第8話

翌朝、私が登校すると、少し遅れて君が来た。

「…あっ」

「…おはよう、大丈夫?」

そんな私の問いに、君は目線を少し足元にずらした。

「…大丈夫」

「ねぇ、あとで時間あったりする?話があって…不安だったら友達とかと一緒に来て構わないから」

「…わかった」

迷いはあったが、君の声色と瞳に何故か警戒心は無かった。

__

____

少し長めの休み時間、私は君を人気の少ない場所に呼び出した。

「話って?」

「んー…いや、なんていうか…」

いざ呼び出したはいいものの、言いたいことが溢れかえって、言葉に詰まってしまった。

まず第一にすべきは謝罪なんだろうけど…私は図々しくも、最初に「昨日の返事は?」などと聞こうとしてしまっていた。

「あの…ごめん…ずっと、いじめちゃってたみたいで…」

「…ごめんだけ?」

今まで弱々しく見えていた君から放たれた少し鋭い返答に、私はちょっとだけ足元をすくわれてしまった。

「えっ、と…すみませんでした!今まで…無視したりとか…しちゃって…」

「…私の事嫌いだった?」

そんな君の言葉に、つい食い気味に返答してしまった。

「違くて!!…私だけ見て欲しくて…」

いざ口から出してみたものの、恋心も何も、友達とすら認識してくれていないであろう相手にこんな発言をするのは、少々、いや、かなり気持ちが悪かった気がした。

「なにそれ…自分勝手」

「だよね…ごめん…」

「…嫌いじゃなかったってことでいいの?」

「あえっ…うん、そう…」

そう言うと、君は少し安堵した顔を浮かべる。

「…よかった」

そして、君は抱えているものを吐き出していく。

「私…嫌われたくないの、誰にも。そんなの無理だって分かってる、けど、誰かに嫌われるなんてそんな悲しいことないじゃない?」

まともに会話したこともなかった君から吐き出されるものに、少し戸惑いながらも相槌を続ける。

「だから…いじめられてるのも辛いけど、誰かに嫌われてるんだ〜って状況がすごい嫌で…昨日は冷静じゃなくて、受け流しちゃったけど…嬉しかったの、好きって言われて。変だよね、ずっと嫌なことしてきた人に言われたのに」

少し笑みを零しながら君はそう言った。そして、私もその発言に嬉しくなり、少しだけ微笑んだ。

「…聞いていい?」

「うんっ!?なに…?」

突然の問いかけに驚き、情けない声を上げてしまった。

「あなたの…花園さんの好きってどういう好き?」

私は呼吸を整え、しっかりと山口さんの目を見て言った。

「…Loveです、それもとびっきり重たいやつです。」

「…付き合う?」

そんな突然の山口さんからの問いに、私は何故か迷ってしまった。せっかく整えた呼吸も乱れ、顔を隠し、情けない声で返事をした。

「…よろしくおねがいします」

その時私は、今世紀最大に情けなく、今世紀最大に幸せだったと思う。






「ていうか、友達と話してるとことか、もっと可愛い感じかと思ってた。意外とさっぱりしてるんだね」

「…嫌?」

「ん〜?全然」

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