第15話 狐耳と尻尾 ティネア④
次の日、オレ達はユウカが受けたオーク討伐依頼で、街から南東の湖に来ている。
どうやら水源が綺麗なため、魔物が湖畔に住み着くことがあるそうで、今回はそれがオークだったとのこと。
オレ達としては報酬も良いし、買取額も高いオークは願ったりだ、しかも今は魔物の位置をある程度絞り込めて、匂いを覚えたら魔物まで特定出来る、ティネアが居るから探し回らなくて助かる。
そのティネアだが、宿の一件でアヤカとユウカの距離が一気に縮まったのか、凄く仲が良い。
なんというか男が近づけない雰囲気というか、ぶっちゃけ女の子の会話が多くて入って行けない、陰キャの人間が近づいたら眩しさのあまり、消滅してしまいそうな危険な領域になっている。
「あの、そんなに離れてどうかしたんですか?」
「あぁ…いや、一応後方を警戒しているだけだから、気にしないで」
「それなら私達の周りには今のところ魔物も人も居ませんし、こっちに来て一緒に話しませんか?」
オレは馬鹿か!
匂いで位置が分かるのに警戒とか自分で自分の首絞めてどうすんだよ!
いや待て、まだ自分の首に手を掛けた段階だ、
「スンスン…スンスン、あの…もしかして……私って、匂いがきつかったりしますか?! その、自分の匂いってわからなくて…ごめんなさい!」
どうやらオレが離れて歩いてることが、自分のせいと勘違いしているみたいだ。
本当に申し訳ない、原因はオレなんだ……オレが女の子3人の明るい空間で、どういう対応をすればいいのか分からないだけなんだ。
「いや、全然そんなことない! 寧ろいい香りがするなと思ってたから、ティネアさんが悪い訳じゃないから!」
「本当ですか?」
「それならもう少し近くに来て下さい、そんなに離れられると話し辛いですよ」
「というかいい香りがするって完全にセクハラ発言だよね、衛兵さんに突き出す?」
セクハラ発言は確かにそうだけど衛兵はやめて、捕まりたくないから。
はぁ……意識するからダメなんだ、いつも通りに接すれば何の問題も無いんだから、昨日宿から出た後の話でもするか。
「一応あれから街で昔から商売してる人に、領主や代官のことを聞いて回ったけど、両者共住人からの評価は高かった、特に領主は驚くほど厳正な人みたいだ」
そもそも領主自体が不正を嫌って、自分と同じ、『人の上に立つ者は、人の下で奉仕せよ』って志を持つ者を、代官にしたって話だったし。
任命する際にも、徹底的に代官予定の者を調べたみたいな話しもしてたな。
実際どこまでが本当か分からないが、どの住人からの評価も高く、街の警備もしっかりしてる様だし、そう悪い事はしていないだろう。
「そうなるとやっぱり」
「ああ、代官邸に出入りしてる関係者って奴が怪しい」
「あとは証拠を押さえられれば、衛兵に通報出来る」
ユウカの言う通り、そいつがやってるって証拠さえあればいいんだが、流石に【砂漠の狼】からオレ達の情報を聞いてると思うし、簡単には取れないだろう。
「ッ! 止まって下さい!」
急にティネアが声を上げる。
それと同時にオレ達はティネアを中心に守りを固める。
「すみません、敵かは分からないですけど、この先から人の匂いがします。それも結構な人数の」
「【砂漠の狼】からウチらの話を聞いても、強気で攻めてきたってことかな?」
「まだ彼等と決まった訳じゃないけど、もしそうなら、向こうにも強気で攻めることが出来る、何かがあるってことかしら、念のため警戒しておいた方がいいわね」
「そうだな、2人ともいつでも録音出来るようにしておいてくれ」
奴等の急襲に備えながら、オレ達は気付かない振りをして進んで行く。
どこもそうだが、街道から外れると人の手がほぼ入ってないので、人・魔物問わず隠れやすい環境になるが、こちらにはティネアが居る。
隠れていようが聴覚・嗅覚で、相手の距離と位置を把握出来ることを、奴等は知らないんだろうか。
(そろそろ出て来るかもしれません)
(わかった)
オレは2人に録音の準備をさせて、オレはより確実な証拠として残すため、録画モードを起動してから進んでいると。
『止まれ』
複数の男が木々の間から出て来てオレ達を止める。
