第7話 討伐クエスト
・コボルド 大銅貨3枚(討伐報酬)・ファングラビット 大銅貨2枚×8
・シャープホーンディアー 銀貨4枚と大銅貨8枚×2
・バイコーン 銀貨4枚と大銅貨5枚×1・アックスビーク 大銀貨2枚×1
大銀貨3枚 銀貨6枚。
以前に預けた買取金を受け取ったあと、オレ達は討伐クエストを受けて街から徒歩1日半程離れた南西にある林に来ている。
討伐対象はゴブリン。
オークと並び、ファンタジー物の定番で醜悪な見た目と、他種族の女性で増えるアレだ。
最近街道近くで見かけることが多くなり、常設ではなく報酬の良い討伐クエストになってたので受けることにした。
「ゴブリンとか………」
「まぁ、女の子としてはぶっちゃけ近寄りたくない&捕まりたくない魔物の筆頭格な所だけど、ランクを上げる為だから」
「平気です。とは言えませんが大丈夫です。私達の今の目的はランクを上げて冒険者として、甘く見られない様に箔を付ける事って理解していますから」
メイリアとリラインどちらの街でもトラブルが起こった。
メイリアでは仲間を取られそうに、リラインでは魔物の買取で窃盗疑惑を掛けられて騒ぎになった、どれもギルドランクが高ければ回避出来た事だ。
元の世界に帰る情報を探すため、ダンジョンを巡りたいが行く先々でトラブルに見舞われるのは避けたい、だからこそのランク上げだ。
とは言うものの、今の実力や経験ではダンジョン走破なんて不可能だろうから、その辺の事を含めてのランク上げでもある。
「それらしい痕跡も無いですし、この辺りには居なさそうですね」
「ナナセさん、姉さん、このままだと時間もかかるし手分けして探さないです?」
「んー言いたいことは分かる、確かに今の探し方じゃ時間はかかる、けどこのまま探すのが一番だと思うよ」
「でもこのままだと無駄に時間ばっかり取られますよ?」
やっぱりユウカさんは日本に居た頃の考え方が抜けてないみたいだな、この世界に来て少し時間も経ってるしこの辺で釘を刺しておいた方が良いかな。
「これはオレの考えなんだけど、今まで生活してきた環境や考えのまま、常識も価値観も何もかも違う他国に行ったらどうなると思う?」
「えっ? なんですか急に」
「トラブル発生待ったなしですね」
「姉さん?」
「そう、ましてここは異世界、常識や価値観だけじゃなく魔物まで跋扈する命が軽い世界だ。そんな状況で、どんな魔物が居るかも分からない場所を単独行動なんて、いくら討伐対象が自分より弱いとしても危険だと思わない?」
「それは……」
「もしユウカさんが魔物に捕まれば、オレもアヤカさんも全力で助けに行くけど、その間どうなるかは、ユウカさんも想像つくでしょ?」
「…………」
「ファンタジー物のBAD ENDを迎えたかったりする?」
「それは絶対に嫌ッ!」
「でしょ? だからある程度この世界の常識や、魔物の生態が分かるまで単独行動は控えようってこと、街での行動も常にアヤカさんと一緒だったのはその為だよ?」
「えっ!? あれってそういう意味だったの!? てっきり女の子慣れしてなくて恥ずかしがってるだけかと思ってた」
いやまぁその意図がない訳じゃないんだけど、指摘されると余計にくるものが……。
「そんな訳ないじゃない、だってあなた、ずっと日本に居た頃と同じ行動をしてて、危なっかしいったらなかったわ」
「ご…ごめんなさい」
どうやら分かってくれたみたいだ、でもこれはユウカさんだけじゃない、オレやアヤカさんにも言える事だ。
人は慣れていく生き物だ、この世界に慣れて気が緩んだ時、今言ったような状況になる可能性もあるんだから十分気を付けないと。
「ゲギャッ!」
「あっ!」
「どうやら話している間に近くまで寄っていたみたいですね」
「迂闊だった~、そりゃ話しながら歩いてたら相手に気付かれるよなぁ、自分で注意を促しておいてこのザマとか、何言ってんだって話だ」
相手がゴブリンだったからよかったものの。
強い魔物とかだったら音も立てず近寄って即死攻撃とかも十分あり得た話だ、話しながらも周囲を警戒する癖をつけないと。
「ゲゲッ!ゲギャァァァァァアアア!!」
「大声で雄叫びを上げるって、仲間を呼んだのかな?」
「そうかもしれないわね」
「2人とも、群れも集落も見付けてない以上、どこから来るか分からないから、背中合わせにして周囲を警戒するよ、攻めて来る方向が分かったら一転攻勢で」
「「了解!」」
「ゲギャ!」「ギギッ!」「ギギャギャ!」「ゲゲッ!」
声の数からそれなりに居るみたいだ、エサを求めての群れなのかそれとも何処かから移動して来たのか、どちらにせよ全部狩ってからだな。
「こっちの方から来たよ!」(
「わかった!」
魔法に合わせてオレとアヤカさんも群れに向かって突っ込んでいく、魔物最弱だが気性が荒く超好戦的なのと、数が多いと受付の人が言っていたな。
