妖精物語

すみはし

妖精物語

私には小さいころから妖精が見える。

こちらこちらと道行く方向を示してくれる可愛い妖精たち。

だから私は間違った道を行かない。

メルヘンチックだと思われるかもしれないけど本当なんだから。

正しい道は妖精さんが示してくれるのよ。


それはそれとして話しておくべきことが一つある。

両親の死に関してのことだ。

父親が死んだとき、私はそいつを見殺しにした。

虐待といっていいのかは当時わからなかったけど、多分そういって差し支えないはずの行為。

細かく思い出すと私がイカれてしまうので割愛。

妖精が見えるようになったのはこのころから。


「あなたは大丈夫よ!」

そう言ってくれる妖精が出てきてくれて、私は安心してしまった。

私は間違ってなかったんだ。

それ以来私の正しい道を示してくれる。


でも母親はそれ以降おかしくなっちゃった。

妖精さんがお母さんは間違ってないよって言ってくれるのに、

「あの時私がこの子から目を離さなければ」

ってときどきぶつぶつ呟くのよ。

何のことかさっぱりわからないわ。

私は妖精さんに従うだけ。


お母さんは私をお医者さんに連れて行ったの。

「この子、おかしくなっちゃって」

失礼しちゃうわ、何がおかしいの?

私はただ、正しい行いをしているだけ。


ただ、正しく、近所の犬が私に吠えれば優しくホウ酸団子を差し出して、

私に意地悪する子がいれば、靴を隠したあの子の靴箱をバットで殴って開かないようにして、

お母さんの悪口を言う人がいればちょっとだけ背中を押して。

正しく等しく返しているだけなのに。

妖精さんがそう言ってくれるからね。


「この子は入院が必要ですね」

お医者さんがそう言ったわ。

訳が分からない。

何でそういうことを言うの?

お母さんは悲しそうにうなずいていた。


そう、お母さんは悲しいのね。

ならこのお医者さんは何とかしないと。

妖精さんが囁くの。

だから仕方ないのよ。


「この子は『妖精さんが見える』っていって変な行動を起こしては笑っているんです」

そうお母さんが言ったって、仕方ないのよ。

妖精さんが言うんだから。

こんなこというお母さんはどうすればいいかしら、ねぇ、妖精さん。

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