霊感

タカナシ トーヤ

霊感

宇宙は広い。

たとえ人間と同じ姿形をしていなくたって、地球のほかにも、なにかが住んでいる星がたくさんあると思うし、むしろ地球以外に生命体がいないと考えるほうが難しい。と自分は常々思っていた。

だから、火星人とかいたらなあって思うし、UFOやお化けなんかもみてみたいと思っていた。


キャンプに行ったら、UFOが出現しないか夜空をずっと眺めるし、普段数分も見ないテレビも、宇宙や古代文明の話なら何時間でも視聴できる。



そんな自分だが、残念ながら霊感は持ち合わせておらず、幽霊や妖怪をこの目で見たことはなかった。

しいていえば、金縛りにあったことくらいであるが、金縛りは正確には霊体験ではないらしい。


ただ、小さい頃から、特になにも嫌なことも辛いこともない日に、なぜだか突然息苦しくなり、ボロボロと涙が止まらなくなって、頭がおかしくなりそうになり、そんなものあるのかどうかも知らないのに、親に「精神安定剤をちょうだい」とか言い出すほどの状態になり(どんな子どもだよ)自分はいったいどうしたんだと不思議に思っていたら、そのあと、その時間に、ばあちゃんちで長年飼っていた犬が亡くなっただとか、じいちゃんが亡くなっただとか、ばあちゃんが救急車で運ばれただとか、そんな知らせを受けることはあった。

なぜだか急に嫌な予感がして、実家で飼っていた老犬に会いたくなって、急遽飛行機をとって帰省して、実家にたどりつく直前に父から犬が死んだと知らせを受けたこともあった。


母は、あんたは不思議な子だね。といつも言っていた。



そんな自分だったから、死んだおじいちゃんやマロン(犬)が霊となって近くにいてくれればなあ。なんて思ったりもするし、見えればいいのにと思うし、UFOやら宇宙人やらそんなものがもしいるのであれば、会ってみたい、仲良くなりたいと思っていた。



高校に入った自分は、自転車通学を始めた。

通学路の途中には大きな橋があり、その橋を通らないと学校へ行くことはできなかった。



その橋は、橋を下りるところで橋の下から進行方向へのびてくる歩道と合流するようになっており、高校生の自分が見ても明らかに視界が悪く、いつ事故が起きてもおかしくない構造だった。


実際、橋と歩道の合流地点にはよく花束がたむけられており、「いついつ事故が起きました」「⚪︎⚪︎ナンバーの車を探しています」などとよく茶色い看板が立てかけられていた。


その橋を通るようになってしばらくしたある日、自転車のハンドルを持つ自分の右手の横から、青白く透き通った右手が伸びてきて、自分の自転車を右に引いた。



自分はバランスを崩し、よろめきかけた。



!!!?????





それ以上は、なにもなかった。




気のせいか?

でも、たしかに右にひっぱられた。



橋の前後をみまわしても誰もいない。




その日を境に、時々自分は不思議なものをみるようになった。

そこには恐怖はなかった。

幽霊だって、誰かに気づいて欲しいんだ。きっと。

左に引っ張れば自分を車道に投げ出せる。でもあの手は、右から出てきた。

右に倒れても、橋の手すりにぶつかるだけだ。



この不思議体験を、自分は普通に人に話したわけだが、親は、あんまりそんな話をするとおかしい人だと思われるからやめなさい、と自分を止めた。




自分の話を1番真剣に聞いてくれたのは、おばあちゃんだった。

おばあちゃんは、UFOを見たことがあると真顔で語る人だ。

おばあちゃんも、そんな話は人にするもんじゃないと人から言われたらしい。



もしかしたら、ただの幻覚、ただの幻だったのかもしれない。

でも、高校を卒業して橋を通らなくなった途端、自分の霊感は失われた。

それ以来、現在まで、どれだけ見たくても、いまだになんの霊にも遭遇することができないでいる。



自分は信じている。

おばあちゃんの話も、死んだ後に魂があることも、地球の外に生命がいることも。


そうであってほしい、と願っている。





END




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

霊感 タカナシ トーヤ @takanashi108

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画