第10話 餓鬼は能無しだった

やっと落ち着きを取り戻した餓鬼は僕に非常にくだらない質問をしてきた。因みに権力者の方は何かぶつぶつ独り言を言ってて完全に1人の世界に閉じこもっている様に見える。


「じゃ、じゃあ、貴方の種族には痴呆とか老人が悩む色々は無いんですの?」


痴呆は分かるけど色々って何…。話の流れ的に時間経過で失う何かしらなのは分かるけど…。


「何のことか分かんないけど、時間経過で失う何かしらなら僕らには無いよ。だって寿命が来る前に外敵に殺されるもん。長老曰く移り住む時について来ちゃった色々があそこの環境に適応して猛威を振るってるんだって。特に怖いのは大きな空飛ぶトカゲだよ。少し前の襲撃で人口の3分の1が死んでやっと討伐出来たんだから。真隣の同胞が骨も残さず消えた時は死んだと思ったけど…。」


あれは冗談抜きでトラウマ物だ。暫くトカゲを見るだけで悲鳴あげて狩れなかったもん。


「も、もしかしてその討伐参加しましたの?」


「そりゃ当然。絶滅が直ぐそこまで迫って来ている状態で戦える奴が戦わないでどうやって今までの生活を維持するの?あんな大災害ほぼ総力戦だよ。君みたいに僕らは無抵抗で死を受け入れる程馬鹿じゃ無いの。勝たなきゃ全滅なら皆立ち向かうよ。」


餓鬼が絶句している。…もしかして本当に心の底から抵抗せずに諦めて死を受け入れるつもりだったのだろうか。ここまでお子ちゃまだと餓鬼という呼び方も相応しく無いな。現実を知らない哀れなで無力な存在って所か。能無しと呼ぶことにする。


「年齢的に…。」


「歳は言い訳にならない。言ったでしょ。立てる様になったその日から1人でも生きていける様にならなきゃいけないって。君達みたいな甘ちゃんじゃないの。で、そっちはいつまでブツブツ言ってるつもり?」


「あの記録は本当の可能性が高いな。ここは敵対するのが得策ではない。欲深く奴が関わったら俺たちの方が殺し尽くされる…。あれがこれに勝てたのは武器がなかったって事が大きいな。実践経験も豊富で同胞のためなら死の覚悟まである実力者集団…。これをどう料理するかで今後の命運が確実に分かれる。神め、よくも面倒な存在を誘拐して来てくれたな…。」


どうやら未だに権力者さんは未だに自分の世界に閉じこもってるらしい。うん、面倒くさい。お前を利用しないことには僕はスタートラインにすら立てないのだから早くその腹を決めてほしい。と言うかこの家から早く出たい落ち着かないし、鎧と会いそうで嫌だ。今の武装では絶対勝てないのに絶対反射的に襲いかかるもん。


「能無し、お前の親だろ。どうにかしろよ。」


「餓鬼からさらに酷い呼び名になってません!?」


「五月蝿い。餓鬼と呼ぶのも憚られる程にお前が幼稚過ぎただけだろ。もしかして自覚ないの?」


「流石に貴方無礼過ぎますわ。不敬罪と侮辱罪で処刑出来ますのよ?」


僕は塵を見る様な目で能無しを見ながら忠告しておく事にする。あまりにも現実が見えていなすぎる…。


「はぁ、君如きが僕に勝てると思ってるの?呆れて何も言えないよ。片手武器無しでも君程度なら瞬殺出来るんだよ?不敬罪?君のどこに敬意を表すべき箇所があるの?親の権威に縋る子どもだって宣言した様な物じゃん。それと侮辱罪?僕の指摘の何処に侮辱している要素があるのかな?事実を指摘しただけに過ぎずそれが侮辱になる程度には弱者で傲慢で、その癖心の底から生を渇望していない。僕から見ると君は矛盾だらけで不快な存在なんだよ?生きる気が無いのなら無駄に他者の命を消費するのやめた方がいいよ。今直ぐにでも静かに餓死するべきだよ。」


どうやらこの時代は生きるのに消極的な癖に他者の命を奪って食事にありつく異常な存在が生を謳歌し、食物連鎖の頂点に立つ異常な時代らしい。もしかしたら世界自体が違うのかもしれない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る