実際戦うと言われた通りで弱い、簡単に斬り倒せる、だが言うほど数が多いかと言われると、見える範囲には10匹ちょっとだ、多いかどうかと言われると正直微妙だ。
7~8匹程倒した辺りで向こうも勝てないと分かったのか逃げていく。
「逃がさないよ!」
「ストップ! 魔法は撃たなくていい!」
「え!? だってこのままじゃ逃げられちゃうよ?」
「逃げたゴブリンを追って他に居ないか探るんですね?」
「そう、逃げた奴等が全部同じ方向って言うのが引っかかる、気のせいならいいけど、もしかしたら他に仲間か集落があるかもしれない」
逃げたゴブリンに気付かれない様、付かず離れずの距離を保ちつつ追った先には、不自然に慣らされた場所があった、十中八九ここを集落にするつもりだ。
幸いなことにまだここに着たばかりなんだろう、群れにいる数よりもずっと少ない寝床と焚火くらいしか出来ていない、叩き潰すなら今だ。
「街道の直ぐ横とか、ホントに碌な事しない奴等だね」
「そうね。街から程々に離れていて、その上で街道に近い林の中。連絡を受けて自警団や騎士団が駆けつける頃には、襲われた人は集落に連れ去られてる絶妙なポイントね」
「どんな奴等もこう言う事には頭が回るもんさ。オレとアヤカさんで前に出るから、ユウカさんはデカイ魔法を一撃叩き込んだあと、少し後ろに付いて逃げそうな奴を魔法で倒してほしい」
「おけ、それじゃ2人共…全力で撃つからね!!」(
放たれた魔法は逃げ道を誘導するために、オレ達とは真逆の位置に落ちた、その魔法に驚いたゴブリンを十分に引き付けてから飛び出して先頭の数匹を斬っていく。
「ガギャ!?」「グギャギャ!?」「ゲギャ!!」
後ろには魔法、前にはオレ達でゴブリンは完全にパニックになっている。
「立て直される前に一気に仕留めるぞ!」
その声に反応する様にアヤカさんは剣を振るい首や胴を斬り離していく、ユウカさんは雷魔法で両脇から逃げようとしているゴブリン狙い撃ちしまくった結果、集落突入から数分でそこにいたゴブリン28匹を全滅させた。
「置いてきた分を合わせれば、30匹以上がここに集落を作ろうとしてたのか」
「他からも移動してくる可能性を考えたら、それ以上になるんじゃ」
「そう考えると本当に危なかったですね。もし出来上がっていたら街道を使う人達に、小さくない被害が出ていたかもしれませんし」
もしゴブリンが頻繁に街道付近に現れなければ、発見はもっと遅れていたかもしれない、正直今回は運が良かっただけだ。
他の冒険者なら最初に倒したゴブリンで、討伐完了と見なして引き揚げてもおかしくなかった。
「それじゃ証明部位を取って街に………どうしたの?」
((ふるふるふる))
2人共首を横に振ってる……あぁ、触れるのは嫌なのね。
その後オレは一人で証明部位である右耳を集め、一人で死体を一ヶ所に集めて燃やした、もちろん集落は使えないように破壊し、置いてきた分も同じく処理をして街に戻ることにした。
数日振りにリラインの街に戻って来たが休む間も無くギルドに向かう。
受付嬢に討伐証明を渡す際に討伐時のあらましを話すと少し慌ただしくなった。
どうやら8匹前後の群れと思っていたらしく、30匹以上+作りかけとはいえ集落は想定外という事で、念の為に関係各所に注意の連絡と、当分の間林の警戒がされることになった。
「それじゃオレ達はこれで」
「今回の討伐の件、本当にお疲れさまでした」
「おぉ、まだここに居たかナナセ」
「レスターさん、どうかしたんですか?」
宿に戻って食事をしようとしたらレスターさんに声をかけられた。
「ちょっとお前さん達に話があってな、今時間大丈夫か?」
オレは2人に視線をやるとどちらも頷いてくれた。
「大丈夫ですよ」
「そうか、ならちょっと付いて来てくれ」
そう言われてオレ達は後を追って2階の一室に入るとレスターさんが話し始める。
「討伐の件は俺も聞いたぞ、集落とゴブリン30数匹をお前達3人で全滅させたんだってな」
「そうはいってもGランクのゴブリンだし、そんなに誇れることじゃ」
「いや嬢ちゃんそりゃ違うぞ、ゴブリンだろうと何だろうと、数っていうのは思ってる以上に脅威になるのさ」
レスターさんの言いたいことは分かる、強い武器防具を身に付けるよりも、数が増える方がずっと分かりやすい戦力アップだ。
「嬢ちゃんだったら1対1の場合、意識はどこに向く?」
「そりゃ戦う相手ですよ」
「なら1対2だとどうだ? もちろん1は嬢ちゃんだ」
「それは2人を同時に意識しますよ」
「その時点で部分的とはいえ、1人に全力を注げないことに気付かないか?」
「そ…それは」
「2の数が増えれば増える程それは大きくなる、だから数っていうのは厄介なんだ、もちろん、1人でそれをひっくり返せる様なヤツも中にはいる、だがそれはほんの僅かだ」
