曇天

読みかけの文庫を

棚に戻して

図書室を出る


お腹が空いたみたいで

購買でふらふら

お菓子を買う


何の気なしに

じゃがりこを齧る

曇り空のラウンジ


リードを外れた犬が

そこらを駆け回る

忘れられたビニール傘


ゼロもない頭の中

其処を過ぎる人に

ぼんやりと焦点をずらす


ふと思い出した

小説のなかの踊子

鼓の声に耳すませ


君は元気かな

ぽっと浮かぶ文字列

音のない衝動


今返事はこないかと

長押しのデリート

コピーしたままで


いつの間にか

じゃがりこは空に

指先の塩を舐める


従順な子犬は

飼い主について行く

何の迷いもないだろう


僕の頭にある一文

たったそれだけが

離れない


授業に行かなきゃ

容器を捨てて

パソコンを再起動した


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