第20話

 両親を説得するには理由がある。


 人間たちが住む、ここ『リベリオン』と魔族の居住地では完全に壁で隔離されてて、互いに行き来することはできない。


 って、伝わってるけど—――それは嘘だ。


 本当は隔離されてるように見えるだけで、人間と魔族間では行き来することができる。


 なら、どこで?


 お察しの通り—――ボクたちブルーム家にある。


 ブルーム家の地下には、ボクたち家族にしか知らされてない―――隠し通路が存在するんだ。


 そこから、ボクたちは魔族のところへ向かって報告したり、逆に魔族が訪れるのは報告の真偽を確かめる時だ。


 その隠し通路を使用するために、ボクたちはこうして両親を説得してる、ということだ。


 ボクが話を切り出すと、両親は緩み切った笑顔で言う。


「センカ~。センカのお願いって一体、何を俺たちにしてほしいの~」


「珍しいわね~。センカちゃんがパパとママにお願いするだなんて~。甘えたくなってきちゃったのかしら~」


 パパ上とママ上は……ボクに激あまだ。


 しかしそれは、今まで以上にあまあまだった。

 

 なぜなら元のセンカは、絶賛反抗期中だ。


 本来であれば、センカがこんなお願い事をするわけがない。


 だからこんなに―――喜んでるんだ。頼ってもらえることが嬉しくて。


 でも……ごめん、こっちでの両親よ。


 今のセンカはボクだ。


 お願い事だって言うし、頼りたいものは頼りたい。


 利用なんかして……ごめん。


 ん~だけど、どうしてだろう―――


「むふふっ」


「うふふっ」


 二人のこの顔を見たら、不思議と罪悪感が湧かない。


 いや、二人が悪役だと知ってるからかな?

 

 その瞬間、二人の優しい笑顔を消え去った。


 ……隣に座る、ステラに目を向けたことで。


「ごめんな、センカ。まずセンカのお願い事を聞く前に、なぜこのメイド風情がここにいるのか、そして俺たちの宝であるセンカの隣に座ってるのか教えてくれ」


「そうよ? センカちゃん。せっかく家族団らんの空間が汚れてしまうわ。あぁ~やだやだ。ホント、どっか行ってほしいわ~」


 パパ上の侮蔑とママ上の嘲笑が、ステラの心を傷つけようとする。


 こんの……!!


 だからボクは、今すぐ止めるようローテーブルをバンッ! と叩いて立ち上がった。


「二人とも! それ以上、ステラをバカにするようなこと言ったら—――」


「センカ様、大丈夫ですよ」


 隣から優しい声が聞こえた。


 その声によって、不思議とボクの怒りを鎮まった。


 そして隣へ視線を向けると、そこにはボクを見上げて優しく微笑む―――ステラがいた。





〜あとがき〜


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