第4話

 四方に散らばった敵が一斉にビームライフルを撃ってくる。

 後方まで取り囲まれていて、逃げ場はない!


「いや、ある!」

 タケトはレバーを引っ張ったあと、一気に押し上げる。それに合わせて、両足のペダルを踏み込んだ!


 ギューーーーン!


 深紅の機体が大空を舞う!


「なんだよ……この跳躍力……」

 操作するタケトでさえ呆気にとられるほど、機体は高く舞い上がった。下方に視線を向けると敵の機体が小さく見える。その全てが顔を上空に向けて動きが止まっていた。


 このタイミングを逃すまじと、タケトは右手を敵へ向け、ライフルを撃つイメージをする。


 ビュン! ビュン!


 放った二つのエネルギー塊が別々の敵にそれぞれ命中。


 ドーン! ドーン!


 激しい火花と黒煙を放って、二体が爆発した。

 その煙の中に紛れて、タケトの機体は着地する。相手から狙われる心配はないが、自分も視界が得られない。しかし――


(わかる! 敵の位置が――ハッキリと!)


 モニターは真っ黒な煙幕以外映し出されていない。なのに、敵の機体がタケトには把握できた。

「そこだ!」

 

 ビュン!



 放ったビームが相手に着弾!


 ドーン!


 相手の核融合エンジンに着弾したこともある。しかし、厚い装甲をいとも簡単に撃ち抜く威力もスゴい! たった一発で、敵の巨大人型兵器が破壊されてしまうのだ。


「あと、六機!」


 さすがに分が悪いと覚ったのか、敵は一旦後退して、視界を確保しようとしているようだ。


「なら、こっちから!」

 タケトは再びジャンプして、黒煙の中から飛び出した。


 ビュン!


 タケトの機体が黒煙から外に出たタイミングで、相手が撃ってきた!

 狙われていたのだ!

 すでにバーニアの推力は上限に達しており、あとは落下するのみ。


「しまった! かわせない!」

 どうする⁉ 盾はないのか⁉


 そのとき、タケトは思った。

「ビームライフルも想像で具現化できた。なら、盾だって!」


 深紅に彩られた左アームを前に突き出し、手のひらを開くように、マニュピュレータを広げた。

(頼む! 防いでくれ!)


 すると、マニュピュレーターの前に、半透明なポリゴン状の物体がいくつも現れ、それにビームが当たる!

 

 ボン!


「ス、スゴい――」

 自分が想像した盾とは違うが、それでも敵の攻撃を防げた。


 それからも相手は断続的に撃ってくる。それが全てポリゴン状の障壁に当たる。


 さすがに弾が尽きたのか、相手の攻撃が止んだ。

「今だ! いける!」


 右手を突き出して、相手を狙った。


 ボーン!


 またもや一発で仕留める。


「あと、五機――」


 地面に着地し、正面の人型兵器へ右アームを向けた。その時、横から別の機体がこちらに向かってくるのを

 エネルギー塊を剣のように長く伸ばした形状の武器。それを振り上げて突進してきた!


「ビームサーベルまであるのか⁉」


 しかし、慌てることなく相手の攻撃をまたポリゴン状の障壁で防ぐ。エネルギー塊の一部が障壁と反応して、激しく火花を散らした!


「この間合いじゃ、ビームライフルは使えない。なら、こっちもビームサーベルで!」


 敵が持っている武器を自分も手にしている想像をする。すると、右手に光線状の輝く剣が現れた。

「これでどうだ!」


 右手を振り抜く。相手の分厚い装甲がバターのようにするっと分断された!


 ドーン!


 爆発の前に、タケトの機体は後方へ跳んでいた。誘爆を避けるためだ。


 再び宙を舞う赤い機体。当然、無防備でもある。空中で機体を捻り、相手の攻撃に備えた。

 だが、残った四機の人型兵器はタケトに背を向け、全速力で逃走している!


「逃がさない!」


 まだ上空にいる状態で、手にしていた光の剣を水平上に振り抜いた。


「届けぇ!」

 もちろん、 相手に届くような距離ではない。それでも、タケトは剣先が遠くまで伸びるようなイメージを持った。

 そんな兵器など存在しない。とっさに思い付いた攻撃だった。


 なのに、その通りに剣先が伸び、数百メートル先にいた四体を切り裂くのだった!


 ドドドォォォォォォォォン!


「――えっ?」

 放った本人でさえ、信じられない光景が目の前で起こった。

 そのまま、ストンと着地する。いくつも立ち上る黒煙の中、タケトは呆然とした。


「な……なんだ? この機体は……」


 イメージするだけで具現化する武器。存在しない武器の使い方まで、想像するだけでそのとおりになった――


 敵の巨大人型兵器を十体、それを三分も経たずに全滅させてしまったのである。


 タケトはレバーから両手を離し、自分の顔の前で広げた。震えている。あの戦い方を思い出し、まだ身震いしていた。


「ボクが、やった――のか?」


『――――――――タケト様? タケト様?』

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