにとっては余程大事な事なんでしょう?」
明らかにリスティルの発言にはトゲが含まれている。
しかも確実にわざと含ませたトゲが。
「そ……その、昔の事を謝りたくて……」
「昔ってどの事? 色々あり過ぎて正確に言って貰わないと分からないんだけど、というか、昔の事だけを謝りたいのね。どうぞ」
(リスティルさんかなり攻めてるな)
(仕方がないですよ。甘く見てもメルディさんは自分本位な事をしてますから)
(でも自分が悪いと思ってるから謝罪をしたい訳だしさ)
(ユウカにはごめんだけど、謝って済むかどうかはされた人の判断だから難しいよ、それに時間が経ってから謝られてもって事もあるし)
オレ達の役目は終わったので、話し合いには参加せず立ち去ろうとすると、リスティルさんから止められた。
曰く、「私をここまで連れて来たんだから、最後まで責任を持って見届ける義務があるのでは?」だそう。
すごく………見届けたくないです……。
「ちがっ……どのって訳じゃなく、あなたにした事全部を謝りたくて」
「そう、あれだけ色々としてくれたのに、あなたはそれを全部纏めて謝罪するって事ね。いいわよ、遠慮せずに謝罪して」
これは相当きついだろうな。
相手の発言に対して淡々と返してるだけじゃなく、確実に相手の細部を指摘して精神を折りに行ってる、リスティルの怒りが相当だって言うのがこちらにも十分伝わってくる。
「あの……それと!」
「一つずつにして貰える? 一つ目の話題の最中に別の話題を出されても無意味よ、何言ってるのって感じだもの、次に進みたいのであれば一つ目を終わらせて」
「その……昔あなたが冒険者になると言い出してから酷い事をしたり、言ったりして本当にごめんなさい!」
「ええ、許すわ」
なっ!?こんなあっさり許すなんて予想外だ。
もっと口論になったりすると警戒してたのに、謝罪してから考える間も無く許すなんて。
「本当!?」
「ええ、本当よ」
「じゃあ!」
「用事は済んだみたいだし、私はこれで失礼させてもらうわ」
「あっ、待って!」
「あなたの用は私に謝罪をする事、そして私はそれを受け入れた。これで私がここに居る理由は無くなったでしょ? それ以外の事に関しては一切容認して無いわ」
「え?」
「それと私からあなたに伝えておく。私の人生は私だけの物、あなたが勝手に私の人生を作らないで、子供の頃、その事に気付いたから私は冒険者を目指した。自分の道は自分で作る為に、あなたがやってる事に気付いて欲しくて」
「あ……」
「でも無駄だった。それ所か私を憎んで今の今迄邪魔して来て、本当にウンザリだった。一応お互い冒険者だし、冒険者としての最低限の付き合いはする、でもそれ以外は一切お断りさせてもらう。金輪際私の人生に踏み込まないで、それじゃ」
リスティルの後を追うように【
その瞬間床に崩れ、焦点の合わない目で見つめるメルディ。
何か小さく呟いているみたいだがナナセには聞き取れない。
思っていた以上に冷静に、そして恐ろしく冷たく斬り捨てていったな。
謝罪を受け取る代わりに金輪際関りを拒絶、ある意味謝罪を拒否されたうえ罵倒されるよりも遥かに辛い結果だな。
「おいメルディ! しっかりしろやメルディ! おめぇアタシらのリーダーだろ!」
「メ…メルディ大丈夫なのぉ?」
「心…が……戻る……ま…で…大変」
マルヴィナが呼びに行く前に聞きたかったのがまさにこれだ。
パーティー崩壊の危機……というよりも、この状態では既に崩壊したというべきだろう。
「あの、皆さんはこれからどうするんですか? 私達が言うのも何ですが、パーティーとしてはかなり大変ではないですか?」
アヤカの言う通りだ、リーダーで前衛でもあるメルディがこんな状態では、当分依頼もダンジョン攻略も出来ないだろう。
彼女達にも日々の生活がある、一体どうするつもりなんだ。
「普通なら即さよならだけど、一応アタシらもメルディと長い付き合いだし待ってみるつもりさ、まっ、年単位でってのは無理だけどさ」
「私達全員ここ出身で自宅があるんだよぉ、だから最低限の生活は出来るんだよぉ」
「ダン…ジョン……は…無理……でも……簡単…な……依頼…で…なん……とか」
「そうか、頼もしい仲間を持ってるんだな」
「でもメルディさんが傷付いただけでこれじゃ」
「そりゃ違うぜ嬢ちゃん、この傷はメルディが付けた傷が返って来ただけだ、嫌なら最初からやるなって話なのさ、アタシらも背負ってやるつもりだから、あんた等は気にしないでくれ」
彼女達が居れば大丈夫だろう。
後はメルディがその事にいつ気付くか、そして差し出された手を払わず、しっかりと握りさえすればまた復帰出来る。
もし万が一その手を払おうものなら、以前オレ達に言い掛かりを付けたヤツと同じ末路になる、絶対に握り返してほしい。
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