眼鏡ダンジョン

山本アヒコ

眼鏡ダンジョン

 ある日世界中にダンジョンが出現した。アニメや漫画、ゲームでよくあるファンタジーなダンジョンである。

 今のところその中から狂暴なモンスターが外に出てきた事例はないが、今後そうなることも考えられる。なにしろ現代科学では解明できないファンタジーなダンジョンなのだから。そのため各国は必死でダンジョンを調査しているが、その数があまりに多かった。

 ダンジョンはその多さも問題だが、広さも問題だった。どんなに狭いダンジョンでも面積は日本一小さい県より広いうえに、今わかっている最大のダンジョンは地球と同じ程度の惑星だった。これでは調査が簡単に終わるわけがなかった。

 なので比較的安全なダンジョンは民間に開かれることとなった。そのなかのひとつが、日本にある【眼鏡ダンジョン】だ。

「ああー! メガネメガネ……」

 モンスターの攻撃を回避し損なった男が自分の眼鏡をはじき飛ばされ、慌てた様子で地面へ落ちた眼鏡を探して手をさまよわさせる。

「腰のメガネポーチにあるだろ!」

 ゴブリンが持つ斧と剣を合わせて押し合いをしている仲間の男が怒鳴る。

「そうだったそうだった」

 腰に装着したポーチから予備の眼鏡を装着する。

「よし、これで……あれ? なんだかめまいが……」

「お前、それ鑑定前のドロップしたメガネじゃねーか!」

 装着した眼鏡には【混乱】の状態異常が付与された呪いのアイテムだった。

「すぐ外せ!」

「ごめん。取れない」

「呪われてるじゃねーか! メディック!」

「こっちも余裕ありませーん!」

 他のゴブリンと戦っていた回復役の人間の声に、男は舌打ちをする。

 このダンジョンは敵を倒すと眼鏡を落とす。宝箱にも眼鏡が入っている。眼鏡以外のアイテムが手に入らないのが眼鏡ダンジョンだ。

 ただの眼鏡ではなく、様々な付与がされた魔法のアイテムだ。攻撃力や防御力が上がったり、透視能力やアイテム鑑定、もちろん視力も上がる。だがなかにはデバフ能力が付与された呪いの眼鏡もあった。

 このダンジョンにはいくつかの制限がある。まず視力が低い人間しか入れない。そして眼鏡を装着した状態でモンスターを倒さなければ、経験値もアイテムも入手できない。なのでこのダンジョンに潜る人間は、全員必ず眼鏡を装着しているのだ。

「こうなったら、このまま戦うしかないっ」

「あぶねえっ! 俺を攻撃するな!」

「あれ?」

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眼鏡ダンジョン 山本アヒコ @lostoman916

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