第20話

 帰ってきた爺さんから革袋を5つ貰い今日は帰ることにする。腕をクイクイ引っ張り続けるエリスも帰ると知ったら腕を絡めて帰り道を引っ張り続ける、普段からやってくれないか?


「~♪」

「そんなに帰りたかったのか?」

「うん!」

「そうか……」


 引きこもり一直線だな。別に引き持ってはないか、俺の家の前で待ってたりしたし、人と接したくないんだろう。でも自警団再編までは待つから仕事はするだろうし……多分。




「今日も瓦礫……」

「どうして‥…?」

「いや、冒険者になったし……仕事はしないと」

「私勇者なのに?」

「俺はお付きでしかないんだけど?待ってる?」

「…………行く」


 渋ったな……。そんなにいやか?



 昨日のように座り込む爺さんに瓦礫除去の依頼を受ける旨を伝え秤を受け取る。エリスがポンポンのせて大きな物がなくなると帰ろう帰ろうと袖を引っ張る。いいのかこれで。

 爺さんは話しかけると芝をむしる手を止め箱から革袋を出し5つ渡してくる。なんだこの仕事。


 そんなことを数日続けていたら爺さんが怪訝そうに話しかけてきた。


「あの……魔王軍を退けた勇者様ですよね?」

「それは私ではなく……こっちにいる」

「……」

「その……瓦礫除去ではなく森の調査をお願いしたいのですが……」

「……」

「あの……だめですか……?」

「そもそも良いのですか?成り立てですが……」

「魔王軍を2人で退けた方に出す依頼ではないとは思ってはいますが……」

「いえ、冒険者っていきなりそういう仕事を受けるのは……」

「魔王軍討伐の記録は入ってますし……冒険者組合加入前でも加味したら大体なんでも受けられるとは思いますが……」

「加入前の実績は加味されるんですか……?」

「勇者様に溝浚いさせて等級挙げさせる冒険者組合があったらたぶんバカだと思います……1級でいいですかね?」


 それもそうだな……。いや俺はお付きなんだが?1級って何処?


「あの……私は……?それと1級はどのへんですか?」

「……魔王軍を退けたし問題ないのでは?最上位です。今のところは」


 本当にいいのか?エリス?


「……」

「森の調査するか?」

「…………うん」

「行きます」

「お願いします」


 謎のワンクッション止めてくれ。頼む、そこはなんとか話してくれないか?こうして俺達はおそらく魔王軍が登場しただろう森の調査に……。


「クロくん……」

「どうした?」

「帰ろ」


 明日から赴くことになった。




「クロくん、今日はピクニックだね!」

「森の調査だよ」

「……同じじゃない?」

「違うよ?」

「そもそも昨日から気になってたけど何を調査するの?」


 昨日言ってくれ、俺も知らないぞ……。どうして学術都市から出てから言うの?

 ウキウキしてるエリスを眺めながら何もなかったらどう報告したものかと頭を抱えた。

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