出てきたのは6人、全員鎧はレザー系で、体の重要な器官がある胴以外はガラガラだ。
音や行動力を重視したのか、単に買う金が無かったのか、どちらにせよ金属鎧と違って、レザーなら峰での攻撃が通りやすいな。
「いきなり出て来て止まれって、オレ達に何か用なのか?」
(まだ前に1人、後ろに8人隠れていますから、気を付けて下さい)
(それなら私とユウカで後ろに出れる様にしておくので、ティネアさんはスマホ(コレ)を離さず持っていて下さい)
『用があんのはそっちの
『ま、一応はお前にも有るっちゃ有るがな、死んでもらうって用だがな!』
(お兄、今出てきたこいつ等は全員Cランク冒険者みたい)
(了解)
「彼女にって事はお前ら【砂漠の狼】の仲間か」
『あ゙ぁ゙ん? 俺達をあんなお使いすら出来ない、クズ共と一緒にしてんじゃねぇぞ!』
「いや他人に迷惑を掛けて何とも思ってない以上、どっちもクズだろう、もっと言えば、そこに隠れてる奴はクズにも劣る何かだ」
「私達の後ろに隠れてるのも出て来なさいよ、バレッバレだから」
ユウカが既に分かっている事を指摘するとゾロゾロと出て来る。
その中で司令塔と思われる奴の姿は冒険者では無く、良い所の坊ちゃんの様な服装だった。
『驚いた、まさか低ランクの冒険者に見破られるなんて、おかげで奇襲作戦が台無しだ、ま、だとしても君が死ぬことには変わりないけど』
「【砂漠の狼】を使って彼女を連れ去ろうとしたのはお前か?」
『【砂漠の狼】か、せっかく俺が使ってやったのに、成果も上げれないただの役立たず共か、俺の貴重な時間を返してもらいたいもんだ』
「役立たずだと言ってますが、それを私達に嗾けたトップがあなたでしょう」
『あれと一緒にするなよ、寧ろ早々にわかって良かったよ、無能や無駄な事に時間を費やすのは、無意味を超えて損失だ、だからこれ以上俺に無駄な事をさせないで、その狐人族を渡してくれ』
なるほど、と言う事はコイツ【砂漠の狼】を助けに行ってないな。
もし行ってたらスマホの情報を真っ先に聞くはずだから、こんなにべらべらとご高説を垂れないだろう。
自分の急所を晒したままオレ達の前に立ったんだ、その急所、突けるだけ突かせてもらう。
「しつこく彼女を狙う理由は何だ? 彼女がお前に何かしたのか?」
『ん? 何も? 別に何かされないと狙っちゃダメなんて事はないだろ? 彼女はとても栄誉な事に選ばれたんだ』
「私が選ばれたって一体何ですか、意味が分かりません!」
「選ばれたって、あんた何勝手に言ってんの? 頭大丈夫?」
『どうせ君達には何も出来ないんだから教えてやるよ、俺はね貴族や富豪達相手に人・獣人・エルフと言った、優秀な女性を紹介する仕事をしてるのさ』
「貴族や富豪に優秀な女性を紹介?…………あなたまさか!」
「十中八九奴隷だろうな、それも人には言えない系の」
「女からすれば最っ低のクズ野郎ってことじゃん」
『何とでも言えばいいさ、君ら見たいな負け犬冒険者にどう言われようと、俺には関係ない、重要なのはジジイ達の要求を満たして、俺の財布が潤うことだけだ』
この距離なら音声は録れてるけど、コイツの顔は画素というよりもスマホの位置的に映ってないかもしれないな、喋ってたのが誰かハッキリさせる意味も含めて、間近で顔を撮影しないと権力者、もといその関係者を追い込むには弱いかもしれないな。
「お前…一体何人そうやって食い物にして来たんだよ」
『何人って、そんなの数える方が馬鹿だろ、たかが商品に対して記憶に留めるとか無駄な労力だ、でもまぁ、10人までは数えたよ、そこから先は無意味と気付いたけどね』
嘘か強がりかは分からないが、奴の口から10人以上売られた人が居ると言質はとれた。
それにしても10人以上か、【砂漠の狼】がここに来たのは3ヶ月位前って話だから、それより前からやってると考えていいだろうな。
「この事を知れば、セファートの領主も代官も黙っていないぞ、それを分かってやってんのかお前」
『……ッフ、アッハッハッハッハッハ!!』
「何が可笑しいのよ、あなたのやってることは完全に犯罪でしょうが! 領主様や代官様の耳に入れば厳罰は確実よ!」
