ああ……メガネ様っ!!

日乃本 出(ひのもと いずる)

ああ……メガネ様っ!!


 ぶしつけな質問で申し訳ありませんが、皆様にお聞きしたいことがあります。


 皆様は、メガネ様がお好きですか?


 メガネ様が何かって?


 メガネ様は視力の悪い方がかけられる、視力矯正グラスのことですよ。


 うん? どうしてメガネに様付けするのかですって?


 じゃあ逆にお聞きさせていただきたいのですが、どうして皆様はメガネ様と様付けをしないのですか?


 だって失礼じゃありませんか。


 あの高尚かつ、素晴らしいフォルムを持ったあのメガネ様を様付けしないなんて、メガネ様に心を奪われたものとしては絶対にありえません。


 いえ。私はメガネ様をつけてはいません。


 だって、視力が悪いわけでもないのにメガネ様をつけるなんて、メガネ様に対する冒涜でしかありませんよ。


 まあ確かにファッションで伊達メガネというのもありますが、あれはちょっと私の主義に反します。やはりメガネ様は、視力矯正という意味があってこそのメガネ様だと思うのです。


 そもそもどうして私がメガネ様を崇拝するようになったか、ですと?


 よくぞ聞いてくれました! ほらそこ、うわ、めんどくせえみたいな顔しない!


 私がメガネ様を崇拝するようになった理由……。それを語るには、私の少年時代までさかのぼらなければなりません。


 私が小学一年生の頃のお話です。


 私は少し人見知りな性格で、クラスの他の子たちと中々打ち解けることができずに、孤独な日々を過ごしていました。


 そんな時、放課後にある人が私に話しかけてくれました。


 そのある人とは、担任の先生。


 先生はとてもやさしい方で、いつも一人でいる私を心配して声をかけてくれたのです。


 そしてその先生は、教育実習を終えたばかりの若い女性の先生でした。


 ちょっとおっちょこちょいで、多少天然なところがありましたが、とても一生懸命で生徒一人一人にとても優しく接してくれていたことをよく覚えています。


 そんな優しい先生……そして先生は……先生は……。



 メガネ様をかけていらっしゃったのですッ!!!!!



 先生は、メガネ様がなければ、ほぼ何も見えないといたくらいに視力が悪かったそうです。


 だからこそ、私に話しかけてくれた時に、先生のメガネ様が落ちてしまうというアクシデントが起こった時に、先生は必死にメガネ様を探していました。


 その時の先生の前かがみの姿は、実に刺激的なものでした。


 先生は、直球に言わせていただければ巨乳な方でした。


 そんな先生が、メガネ様を探す際に前かがみになってらしたのですが、その際に先生の胸元が非常に強調されるような格好になってしまい、当時の私はそんな先生の姿に衝撃を覚えたものでした。


 そして普段見たことのない、メガネ様を外した先生のお姿。


 今にして思えば、なんという官能的なひと時だったことでしょう。


 やがて先生は落としたメガネ様を見つけられました。


 その時、先生は生徒である私の前でおっちょこちょいな姿を見せてしまったことに気恥ずかしさを覚えられたようで、白い素肌を淡く朱色に染め上げ、はにかみながらメガネ様をおつけになられたのです。


 ああ、その時の先生のお姿のなんという愛らしさと神々しさ!!


 先生のお姿はまさに聖母マリアかのごとく!!


 私はその瞬間、メガネ様の偉大さに脳天を打たれました。


 メガネ様がある時でないときで、その人の印象をガラリと変えてしまうものであるという事実。一粒で二度おいしいというものですね。


 そしてメガネ様がないと目が見えないと、慌ててメガネ様を探す時の愛らしさ。


 ああ、メガネ様。


 あなたが存在しなければ、あの時の先生の奇跡的な美しさは成立していなかったことでしょう!!


 その日から、私はメガネ様に首ったけになってしまいました。


 なんですって? 先生には首ったけにならなかったのかですって?


 先生はあくまでも、メガネ様の依り代に過ぎません。


 先ほども申し上げましたが、メガネ様がなければ、先生のあの美しさは存在しえないのです。


 つまり、メガネ様こそが本体なのです。


 メガネ様こそが至高の存在なのです。


 さあ、あなたもメガネ様を崇拝するのです!!


 え? なんですって? 私がただのメガネフェチに過ぎないですって?


 当たり前のこと言ってんじゃないよバカヤロウ!!


 メガネっ娘こそが至高の存在なんだよ!! 異論は許さねえぞ!!

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ああ……メガネ様っ!! 日乃本 出(ひのもと いずる) @kitakusuo

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