第8話

それから、拝殿に誰かが来る度に柱の陰から見ている。あの男性と話をしてみたいという感情が高ぶるなか、カタクリに真実を問いただしてみても上手くはぐらかされ話を脱線させられる。

数週間後、拝殿にまた男性が来た。

果物や栗などを奉納し、手を合わせて娘を返して下さいと何度も願う。

「お願いします。どうか娘をお返し下さい。責任を持って育てますので、、、、どうか、娘に会うことでもお許し下さい」

それは、聞いていくうちに胸が締め付けられていく内容だった。

行方不明になった娘さんに会いたい、話がしたい。それを手伝うことが出来たならきっと、カタクリも本当のことを話してくれるだろうか。


「で、あの男の娘を探したいのか?」

夜、カタクリに言うと怪訝そうな顔をされる。

「だって、、、、可哀想だよ、、、、」一生懸命、拝殿に手を合わせて帰る男性が脳裏を過ぎる。

「もし仮に娘が見付かったとして、お前はどうするんだ」

「勿論、会わせる!」当たり前と言うように胸を張って言うと、カタクリはため息をついた。

「なら、その娘と会わせられない」

その解答は即ち、カタクリはその娘さんの居場所を知っているということになる。え、その解釈で良いんだよね?

でもカタクリはこの社から出たことがないって言ってたし、、、、ならその娘さんは前に話してくれた生き神の少女ということになる。

だけど生き神の少女はもう亡くなっているから会わせられない。でもカタクリの言い方から会おうと思えば会える、、、、どうゆうこと?

「あの男の妻と約束したんだ。『この子を幸せにする』って、、、だからあの男とは会わせられないよ」

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