ティネアの言う通りだが、コイツのこの領主や代官に対して、余裕な構えなのが腑に落ちない。
『領主って言っても住民全部を見れる訳でもないし、例え知った所で、その頃には俺は別の場所で仕事の真っ最中さ、って言うか、どうやって領主に言うんだよ』
「こいつ!!」
初めてみるティネアの牙を剝きだした怒りの表情。
昨日から何度か話しているが、それからは想像が付かない程の怒気が伝わってくる。
『領主への伝手もないお前らが屋敷に行っても門前払いされるだけ、場合に寄っちゃそのまま捕まるかもな! アッハッハッハ!』
「代官が領主に報告せざるを得ない事が起きて、その元凶が持ち込まれたらどうする?」
『分かんねぇ馬鹿だな、てめぇはここで殺すし、女は全員売られて終わりだ、報告は出来ねぇし持ち込めもしねぇ、それにな? 代官は俺の親父だ、分かったか馬ぁぁぁ鹿ぁ!』
『『『『ギャハハハハハハ!』』』』
成程自分の親か、確かにそれなら身内って事で見逃そうとしてもおかしくないな、まぁ録音も録画もあるからそれを使えば、庇った代官もただでは済まないだろうけど。
「楽しく笑ってる所すまないが、オレ達がいつお前達より弱いって言った? そんなこと言った覚えは一度も無いんだが」
『はぁ? お前達はDランク、こいつ等はCランクで人数もこっちが上、そんな事も分かんねぇとか【砂漠の狼(あいつら)】以上の馬鹿かよ、おい! 女の顔は傷つけんなよ値段が下がる!』
『ってことだ、女達はオレらがしっかり面倒みてやっからよ』
『お前はさっさと死んでくれや』
手下の2人が武器を手に取り気持ち悪い笑いを浮かべながら近づいてくる。
そういえば最近じいちゃん対策のアレ使ってなかったな、捕縛するには丁度いい技だし、鈍らせない為にもこいつ等を使って練習するか。
『『死ねや!!』』
オレは手下が繰り出した打ち下ろしの剣に対して、その剣の腹に刀を合流させて、もう一人の邪魔になるように軌道を書き換える。
『危ねぇ!!』
『わ、わりぃ、このクソ野郎が! 悪足掻きしやがって!』
当分使ってなかった技だけど、体が覚えてるもんだな、もう1度試してみるか。
『大人しく死んどけ!!』
(今度は横薙ぎ、なら刀の上身部分を滑らせるように合流させて打ち上げる)
『なに!?』
ああ、一度覚えた技は裏切らないな。
「2人とも、手足なら最悪血管を切っても、焼き潰して止血すればどうにかなる、人相手に戦えるか?」
「やります」
「この女の敵は絶対に許さない」
怒って当然だ、こいつ等がやってる事は女性の尊厳を貶めて食い物にする行為だ、同じ女性として見過ごせないんだろう。
『何やってんだ! 早く終わらせろ!!』
相手の武器は剣が2人と大斧とメイスの4人で、残りが司令塔の護衛か、剣はともかく大斧とメイスは受けると武器に負担を掛けるから気を付けないとな。
『オラァァァァ!』
大斧が最初か、武器自体重量があるから破壊力は凄いけどそれは使える人が使ってだ、コイツは武器の重量頼りでスピードが無い。
そんな攻撃を避けながら、振り抜いた大斧の柄を手で押し、バランスを崩させる
『なっ!?』
そのまま一歩踏み込んで。
「ハッ!」
顎を全力で殴り抜くとゴキッという音がする。
『ごお゙お゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙お゙ぉ゙ぉ゙!』
『は?』
『え?』
殴った奴を一瞥して、別の手下に全速力で向かいながら刀を抜き、持ってる剣を弾き飛ばす。
『な!』
そしてすぐさま峰打ちに切り替えて、相手の肩を二度と動かない様にするつもりで振り下ろす。
『ぐぁぁぁ!肩がぁぁ!』
『畜生! このクソガキっ!』
仲間がやられて頭に血が上ったのか、単純にオレに対してムカついただけなのか、横に居た一人がメイスを振るってくる。
こいつらはCランク冒険者、魔物の討伐には本腰入れて取り掛かるんだろうけど、人間相手となると話は別だ。
自分達の方が多人数なうえに相手は格下、ランクが下の奴に絶対負けないと思ってる、おかげで動きが単調になり避けやすい……ってより、完全にオレ達を舐めて掛かってる。
『避けてんじゃねぇ! 大人しく潰れちまえやぁぁぁ!』
