第18話
「そうですね……。アネモネ以外ですと『バラ』、『撫子』、『ボタン』、『ヒマワリ』……合計で5種類のお花を育ててます」
「あ、そうなんだ! ちょうどイイね!」
「丁度いい……とは?」
「魔王四天王と魔王にあげるから、五つのお花でちょうどイイってこと!」
なるほど、と言ってステラは頷く。
この世界ではお花を育ててはいけないから、隠れて育てるなら、二つか三つの種類のお花だけかと思ってたけど、杞憂だったようだね。
ボクとしては同じお花を上げることは何だか思いが伝わらないような気がしてて……。
よかった……ちゃんと一種類ずつあげられるようで。
これなら、実力行使に出る必要はないかもしれない。
でも—――それはそれとして、ボクには気にあることがある。
「ステラ」
「はい?」
「もしかしてなんだけどさ。君の育ててるお花たちって―――みんな萎れてるんじゃないの?」
「ひぃっ!」
小さく悲鳴を上げたステラは後退る。
そしてボクは迫る。
もちろん、笑顔で。
怖いことなんか一切ない。
なのに—――
「どうしてそんな怯えてるの? ボクはただ、萎れてるんじゃないかって訊いてるだけだよ? ねぇ、どうなの? ステラ。ほら、怒らないからさ」
「ガタガタガタ………!」
「ねぇ」
「ガタガタガタ……!」
「ほら」
「ガタガタガタ!」
「早く—――教えて?」
するとようやく、後退っては迫るという攻防が終わり、なぜかステラは土下座して命乞いしながら白状した。
「なるほどね。お花を早く元気にしたくて、水魔法で大量にお水を与えちゃったんだ……それも毎日」
「うぅ……はい……。ごめんなさい……っ」
正座して反省した様子で、ステラはそう言った。
涙の跡と鼻水で顔がぐしゃぐしゃになってるのは目を瞑ろう。
これはかなり怖がらせちゃったみたいだね。あの反省ぶりは……。
そんな怖かったのかな? 普通に訊いただけなんだけど。
でも、それより—――
「いい? ステラ。何でもかんでもお水をあげればイイってもんじゃないの。夏とか気温が高い日以外は週に一回で、お水の量は大量じゃなくて適量。……まぁ、それはボクが教えればいいか」
「ありがとう……ございましゅ……」
深々とステラは頭を下げた。
ボクはそれに「はぁー……」と深く溜息を吐いてから、手を差し伸べる。
「ほら、ステラ立って」
「しぇ、しぇんかしゃま……?」
ぽかんとした顔(めっちゃ充血した目)でボクを見上げるステラ。
ボクは強引に手を掴んで立ち上がらせる。
「あのね、さっきからステラはボクが怒ってるかもって思ってるけどさ。別に怒ってなんかないよ」
「えっ? ですが、センカ様の—――冷え切ったあの目は……明らかに……その」
「ボクってば、そんな目してたの!?」
ステラは気まずそうに……頷いた。どうやら本当らしい。
「な、なんかごめんね……。お花のことになると………人格変わるのかな? ボク……。まぁ、それはそれとして。ステラ」
「は、はいっ!」
「ボクもね……ステラと同じミスをしちゃったことがあるんだ」
〜あとがき〜
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