第4話
起きろ。起きろ。父親の声で目覚めた青年の左足が痛む。不注意で木の根につまづき、転んで捻挫したのだ。父親は青年を背負って山を降りる。
青年は背負われながら、頭上に意識を向ける。そして父の側頭部を狙う小石をキャッチした;小石は彼の手をすり抜けた。正確には手があるはずの場所を。青年の腕は父親の首を締め付けていた。
「違う、動け!動けっ!」
青年は目蓋を締めて叫びながら、ドロドロの路面に身が投げ出される瞬間を覚悟と共に待ち続けた;いつまでも父親の両腕は彼の両脚を離さなかった。
目を開いた青年はまた、斜面を下る小石を感じた。彼は父親の耳の上で左手を2度開閉する。父親の首を離れた腕の端は確かに降ってくる銃弾を握った;小石は止まらずに彼の拳を巻き込んで父親の頭蓋骨を砕く。
さあ待ち望んでいた通り青年は水溜まりの上へ投げ出された。膝から抜け落ちる父親を彼は幾分か落ち着いて眺めていた。そして振り返ると熊がいた。
後ずさりしながらゆっくりとその場を去る青年を彼は見つめていた。そして彼は非常な空腹で父親を見つめる。血の滴る匂い。
「やめろ・・・。」
青年は目の前で食われていく父親を食べることしかできなかった。味も臭いも鮮明に脳に伝わってきた。拒絶しても否定しても無駄だった。
おい、父さんはうまいか?
「やめろ!」
目が覚めた青年はじっとりと汗をかき、夢の中の熊と同様に空腹も酷かった。喉も乾いていた。時計を見ると午前四時。父親の命日になっていた。
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