大声を上げてメイスを振りかぶり突進してくる相手に対して、一気にその横に移動し、相手の踏み込もうとしてるその足にオレの足を引っかける。
『んなっ!?』
人間いきなり足をかけられると反射的に手を付こうとする、しかも勢いが付いていれば尚のこと。
そのままバランスを崩して、前のめりになってる相手の顔に手を当て、一気に逆方向に力を掛けて、後頭部を地面に叩きつける。
『―――ッ!!!』
「後はあんただな」
『テンメェェェ! よくも仲間を!』
「よくも仲間をって、自分らは殺しに来てるのに、こっちが無抵抗なままな訳ないだろ」
『知るかっ! テメェは俺達に殺されてりゃいいんだよ!』
「散々各個撃破されてるのに、今更1人で掛かって来ても同じだぞ」
なぎ払われる剣に対して、相手が使ってたメイスで剣の上から叩いて落とさせるつもりが、威力があり過ぎて叩いた部分から剣が砕ける。
『ハァ!? そんな馬鹿がぁ゙ぁ゙ぁ゙!!』
剣に気を取られた隙に左脚で蹴り飛ばすと、吹っ飛んだ先で呼吸がし辛いのか、ヒューヒュー言いながら倒れている。
「あとは3人」
『な…なんだよ………何なんだよお前は!! どうしてDランク1人がCランク相手に圧倒出来んだよ!』
「だから言ったろ、オレ達がいつお前達より弱いって言った?」
(この位置なら十分に顔が認識出来るな)
オレは胸ポケットからスマホを出して司令塔の顔を撮影する。
『クソッ! 女だ! 女の方を人質に取れ!』
「そちらが戦ってる間、私達が何もしてないとでも思ってますか?」
「とっくに片付けてるに決まってるでしょ」
見れば血を流して倒れてる者、雷魔法を受けて倒れている者と半々だ。
当然の結果だな、それよりももっと多くの魔物と戦ったことがあるんだから、2人からすればこの程度強さと人数は大したことが無い。
オレは視線を相手に戻す。
『ひいぃぃ! あ…謝る! 謝るよ! 俺達が悪かった! 許してくれ!』
『全部この男が仕組んだんだ! 俺達は仕方なく!! なぁ、分かるだろ?! 俺達だって嫌々従ってたんだよ!』
『お…お前らぁ!! クソッ!』
司令塔だった男が一人で逃げだしたがオレ達は敢えて追わなかった、叩きのめした奴等の連行もあるし、何より自白の証拠も残ってるから後でどうとでもなると考えたからだ。
それよりも、この身勝手な事ばかり言ってる残り者に制裁を加えるのが先だ。
「謝るって何に対しての?」
『へ?』
「お前達のやった事が複数あるから、どれに対して謝ってんのって聞いてるんだが」
『あ…いや、それは………』
こいつ等、自分達が何をやって来たかすら分かってないのかよ。
分かんねーけど、とりあえず謝っとけってのが、一番相手を怒らせるって知らないのか。
「謝ればこっちが勝手に理解して、更には許してくれるとでも思ったのか?」
『そ…そっちの狐人族の女に手を出してすまなかった! 勘弁してくれ』
「無理だ」
言い終わった瞬間に答える。
「それはそうよね」
「私だって言われたら無理って答えるわ」
『なんでだよ! 謝ったんだから許せよ!』
「だから無理だって言ってるだろ、そもそもその件に関してはオレ達3人は、許す許さないを言える立場に無いし、そもそも許せよなんて、お前ら上から物を言える立場か?」
「謝罪すべきは被害を受けた彼女に対してじゃないんですか? まあ、ここまで指摘されてからの謝罪に、何の意味も無いと思いますが」
そう言うと手下の2人はティネアの方を見るが。
「許せません、だってもし皆さんが居なければ、私は売られて酷い目に遭ってたって事ですよね? そんなの許せる訳ないです」
絶望の表情を浮かべる犯罪者に追い撃ちを掛けるように続ける。
「それに、既にお前達の被害に遭った女性達はどうするんだ? 何の罪もないのにいきなり襲われて、お前らに売られた女性達はどうするんだよ?」
『それは…もう済んじまった事だし、俺達には……』
『そうだよ! それに、襲われる方だって悪いと思わねぇか? 襲われたくねぇならあんた等見たいな対策をすればさぁ……へへっ』
こいつ等、微塵も自分達が悪いと思ってねぇ、襲われる方に問題がある?対策をしろ?
