第15話 エピローグ
とっぷりと陽は沈んでいつもなら夜の静寂に包まれるような邸内はまだ庭で歓声をあげて騒ぐ人々のざわめきが灯りを落とした寝室に遠く聞こえている。
俺は湯浴みを終えて二人の寝室になったアンスンの寝室のベッドに乗り上げ足を伸ばして座りながら用意されていたウイスキーを傾けていた。
花びらが散らされた白いシーツに淡く花が香る、余裕を持ちたいところだが既に不埒な期待に身体が負けそうになっている。
カチャと控えめに開いた扉の隙間からこっそりと覗いたアンスンが恐る恐ると部屋に入り後ろ手に扉を閉める。
おずおずとその場から動かないアンスンにポンポンと自分の横を叩いてアンスンを呼ぶと、チラッと俺を見てゆっくりと近寄って来る。
その時間すら惜しくベッドに腰掛けようとした彼の腕を引いてやれば体勢を崩したアンスンが「わぁ」と俺の膝に落ちて来た。
持っていたグラスをサイドテーブルに置き、アンスンを膝に抱えあげ横抱きにすると腕の中で大人しくなったアンスンの頭に口付けた。
「お酒の匂いがする」
「少し、な」
「ふぅん」
薄いシルク地のガウンを羽織っただけの彼が上目遣いに俺をチラッと見て目を逸らした。
肩に置いた手をゆっくり腰に滑らせる、冷たいシルク越しに滑らかな肌の感触が伝わる。
ふるっと体を震わせて緊張に体を強張らせるアンスンを安心させるように俯いた顎を捉えて上を向かせると、赤く艶のある唇を喰んだ。
差し入れた舌で口腔を弄れば、舌に合わせてビクッと体が揺れる。
かくんとアンスンの体から力が抜けて俺にしなだれかかりながらも与えられる快感を貪る彼に下半身へと熱が集まる。
余韻を表すように唾液の糸を引いて唇を離すと、鼻頭を合わせ彼の快楽に潤んだ濃紺の瞳を見ながら俺は最後に問いかけた。
「富や権力も何もなくなってこの身一つだ、お前に全部やるから受け止めてくれるか?」
少し見開いた濃紺の瞳が弓形に弧を描き「はい、全部僕にください」と答えた彼をベッドに押し倒した。
「おはよう」
涙に腫れた目を擦るアンスンの手に口付けると、むうと唇を尖らせた彼が「やり過ぎだよぅ、うう、おはよ」
と泣き言を言うのが可愛く俺はクスクスと笑いながら尖らせている唇に口付けた。
「おはよう」
ふふふと笑いながら俺の胸に擦り寄る彼を抱きしめると、その温もりがたまらなく愛おしい。
「そろそろ起きなきゃ」
そう言いながらも起き上がる気配のないアンスンの髪を撫でる。
「アル、擽ったいよ」
笑う声が重なった。
【完結】断罪された王子様とひ弱男爵の辺境領地生活 竜胆 @rindorituka
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