源義経黄金伝説■第10回

源義経黄金伝説■第10回

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

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大江広元(おおえひろもと)は、これから奥州平泉を攻めようとする頼朝にとっては勝利を確約する、いわば勝利の女神であった。


なぜなら、大江広元の曾祖父は、奥州攻略を成功させた八幡太郎(はちまんたろう)の知恵袋だった。


占いの専門職。

占いはこの時期の総合科学である。

しかし、今、その広元は恐怖を感じて、青ざめていた。

このままでは、会場の武士を味方にしてしまう。


大殿はいかに、頼朝をかいま見る。


政治顧問である,荒法師の異名をとる文覚(もんがく)でさえ、静の舞に内心は心動かされていた。


文覚は若い頃、北面の武士の折、色恋沙汰で殺傷事件を起こしている。感情の高ぶりをおさられないのである。この感情の濃さが、いい具合に発露すると、それが、寺社の勧進(かんじん)となった。


また、頼朝に対する挙兵を教示し、いわば、頼朝の教師である。


頼朝とは幼き頃、朝廷で顔を見知り置いている。

その後、文覚は数々の荒行をこなし今は、江ノ島で、藤原秀郷の呪殺を、頼朝から依頼され、とり込んでいる。


先年、後白河法皇から許可を受け、京都から、頼朝の父、義朝の骨を発見し、クビからぶら下げ、東海道を下るという鎌倉幕府成立の知らしめる行いしながら帰ってきたばかりである。

この寺は、勝長寿院・大御堂という。


骨の髄から、頼朝は、平泉を恐れている。


16万の軍旗が、義経という天才に率いられて鎌倉を背後から、また海から襲ってくる事。おそらく、この日本で、義経は最高の軍事指揮官であろう。

それは頼朝も、いらなぶ、坂東武者もわかっている。


傍らに控える大江広元も、文覚も理解しているだろう。

この勝利はまさに義経のおかげである。

そのため、そのおもいものである静かが、ここで、頼朝に対して恭順のいを著わすべきであった。が政子が、、意図と違う事を、わずかながら、意思の疎通がうまくいかぬ。


また、最大のネ交渉者、西行(さいぎょう)法師が、この鎌倉を目指していると文覚から、聞いている。

西行は、京都王朝で、始めて伊勢神宮と、東大寺の手を握らせた男。

後白河法王の意図で動く男。文覚とは、北面の武士の折の同輩。

そして義経とも、平泉とも、近しい。


この坂東でも、西行の本家、佐藤家の威光は輝いている。東北の伝説の勇者、平将門(たいらのまさかど)を強弓で射抜いた、俵の藤太の子孫。それが西行。加えて、当代一の詩人・この文学的功名は、京都貴族の中においても光り輝いている。

いわば京王朝の切札。


また、平泉にとっても最強の交渉の1枚。

まして、民衆の指示を受けつつある東大寺再建指導者、重源(ちょうげん)の友人。


そして、その後ろには結縁衆(けちえんしゅう)。

恐らくは東大寺を始めとする京宗教集団の力も。

意図は何か。西行は1万の武装集団よりも怖い。

頼朝はそう思った。


源氏は鉱山経営と関連が深い。

祖先・源満仲は、攝津多田の庄(現・兵庫県川西市)の鉱山経営の利益を得ている。能勢・川辺・豊島三郡における鉱脈を支配し、最盛期2000を越える抗を穿っていた。


鉱山の警備隊として武士団を養い、鉱山経営のうまみを知った源氏は、その後、京都大江山鉱山の利権も手にした。その利権を手に京にいき貴族を籠絡する。いわば鉱山貴族である。


いわゆる大江山鬼退治の伝説である。


源氏は一族の血の記憶として,鉱山経営のうまみをしっている。

そして、今、目指すは奥州金山である。

源氏の護り神、八幡神は、産銅・産鉄神である。

最終目標は奥州。また、そのためにもこの東国の独立運動はまもらねばならぬ。


東国王朝は、源氏の悲願である。奥州平泉王朝を打ち倒す事もまた源氏の悲願。


それぞれの思いの中、やっと頼朝は、言葉を発した。


続く

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

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