第6話 部活動見学編②
部活動見学二日目。
今日は第二体育館にやって来ていた。
第二体育館では、剣道部、卓球部、バトミントンが部活をしていた。
今日も今日とて、俺と朝日奈は楪の部活動見学に付き合っていた。
今、楪は女子剣道部に混ざって一緒に素振りをしていた。
「お〜い! 永海と朝日奈さんじゃん! 剣道部の見学に来たのか?」
声をかけてきたのは沖田だった。
沖田は剣道の防具を着ていたので一瞬、誰なの分からなかった。
「いや、ただの付き添いだ」
そう言って俺は楪のことを指差した。
「お〜! 楪さんじゃん! 剣道に興味あるのか!?」
「いや、それは本人に聞いてみないと分からないけど」
「声をかけてくるわ!」
沖田は楪のところに走って行った。
「騒がしいやつだな」
「そうですね」
楪のところに向かった沖田は楪と一緒に素振りをしていた。
お互いに陽キャだから気が合うのかもしれない。
二人とも楽しそうにしていた。
だからって、俺のハーレム候補である楪のことを渡すつもりはないが。
「そういえば時間は大丈夫か? 今日、生徒会のやつがあるんだろ?」
「もう少ししたら行くつもりです」
「そっか。結構人来るんかな?」
「どうでしょう? 一年生の中で生徒会長を目指す人が何人いるかですね。生徒会長になれるのは生徒会の人だけですから」
「なるほどな。白樹学園の生徒会長をしてたってだけで箔が付くから結構集まりそうだな」
「永海さんも一緒に生徒会目指してみます?」
「ありではあるな」
スキルを使えば生徒会長になることは簡単だ。
ちなみに向こうの世界では生徒会長を二年間務めたから経験値はそれなりにある。
「でも、やめとくよ」
向こうの世界のように俺の顔がイケメンだったら迷わずに立候補してたんだろうけど、こっちの世界の俺の顔は生徒会長には向いていない。
現生徒会長の星雲や朝日奈みたいに俺の顔には花がないからな。
「そうですか。永海さんが一緒にいてくれたら心強かったのですが」
残念そうな顔でそんなことを言われてしまっては話が変わってくる。
「分かったよ。生徒会長には立候補しないけど一緒に行くよ」
「本当ですか。ありがとうございます」
朝日奈は天使のような笑みを俺に向けてきた。
(ほんとズルいよな)
この笑顔は反則級だ。
俺が朝日奈のことを落とす側のはずなのに気を抜いたらコロッと落とされそうになる。
「それじゃあ、行くか?」
「そうですね。行きましょうか」
俺と朝日奈は楪の元に向かった。
「陽子ちゃん。そろそろ行きますね」
「え、もうそんな時間? 分かった。永海君も一緒に行くの?」
「付き添いでな」
「そっか。じゃあ、静葉のことは任せた!」
「任された」
「静葉終わったら連絡してね!」
「分かりました」
楪に声をかけた俺たちは第二体育館を後にした。
「それで、どこに行くんだ?」
「小体育館です」
「小体育館でやるのか。それは結構規模がデカいな」
「毎年小体育館でやっているみたいですよ」
「凄いな」
小体育館は第二体育館の近くにある。
だから、小体育館には数分もしないうちに到着した。
「おー。結構集まってるな」
「そうですね」
小体育館の中にはすでに沢山の人がいた。
ここにいる全員が生徒会長を目指している(俺以外)ということなのろう。
白樹学園の生徒会長という肩書は卒業してからその真価を発揮する。
特にメディア進出を狙っている人にとっては絶対に欲しいものだろう。
なぜなら、その肩書があればメディア界で成功できると言われているからだ。
「そういえば、朝日奈は卒業した後、メディア進出でもするのか?」
「し、しませんよ」
「じゃあ、なんで生徒会長になりたいんだ?」
「それは、憧れだからですね」
「憧れ?」
「はい。正確には、白樹学園の生徒会長という肩書に憧れを抱いているのではなくて、白樹学園の生徒会長をされていたある人に憧れを抱いているというのが正しいですかね。その人みたいになりたくて、生徒会長をしてみようと思っているという感じです」
「なるほどな」
朝日奈には朝日奈の事情があるらしい。
「さ、私たちも中に入りましょう」
「そうだな」
俺たちも小体育館の中に入った。
小体育館に入ると入口のところにテーブルが置かれていて、その上に用紙と筆記用具が置いてあった。
どうやらその用紙に自分の名前とクラスを書くらしい。
「これに名前を書くみたいだな」
