保安官と農民 その15 完

「イーハー!」

 ユウキリスは海を眺めていた。

「また冒険だぜ! 次は島か? 大陸か? なんでもいい、行くぞー!」

「ちょっと待ったあああ!」

 大きな声にユウキリスは目を向けると、そこには先程別れたはずの羽山 宙光が立っていた。

「妹はこの国の新たな王になる! 兄の私は邪魔だ!」

 叫ぶ宙光に対してユウキリスは落ち着いていた。

「そうか。…よかったな、由紀ちゃんに使命が見つかってよ。豊かな国になりそうだ。で…お役御免のあんたはどうするんだ?」

「貴様は好かーん!」

 宙光は叫んだ。

「言い方が悪かった。好かんとこがある。そうやって意地悪な発言が多いのも好かん。だが不思議と惹かれるところがあり、追いたい背中でもある。その矛盾の真意がわからん。」

 二人はしばらく黙っていると、ユウキリスが口を開く。

「我は孤独が好きだ。だが、旅の中で、荒野を進むとき、一人で背中が不安だった時もある。一人じゃ楽しさも限度があるってことだ。」

 ユウキリスは手を差し伸びた。

「我もあんたの気に入らねえとこはある。だが同時に惹かれるものがある。我らは真逆だ。だが性格が真っ逆さまな我とあんた なら、なんでもできる気がするぜ。一緒に世界をめちゃくちゃにしないか?」

「私の答えは君の魂がもう知っているはずだ。」

 宙光はそう言うと、ユウキリスを背後から持ち上げた。

「おい、何しやがる⁉︎」

「今日から私は君の翼だ! 無限の可能性へ共に飛び立とう!」

 数秒後、海の上を宙光はユウキリスを持ったまま、羽ばたいていた。

「イーハー! 最高の気分だぜ! あんた我より速いんだな!」

「ふふ、君が喜んでくれて嬉しいよ。」

「もっと強くなろうぜ、宙光! そして世界を我らの思い通りにしよう!」

「おおおおおお!」

「イーハー! いい雄叫びだ! ワハハハハ!」

 こうして保安官と農民は出会い、後に多くの者に恐怖を植えつけるのだった


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怪英記外伝 ユウキリス伝説 宇宙の帝王 @sexyprince8

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