襲う方が100%悪いし、対策出来なかった人だって居るだろうに!そもそも襲うんじゃねぇよ!!
それをこいつ等へらへらと薄ら笑い浮かべて……………ッ!
「 ふ ざ け ん な ぁ ぁ !!」
オレは叫びながらこいつ等の頭上に刀を振るった。
ドドォォォォン!
『うひぃぃぃいぃぃぃ!!』
「襲われる方も悪いって事なら! 今オレに殺されても、お前らが悪いって事で良いよなぁ! お前らの方から仕掛けて来たんだからなぁぁぁ!」
『死にたくない! 死にたくない!!』
『おい! あんた等仲間なんだろ! こいつを止めてくれ! 助けてくれ!!』
「助けてくれって、あなた達が攫った女性達も同じ事を言いませんでしたか?」
「そしてあんた等はその女性達をどうしたのよ? 助けてあげたの?」
『あ………あぁ…ぁ』
『うああぁぁぁぁ!』
「あっ! 逃げるな!」
「大丈夫、逃がさないから」
オレは《
当然奴はそんなスピードで先回りされるなんて予想出来るはずもなく、オレがいきなり目の前に現れると情けない声を上げて腰を抜かす。
『ひぃぃぃぃ! 何で! さっき後ろに!』
本当にこいつ等の一挙手一投足がオレを逆撫でする。
自分の金の為だけに女性を食い物にするは、それがバレたら開き直り、勝てないと分かれば許しを請い助けを求め、それが無理とわかれば逃げだす……だったら………
「だったら最初からこんな事してんじゃねぇぇぇぇぇ!」
オレは思いっきり股間を踏み潰した。
『ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』
断末魔の様な悲鳴を上げながら白目を向き、だらしなく口を開けた状態で、全身を痙攣させたまま気絶した。
元の場所に戻るのに態々抱えてやる必要も無ないし、何よりこんな奴等に配慮なんてする気も無いので、無造作に髪を掴んで引き摺っていく。
皆の所に戻ると手下連中が既に縄で縛られた状態になっていた。
どうやらオレがこいつを追いかけてる間に、手分けして準備を整えていたらしい。
「捕縛作業手伝えなくてゴメン、今戻ったよ」
「おかえりなさい、あとはそいつを縛り上げたらって……動かないけど何があったのそいつ」
「踏み潰した」
【踏み潰した】の意味が分かってないユウカだったが、オレが近づいて行ったらその意味が理解出来たみたいだ、同時にアヤカもこちらに来て驚いている。
そりゃそうだよな、何せ股間に足跡が付いていて更には出血しているんだから。
「うわぁ……」
「これは直ぐに治療した方が良いんじゃないですか?」
「いや、これは自業自得だ、オレ達がこいつ等に何かしてやる義理は無い、そもそも殺そうとした相手に返り討ちにされて、自分達は助けてくれなんて都合が良過ぎる」
「それは私も思うけど」
「それに街に着いて引き渡したら、衛兵が大なり小なり対応するさ、言うなればこれは、オレ達を殺そうとしたこいつ等への罰だ、命があるだけ感謝して欲しい位だ」
「実際お兄に関しては殺すって宣言してたしね、こいつ等」
「とりあえず一度街に戻ろう、こいつ等連れたまま依頼をこなすのは面倒だ、ティネアさんもそれでいい?」
「大丈夫です」
その後はオーク討伐を中断して街に向かった。
帰路の間に「痛い」だの「ゆっくり歩いてくれ」だのと好き勝手言ってるが、誰一人として耳を貸すことは無かった。
何度も言うが向こうから襲って来たので自業自得だし、最初からあんな事をしなければこうはならなかったって話だ。
ともかくオレ達は代官息子が次に取る行動を考えながら街に戻った。
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