第9話 「塩」

 隆慶一郎『影武者徳川家康』を原作とした原哲夫作画のマンガで、一番おいしいものは何かを談義するシーンがあった。そこで、お梶の方が「塩」であると発言していたのを覚えている。

 僕が好きな食べ物は何だろうかと考える。

 カレーライスもチャーハンも、カツ丼も好きだが、時々無性に食べたくなるのはシーチキンである。

 缶詰めから皿に移して、それをおかずとしてご飯を食べる。

 シーチキンにマヨネーズをかけることもあるが、元々、塩気があるのでそのままでもOKである。油もいい感じだ。

 翻って、いわゆるホルモン焼きのようなものが苦手である。両親も苦手で、子供の頃、食卓に上ることがなかった。

 学生時代、学校近くの定食屋さんに昼食に入ったことがあって、僕は何故か注文したい気持ちになってしまい、ニラレバ炒め定食を頼んだ。

 大変だった。ご飯が茶碗に多めだったから良かったものの、残さず食べるのに難儀した。

 そして、現在である。

 冷凍食品で袋詰めされている「直火焼 豚タン 塩レモン」(株式会社イシワリ)を御存知であろうか?

 ホルモン焼き等が好きな人物と食を共にする予定があった日、僕はドラッグストアの冷凍食品売り場で、これを手にした。「レモン」の文字があるので、僕でも大丈夫ではないかと思ったのだ。

 解凍し、実際に食べてみて驚いた。

 おいしい。これは、おいしい。

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