【リレー小説企画】暇な日に捧げるギャグ小説を書きたい。

高谷

第2話(高谷筆)

 とりあえず必要はないけれど軽トラの運転席側の扉を後ろ回し蹴りで蹴破り、そのまま外へ出ると見せかけて反対側の助手席の扉から髪をなびかせ、うなじからウナギのかば焼きのタレの香りを優雅に漂わせ外へと脱出する私。

 本日も食欲をそそる良い香り……3日間ウナギ屋の換気扇に張り付いていた甲斐がありましたわ。


 などとのたまっている場合ではありませんわね。

「困りましたわ……」

 私は軽トラを眺めるようにして呟く。

 車とゴリラ……主に車とニシローランドゴリラにはあまり詳しくはないのですが、この軽トラは恐らく寿命である事は間違いないかと……なにせ私が生まれた時にはブラジルのメイドカフェで使用されていたと聞き及んでいますので。

「仕方ありませんわ。次からは軽トラではなく本物のトラか本物のポセイドンに乗ってホームセンターへと参りましょう……」


 ――と決心していると。


「おや? そこに居られるのは山田口やまだぐち様ではございませんか?」

 声は突然に後ろからかけられましたわ。

 素早く、そしてワキの下から桃の良い香りを振りきながら後ろへと振り返る私。

 本日も甘く良い香り。3日間腋の下に桃を挟んで筋トレをした甲斐がありましたわ。


 しかしこの私に気取られず背後をとるとは――と視線を這わせると、そこには燕尾服に身を包む老紳士。白い頭髪も口髭もキレイに整えられた、気品あふれる老紳士が佇んでおりましたが――? こんな山に老紳士?


 私は妙な違和感からか周囲の警戒を怠らず口を開きますわ。

「あの……どなたか存じ上げませんが私は『山田口 レジュリア』ではなく『山田 ロレジュリア』ですわ」

 すると私の言葉に老紳士は慌てた素振りも見せずに腰からゆっくりと体をくの字に曲げ。

「これはこれは、大変失礼を致しました山田」

 急に山田呼びっ!? もしかしてこの老紳士ッ、紳士の皮を被った鬼畜ジジィの可能性が……?

 と私が内心でツッコミを入れているとドSの可能性の獣は。

「それと申し遅れました。こうして直接言葉を交わすのはお初でしたな? 実は私は山田様の家から300m離れたお隣から執事喫茶に週5で通っている大工の『大エレガント』と申します。今も執事喫茶からの帰宅中にお姿をお見掛けをしたのでお声がけした次第でして……」

「そんな雰囲気を醸し出しておいて、週5で執事喫茶に通っておきながら要はただの大工っ! 名前も『大エおおえ レガント』ッ!? ふざけ過ぎですわっ!」

「人の事を言えた義理ですかな山ロ?」

「ヤマロじゃなくて山口ですわっ! じゃなかった山田ですわっ!」


 もう血管がブチ切れそうですわ。まさかお隣さん? との初絡みがこんな事になるなんて……。でも、もしレガント様が助けて下さればこの軽トラを一人で担いで帰らなくて済むかも……?

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【リレー小説企画】暇な日に捧げるギャグ小説を書きたい。 高谷 @udonymd

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