めがね

弧野崎きつね

めがね

「ねえ、なんで顔の輪郭変わらないの?」

「おい、いきなり失礼だな」

「ねえ、なんで?」

「俺のジャブをものともしないじゃん……。てか、何の話?」

「めがね」

「めがね?」

「そう、めがね。それ、なんていうか、その……世界を歪めるじゃん?」

「ねえ、ホントに何の話してるの?」

「だから、めがねで顔変わらないねって話!」

「顔の印象の話してる?」

「違う!……なんか普通さ、顔の輪郭を辿っていくと、めがねの辺りで凹むっていうか。顔のあるべき場所に背景が見えるっているか。目が小さくなるっていうか。レンズの機能として、目が良くなる代わりに与えられる代償があるでしょ」

「ああ、そういうね。お前の言葉遣い、なんでそう、いちいち壮大な感じなの?」

「うるさい、なんで?」

「おい、ジャブでの駆け引きを楽しませろ。……まあ、めがね掛けてないからかな」

「はあ?どうみてもかけてますけど?」

「これ、度なしなんだよ。なんならガラスも入ってないから、光が曲がる余地ない。アイウェアってやつさ」

「あの、私たち学生ですけど」

「学生だってお洒落してもいいでしょうが!」

「中学生ですけど」

「敬語やめて。お前の敬語怖いんだよ、取り調べ受けてる気持ちになる」

「校則に違反していないことをちゃんと確認されましたか?」

「おまっ、やめろっていってんだろ!取り調べのテイストを取り入れてくるな!」

「……」

「ねえ、なんでゆっくり手を伸ばしてくるの?こわいこわいこわい。気づいてないかもしれないけど、無言で他人ひとの目を突く格好になってるからね?大丈夫?ガラスないのを確かめたいなら、一回外すから」

「私、あなたに触れたいわ」

「わあ、情熱的なセリフ!お前の目を突いてやる、以外の意図を汲み取れないわ!」

「……」

「続行すんのかい。なになに、もしかして何か怒ってる?」

「……オマエって言われるの嫌い」

「……あー」

「キミって言って」

「ごめん、そうだった。君の言う通りだ、悪かったよ。」

「……」

「よし、帰りにクレープをおごろう!それでどうだろう?」

「……良いでしょう。ジャンボサイズですよ」

「光栄の至りです。貴く美しい、我が麗しの貴美。」

「あら。うふふ……私、あなたに触れたいわ」

「わあ、情熱的なセリフ!お前の目を突いてやる、以外の意図しか汲み取れないよ」

「目を突きますよ」

「すみませんでした」

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めがね 弧野崎きつね @fox_konkon_YIFF

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