石川啄木の赤き百合 エッセイ

滝口アルファ

啄木忌に寄せて 短歌1首紹介

4月13日は啄木忌。

石川啄木は、

1912年のこの日に、

26歳で夭折しています。


というわけで

啄木の短歌の中から、

好きな短歌を1首。


はてもなき曠野の草のただ中の髑髏を貫きて赤き百合咲く


はてもなきひろのくさのただなかのどくろをぬきてあかきゆりさく


〔口語訳〕

見渡すと

緑に覆われた野原が広がっている。

その遙か彼方に

しろじろと髑髏がひとつある。

そして

その髑髏をパカッと割って、

赤い百合の花が咲いている。


シュールで鮮やかですね。

情景はまがまがしいはずなのに、

髑髏の白と百合の赤と野原の緑、

それにおそらく青空の青、

それらのコントラストが

目が眩むほど美しい。

現代短歌でも、

なかなかこのレベルの短歌は

ないのではないかと思うぐらいです。


啄木の短歌というと、

センチメンタルなものや

ノスタルジックなものや

青春性や貧困などを

思い浮かべる人が多いと思います。

けれども啄木は、

こんな鮮烈な短歌を

作ることも出来る

前衛歌人でもあったのです。


このエッセイでは、

上記の1首を紹介して、

啄木忌へ捧げる

ささやかな供花といたします。




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