第7話 絵画について(開運!なんでも鑑定団)

 岩波文庫にディドロによる『絵画について』という本がある。解説の部分だけでも大変に勉強になる。

 ただ、僕はこの本を絵画というよりは、もっと広く視覚藝術(特に写真)の読解のヒントになるかも知れないという動機で購入したのであった。

 僕にとって絵画と言えば、焼き物・茶道具等と同じく、テレビ番組「開運!なんでも鑑定団」を視聴して眺める程度の距離の遠いものである。

 この番組を観ていて、スゴいと思ったのは、山口長男(やまぐち・たけお)の油彩画である。

 名前をWebで検索すると色々出てくると思うが、 東京国立近代美術館に所蔵の「竝 」のような作品には特に惹きつけられるものがある。

 吉本隆明が宇多田ヒカルさんの「Automatic」について、五回目でも九回目でもないところがいいという意味のことを言っていたけれど、そういう意味での「完成度」が試されるのが抽象画と言えるようである。

 一本の線が短くても、或いは一本の線を付け加えても、その絵は大きく形を変えてしまうであろう、と感じさせるような「完成度」があることが重要らしいと、「開運!なんでも鑑定団」を視聴してきて得た印象では、そうだ。

 それから、番組を観ていて人物で興味を惹かれたと言うと、鴨居玲(かもい・れい)だ。

 親鸞が比叡山での修行によって気づいた重要なことは、自分には修行で悟りを開くことはできないということ、であったというのは一般的で批判のない捉え方だと思う。

 それを念頭に、鴨居玲の、のっぺらぼうが描かれた作品を見ると悲しく思えてくるのだった。

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