地球でもそうだった、最新鋭の兵器はそれを持っていない側に対して、強力なアドバンテージというだけで勝てない訳じゃない、アドバンテージを上回る何かがあれば勝機はある、その何かで一番分かりやすいのが数だ。
「実際30匹以上のゴブリンとなれば、Eランクパーティー2組か、Dランクパーティーに要請が出るのを、たった3人で潰しちまったんだ……お前達、いっそDランク昇格試験を受けてみねーか?」
レスターさんの突然の提案にオレもアヤカさんも驚いた。
「Fランクじゃなく、Dランクの昇格試験を?」
「私達としては助かりますけど、でも一気に3ランクも上げて、大丈夫なものなんですか?」
「当然普通の冒険者であればこんな話はしない。だがオレはナナセの強さを知ってるし、嬢ちゃん達のステータスを見たことは無いが、恐らく並のステータスじゃねーだろう。戻ったときに疲れた表情見せない所か、十分余力があるのがわかる」
ジロジロ見られてる感は無かったのに、見る人は僅かな間でそんな所までしっかり見てくるのか、ギルド職員の人達すごいな。
「分かんないですよ? もしかしたらナナセさんが動いて、私達は付いてくだけって事もあり得る訳だし」
実際そんなことは無いが、オレ達の事を知らない人から見れば、ユウカさんが言ってる可能性だって十分考えられる。
「確かにその通りだが、嬢ちゃん達がそんな人間じゃねえ事ぐらいわかるさ。それに実力が無けりゃ試験で弾かれるだけだ、どうする?」
オレ達は顔を見合わせた後。
「「「受けます」」」
3人同時に言った。
「わかった。まぁ準備にそれなりに掛かると思うし、そうだな、数日中に連絡させるから、遠出になるクエストなんかは避けてくれ。ちなみに試験は戦闘試験だ、半端な覚悟で挑めば大怪我もあるからな」
「わかりました」
そうしてオレ達はレスターさんと話し終わったあと今日は早めに宿で休むことにした。
「受けると言ったものの、レスターさんが戦闘試験だって話してたけど、Dランクの魔物とのってことかな?」
「多分それは無いと思うわ、試験のタイミングで都合よく魔物が見つかる保証も無いうえ、捕獲しておくにもリスクもコストも多過ぎるもの」
捕らえていた魔物が万が一逃げだそうものならそれこそ街に被害が出るし、そうなればギルドが今まで築いてきた信用を地に落とす事になるからなぁ。
「この場合で言えば相応の冒険者との模擬戦とかになるんじゃないかな、あとは数ランク飛ばしての昇格試験だと厳しくされて何か条件を付けられたりとか」
「本当に冒険者との模擬戦なら、強い人達を当ててこっちの力を測りに来るよね? 人に魔法なんて撃ったこと無いから、どれくらいの威力になるか分からないんだけど……」
「もし心配なら街の近くに、魔物の棲む森があるらしいし、そこでレベル上げしながら、魔法の威力を調整する練習でもしてみる?」
「それかユウカも護身術が使えるんだから、接近して相手を組み伏せるのはどう? 魔法使いらしく無いとは思うけど」
「姉さんの案もいいけど、何をするにしても強くないと心配だから、レベルは上げたい」
その後3人で話し合った末、北東にある森で試験が始まる日まで修行することに決定した。
ゴブリン集落討伐の報酬 大銀貨3枚
討伐報酬 ゴブリン1匹に付き銅貨5枚×36匹
宿代 銀貨5枚
【名前】 カズシ ナナセ
【レベル】 7
【生命力】1962 【魔法力】549 【力】1062 【魔力】405 【俊敏性】957
【体力】801 【魔法抵抗力】630 【物理攻撃力】1062+350 【魔法攻撃力】405
【防御】401+20 【魔法防御】315
【スキル・魔法】
・剣術【達人】 ・徒手空拳【達人】 ・状態異常完全無効化【ユニーク】
・闘気Ⅰ【ユニーク】
【名前】 アヤカ ユキシロ
【レベル】 6
【生命力】690 【魔法力】532 【力】575 【魔力】443 【俊敏性】490
【体力】361 【魔法抵抗力】483 【物理攻撃力】575+180 【魔法攻撃力】443
【防御】181+230 【魔法防御】242
【スキル・魔法】
・護身術 ・初級魔法(水)(風) ・ストレージ・スペース【ユニーク】
・魔力干渉Ⅰ【ユニーク】
【名前】 ユウカ ユキシロ
【レベル】 6
【生命力】471 【魔法力】815 【力】180 【魔力】679 【俊敏性】265
【体力】288 【魔法抵抗力】560 【物理攻撃力】180 【魔法攻撃力】679+100
【防御】144+120 【魔法防御】280+10
【スキル・魔法】
・護身術 ・初級/下級/中級魔法(治癒)(炎)(雷)
・マジックキャンセラー【ユニーク】
・鑑識眼Ⅰ【ユニーク】
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます