第5話 部活動見学編①
入学式の翌日の放課後から部活動見学が始まった。
期間は今日から一週間。
部活に入るのは強制ではないが、部活に入る人はこの期間中に入部届けを提出しなければならないという決まりらしい。
「お二人は何か部活動をなされるつもりですか?」
「俺はやらないかな」
「私もです」
「朝日奈は?」
「私も部活動には入らないつもりですが、生徒会に入るつもりです」
「生徒会か。生徒会って誰でも入れるのか?」
「確か生徒会長さんから選ばれれば入れると陽子ちゃんが言ってました」
「選ばれるって?」
「毎年一年生の中から生徒会に入りたい人を募って、その中から生徒会長さんが二人選ぶそうです」
「なるほどな」
体育館内にパシンっという音が響いた。
「よっしゃー!」
それに続いて、楪の喜びの声が体育館内に響き渡った。
俺たちは楪の部活動見学に付き合っていて、今はバレーボール部に体験入部をしていてバレー部の人たちと一緒にアタックの練習をしていた。
楪は運動神経が良いようでバレー部の人達に混じって一緒に練習をしていても遜色ないくらいの活躍をしていた。
「楪は運動神経が良いんだな」
「ですね。陽子ちゃんは昔から運動神経が良いですね。かけっこではいつも一番でしたし、中学生の時の運動会では毎年大活躍でしたよ」
「朝日奈は?」
「私は運動は苦手ですね。お二人はどうですか?」
「俺は普通かな」
「私も普通ですかね」
「嘘つけ。愛理は運動神経めっちゃ良いだろ」
「そんなことないですよ」
「いや、そんなことあるだろ」
愛理は、というより叔父の家の使用人をしている人たちはみんな運動神経が良い。
なぜなら、祖父母のボディーガードも兼ねているからだ。
使用人として雇われたらまずボディーガードとして護身術を一通り教えられ、それから使用人としての仕事を一通り教えられることになっている。
だから、俺は子供の頃から愛理に運動で勝てたことが一度もなかった。
(まぁ、今なら勝つことはできるだけど)
『身体能力強化』のスキルを使えば大人相手だろうと負けることはないだろう。
「静葉! 危ない!」
楪の声でバレーボールが朝日奈の方に向かって飛んできているのに気が付いた。
俺はすぐに朝日奈の前に立ちバレーボールをキャッチしようとした。
ここでカッコいいところを見せて朝日奈の好感度を上げるつもりだったのが、俺の目論見は愛理によって潰された。
愛理は俺の前に来るとこっちに向かって飛んできていたバレーボールをシュートするみたいに蹴り返した。
「大丈夫ですか? 天斗様」
「あ、あぁ、大丈夫」
「よかったです」
涼しい顔をしてバレーボールを蹴り飛ばした愛莉は元の位置に戻った。
「な、言ったろ? 愛理は運動神経めっちゃ良いって」
「ですね。カッコよかったです。深海さんありがとうございました」
「いえ」
「永海さんも守ってくださりありがとうございます」
「俺も守られたけどな」
「そうですね」
朝日奈はクスクスと笑った。
「静葉!ごめん!」
俺たちの元に駆け寄って来た楪は顔の前で手を合わせて朝日奈に謝った。
「大丈夫ですよ。陽子ちゃん。永海さんと深海さんが守ってくれましたから」
「静葉に当たらなくてよかったぁ~。静葉のことを守ってくれてありがとう」
「俺は大したことしてないから、お礼なら愛理に言ってくれ」
「私もただ天斗様を守っただけですので」
「それでも、ありがと。それにしても、まさか私の打ったボールが静葉の方に飛んで行くなんて思ってなかったよ~」
「さっきまで調子良さそうだったのにミスったのか?」
「まぁ、そんなところ。さて、バレー部はもう満足したし次の部活に行ってもいい?」
「次は何部に行くんだ?」
「どうしよっかな~。てか、本当にいいの? 私に付き合わせちゃって」
「まぁ、暇だからな」
楪と朝日奈の好感度を上げれるし、ハーレム候補になる女子を探せるし、俺にとって一石二鳥だったから楪の部活動見学に付き合っていた。
「深海さんもいいの?」
「私はここで失礼させていただきます。ご飯を作らないといけないので」
「そっか。付き合ってくれてありがとね」
「それでは天斗様。私は先に帰ります。お気を付けて帰ってきてください」
「愛理も気を付けてな」
「はい」
愛理は俺たちに頭を下げると体育館から出て行った。
「てかさ、永海君と深海さんって付き合ってるの?」
「付き合ってないな」
「さっきの会話とか同棲カップルのそれじゃん! いや、カップル通り越して新婚夫婦かと思ったって!」
「まぁ、同棲はしてるからあながち間違ってはないかもな」
「それで付き合ってないんだ」
「そうだな」
「てことは私も永海君と同棲したいって言ったらしてもいいってこと?」
「別にいいけど、本気じゃないだろ?」
「今のところはね~。好きになったら同棲したいって言うかもだけど。その時はよろしく♡」
「それは何が何でも俺のことを好きにさせないといけないな」
「私はチョロくないから頑張ってね♡」
自分でチョロくないと言っていた楪だったが『好感度』のスキルを使ってみると楪の好感度は70になっていた。
出会って一日で10も上がるのはチョロい証拠だ。
ちなみに朝日奈にも使ってみたが、朝日奈の好感度は75になっていた。
どうやら朝日奈の方が楪よりもチョロいらしい。
「それで、次は何部に見学に行くんだ?」
「とりあえず、隣のバスケ部に行こうかな~」
「了解」
「静葉は時間大丈夫?」
「あ、はい。大丈夫です」
「じゃあ、バスケ部にレッツゴー!」
俺たちは隣のコートで部活をしていた女子バスケ部の元へ移動した。
移動すると楪は早速女子バスケ部の練習に参加していた。
女子バレー部でもそうだったが楪のコミュ力はかなり高い。
初対面なのにも関わらず、すでに女子バスケ部に馴染んでいた。
そして、バレー部の時と同じように持ち前の身体能力で現役の女子バスケ部に負けず劣らず軽々とシュートを決めていた。
「さすがだな」
「……そうですね」
「どうかしたか? さっきから上の空だけど。何か考え事か?」
「えっと……」
朝日奈は俺のことをチラチラと見ながら何かを言いたそうな顔をしていた。
俺は朝日奈に対して『読心術』のスキルを使った。
〈私も同棲したいって言ったら同棲させてくれるのでしょうか? でも、それを聞くのは恥ずかしいです〉
(そんなことを思っていたのか)
もちろん朝日奈が同棲をしたいと口に出して言ってきたら拒むことはしない。
むしろ大歓迎だ。
「な、何でもありません」
朝日奈は首をぶんぶんと横に振った。
どうやら葛藤の結果、恥ずかしいが勝ったらしい。
それから、三十分くらい楪が女子バスケ部の練習に参加している様子を一緒に見ていたが、朝日奈は心の声を表に出さなかった。
☆☆☆
更新日を月、土、水、木の7時に変更します。
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