第7話 無駄な努力と暗躍する者達

僕が目覚めると同じ部屋だった。


「無限ループ?」


一瞬そんなくだらないことを思ったが部屋の様子を見て無限ループでは無いことを確信した。僕が割った窓は既に張り替えが完了していたが部屋の備品は尖った物がない様に調整されている。


「僕を飼育でもする気か?それとも剥製かな?」


僕は読み物で貴族という存在を知っているが大概変な趣味をしている。僕の住んでた場所には権力者は居なかったからその辺の事はあまり詳しくない。

ぐるぐる回る視界の中僕は立ち上がりフラフラと窓に近寄り軽く叩くが僕の拳は窓に直接当たる事はなかった。


ゴンッ


「予想通りあの外骨格と同じだ。」


僕はこの外骨格の脆い部分を見つけ出すため、椅子を引っ張ってきて座り窓の下部を入念に調べる。


「強度はどこも同じ?不思議だ。大体の物体は確実に脆い箇所ができる筈…。なるほど衝撃を分散させる形で強度を上げているのか。」


椅子に乗り上の方も調べると全体が同じ強度である事が分かった。


「って事は一点集中が効果的だ。多分構造的に脆い箇所はない代わり少しでも綻びが出ればバランスが崩れて割れる。その綻びを生むには分散されない様に尖った物を押し当ててその頭を思いっきり叩けばいい。意外と簡単。」


尖ってて固い物は当然押収されているので無いのだが奴らは1つ大事な事を忘れている。


「僕自身が隠し持ってないとは言ってない。長さも強度も武器には適さないモノが取られてない。」


僕は髪に手を入れるとヘアピンを1つ外し手に持つ。


「あ、待って片手しかないから出来ないじゃん!!」


スッとヘアピンを髪に戻す。


「まぁ、お気に入りのヘアピンを壊さずに済んだだけ良かったと思おう。」


僕は現時点で打てる手はないと思い、貧血を早く解決するためにもベッドに戻り眠る事にした。



ーカミール家当主コレート視点ー


「実力は想像以上だがこちらの歴史と大分違う所から連れ去られたらしいな。記録に残ってる物を見る限り新たな世界からの神隠しか。して鑑定結果は?」


「私で見えたのはこちらに書いてある通りです。もしかしたら一部弾かれてるかもしれませんが…。なんせ相手は伝説の存在ですから。」


名前:シルフ・ロジーシエル

加護:風乗りの加護、魔除けの加護

種族:アークエルフ

性別:男

年齢:12

スキル:究極弓術、速攻解体、加工、簡易調合、熟練罠作成、熟練隠密、超級忍耐

称号:古の生き残り、異界へ逃げた者の末裔、渡り人、帰還者


「ほぉ、この歳で究極とはやはり遠距離武器を持たれていたら俺が負けていたな。てか、俺が手加減したことを加味しても体術系のスキル無しで超級拳術と超級剣術持ちの俺の速度と威力に追従出来ていたとなると相当自力が高いな…。恐ろし過ぎる才能だ。」


※スキル等級

初級<下級<中級<上級<熟練<超級<究極<神級<創級

スキルの等級で最も多いのは中級のため中級は等級を省略するのが一般的である。因みに超級辺りが人の限界とされている。

※スキル等級イメージ

まいぎり式→火打石と打ち金→マッチ→ライター→バーナー→溶岩→核分裂→恒星→ビッグバン


「この歳でこの才能は種族故でしょうか?」


「それもあるだろうな。実戦の経験のが大きそうだが…。口ぶりからしてその日必要な分を狩って村か町ぐらいの規模の同胞の腹を満たしていたらしいからな。魔法の存在を知らない様だし初めて繋がる異世界か?」


「いえ、恐らくですが過去に繋がった事のある世界の並行世界だと思われます。日本語なるものはわかりませんでしたが昔の渡り人の自伝に登場する大日本皇國と言う国で使われていた言語と似た様な言語であると推定されます。何せ文字が同じですから…。」


「あー、この遺物の効果か。…こっちの言語教えといた方がいいか?流石に一応は家宝であるこの遺物を渡す訳にはいかないしな。」


「さぁ、私は存じ上げません。少なくとも敵対される様な行為は控えた方が宜しいかと。」


「まぁ、よくよく考えてみればエルフって俺ら人間に狩り尽くされた訳で、腕落とされて目が覚めたら知らない場所に連れ去られてましたってなったら敵対行為と取られかねないかぁ。」


「では、今後の方針をまとめましょう。早くしないと下のものが馬鹿な真似をするかもしれませんし…。ほら、彼見た目は美少年でしょ?」


「それもそうだな。」


それから暫くの間2人の討論は続いたと言う。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る