時の巡りに逆らえず

学生作家志望

町の服屋

「おお!よく来たね!服買ってく?ぼっちゃん!」


確かそう言ってた。


友達が紹介してくれた服屋に初めて入ったあの日に店主の人が言った。


僕は普段から地味でネガティブな人間。だからその人のテンションにはなんとなくついていけてなかったし、いつも置いてけぼりだった。


若いのに黒い髭も鼻の下にあって、帽子も逆だった。DJ?みたいな勝手なイメージを持ってたっけ。


でも結局、その人の店に行くことはそれ以降無かったな…。


あんなに苦手だと思ってた人が今頭に思い浮かべるとなんだか楽しかったように思える。


町を通るとたまに思い出しちゃうんだよな…


あの賑やかで楽しそうな雰囲気のお店と服は今や白い空き部屋となって、テナント募集のシールが貼られてあるだけになってしまった。


その人がどこに行ったのかなんて名前すらわからないんだからわかるわけがないんだ。それに、また会っても僕が話についていけなくなるだけなんだ。だから、考えたって無駄なのに。


変わるのは服屋だけじゃない。町もいっぱい変わった。いっぱい巡った。


巡れば巡るほど、見たくなる景色と会いたくなる人が次から次に出てくるのはなぜなんだろうか。


1回しか店にも入ってなくて、しかもその人の雰囲気まで全てが僕とあってない!そんな軽い人間関係だった人のことすら思い出してしまうのだから、小学校の頃から会ってない友達とかだって当然、思い出してしまう。


なんでだろうなぁ。まったく答えは出ないけど、そんなところで、僕もそろそろ巡る番が来てしまった。


さて行こうか。


会ったことない人と見たことのない景色を見に。


新しい時間に巡りに行こうか。

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時の巡りに逆らえず 学生作家志望 @kokoa555

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