「そうみたいですね」
「俺も書いた方がいいか?」
「それは永海さんにお任せします」
「じゃあ、俺はやめとこうかな」
俺は名前を書かずに朝日奈だけがその用紙に自分の名前とクラスを記入した。
それから数分もしないうちに現生徒会長の星雲沙羅と他三人の女子生徒が小体育館の中に入って来た。
☆☆☆
「やぁやぁ、新入生諸君! 今年もたくさん集まってるねぇ~!」
踏み台に乗った星雲は小体育館に集まった俺たちのことを見渡した。
「さて、君たちの貴重な時間を奪うのも申し訳ないから早速説明に入るよ~。まず、ここにいるってことは全員が生徒会長を目指してるってことでいいよね?」
その言葉に朝日奈は大きく頷いた。
朝日奈だけじゃなく、ここにいる全員(俺以外)が頷いていた。
なんだか俺だけ完全に場違いだった。
「OK! じゃあ、説明するね~。知ってる子もいると思うけど、生徒会長になれるのは生徒会に所属している生徒だけなんだよね~。で、じゃあ、その生徒会にどうやって入るんだってことだけど、それは……ここにいる君たちに競い合ってもらうよ」
さっきまでニコニコ笑顔だった星雲の顔つきが真剣なものになった。
「何で競い合うかってことだけど、来週行われる学力テストと体力テストで競い合ってもらう。それで一位を取った生徒だけが生徒会に入ることができる。つまり生徒会に入れるのは二人だけ。本気で生徒会に入りたいなら本気で挑んでね。生徒会に入ることはそう簡単じゃないから」
そこまで言うと星雲は手をパンと叩いた。
「はい! てことで、みんな頑張ってね~。応援してるから! 生徒会への道は狭く険しいかもしれないけど楽しむことだけは忘れないでね!」
真剣な顔つきから元のニコニコ笑顔でそう言うと星雲は三人の女子生徒を引き連れて小体育館から出て行った。
小体育館に集まっていた生徒もぞろぞろと出て行き、俺と朝日奈も小体育館を後にして、楪がいる第二体育館へと戻った。
第二体育館に戻ると楪は女子卓球部のところにいて、女子卓球部員とラリーをしていた。
「学力テストか体力テストで一位を取れか。なかなかな難題だな」
「そうですね」
「自信のほどは?」
「学力テストの方ならって感じですかね。体力テストは絶対に無理だと思います」
「運動苦手なんだもんな」
「そうですね」
スキルを使えば俺はどっちも簡単に一位を取ることができる。
(まぁ、生徒会に入るつもりはないからそんなことはしないけど)
それにしても生徒会に入る条件が学力テストか体力テストで一位を取ることだとは思ってもなかった。
どっちも一週間でどうこうできることではないはずだ。
かろうじで学力テストなら一週間でなんとかなるかもしれないが、体力テストは一週間ではどうにもできないだろう。
「あれ、戻って来てたんだ~。どうだった?」
女子卓球部員とのラリーを終えた楪が俺たちの元に来た。
「生徒会に入れそうだった?」
「難しいかもしれません」
朝日奈は楪に生徒会に入れる条件を話した。
「ふ~ん。そんな条件だったんだ。じゃあ、静葉なら余裕じゃん!」
「そんなことありませんよ」
「いや、余裕でしょ! 中学生の時、三年間学年一位をキープしてたじゃん!」
「マジか。それは凄いな」
「だから、静葉なら大丈夫だって!」
「そうでしょうか?」
「うん! きっと大丈夫!」
「陽子ちゃんにそう言われると本当に大丈夫な気がするから不思議ですね」
朝日奈はくすくすと笑った。
「ありがとうございます。頑張ってみますね」
「うん! 頑張って! 応援してる!」
そう言うと楪は女子バトミントン話ところへと向かって行った。
「俺ももちろん応援してるからな」
「ありがとうございます。永海さんが応援してくれるなら心強いです」
「一位になれるといいな」
「やれるだけやってみます」
俺にできることは応援することくらいだった。
だから、全力で応援しようと思った。
「ところで、永海さん。明日はお暇ですか?」
「明日か? 暇だな」
「それなら、私と一緒にお出かけしませんか?」
「それはデートの誘いか?」
「は、はい」
朝日奈は顔を真っ赤にして恥ずかしそうに下を向いていた。
美少女からのデートの誘いを断るわけもなく、俺の選択は一択だった。
☆☆☆
次回更新4/10(水)7時
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます