第46話 すんなり入れたダンジョンで、真っ先にコンビニ行って泣きながら食事する

――魔法使いユキコside――



キョウスケは結構打たれ弱い。

だからこそ虚勢を張って保っていたのに、魔王領にあるダンジョンで嫌な死に方をして馬鹿にされて、更にはホームにしている最果ての村でもフルボッコにされて……心がポッキリ折れてしまった。

こうなるとどうしようもなくて……。



「ねぇ、流石にずっとここにいるのヤバイって。国王からも催促状来てるよ?」

「うるせぇ……」

「もう一度魔王領に行ってから決めない?」



そう問いかけると布団に潜り込んでいたキョウスケは顔を出して、ブスクレながら「クソが」と呟き起き上がった。

文句言いつつでも動いてくれて良かった。二週間全く動かなかったから流石にもうダメかと思ったけど、やっと動けるようになったみたい。



「絶対ミツリの奴奪い返してモノにしてやる……。その為には魔王領のダンジョンに入らないとダメだ……。だが入れるのか?」

「次は入れる可能性もあるかもだし……入れなかったら戻りましょう?」

「それもそうだな……」



こうして私とキョウスケは人目を避けるように乗合馬車に向かい、魔王領にあるダンジョンを目指す。

次も入れないっとなったら流石にすぐ戻ろう――そう心に決めて。

居座って殺されるなんて真っ平よ!!

内心震えつつ馬車に揺られて一時間後、私たちは魔王領のダンジョンへと到着した。

受付……そうよ、とにかく受付!!!



「ちょっと! 前は追い出されたけど今日こそは!!」

「はい、勇者パーティの魔法使いユキコ様と、勇者キョウスケ様ですね。魔王領ダンジョンへようこそ」

「だから、私たちは!!」

「魔王様より、ダンジョンに入る許可が出ております。登録なさってからとなりますが宜しいでしょうか?」

「「へ!?」」



思いもかけない言葉にアタシとキョウスケが声を上げると、受付の魔族はニッコリ微笑んで「受付とご説明を受けますか?」と言われたので、仕方なく「はい」と答えた。


このダンジョンでは魔族や獣人、エルフにドワーフと言った者たちを殺すのは厳禁。人間同士の殺し合いも言い争いも厳禁らしい。

殺せば即ダンジョンから追い出され、再度入るのに金貨500枚が必要になる。

とても出せる金額じゃないと驚いたけれど、実際払ってまで通う冒険者はいるそうで驚きを隠せなかった。


また、次に人間同士の諍いに関しては、起こせば【魔王城ポイント】がガッツリ減る為、ポイントでダンジョンの上に登っていけるこのシステム上、ポイントを失うのはかなりの痛手らしい。


ダンジョン内では、ゲームセンターにカジノ、食事処にコンビニ、洋服屋などもあり、確かに透明なガラスの向こうでは冒険者であろうとも元居た世界にいるような恰好ばかりしている。

皆冒険者らしい恰好なんてしていなかった……。



「分かったわ。私は登録する。キョウスケもするでしょう?」

「ダンジョン二階は宿屋が中心なのか……」

「もう、するでしょ!!」

「するよ!! けど大事なことを聞かねーとだろ!!」

「何をよ」

「娼館はあるのかどうかだよ!」



本当にクソの屑野郎ね!!!

毎回本当呆れちゃう!!

幾ら最果ての町にいる間発散相手がいなかったにせよ、もっとマシな事聞けない訳!?



「どうなんだよ、娼館は!?」

「魔王様から特別に、教えていいと言われていますので教えますが」

「……どうなんだ」

「魔王城ポイントをかなり稼ぐことが出来れば……」

「あるんだな?」

「すでに5組の冒険者が到達している様子です」



この言葉にやる気を出したキョウスケだけど、本当に死んでも治らない病気ってあるのねって改めて思ったわ。

そう、馬鹿は死んでも治らないってね。

下半身馬鹿も死んでも治りそうにないわ。



「よし、これが魔王城カードだな……」

「首に下げて無くさないようにして下さいね」

「ッチ」



そういうと私たちは首にカードを下げ、魔王の作ったというダンジョンの中に入っていった。

まず真っ先に向かったのはコンビニだった。

駆け足でコンビニに入り、並んでる商品を片っ端から買っていく。

ジュース! 御菓子、ケーキ類にスパゲッティ!! どれもこれも元の世界では当たり前だけどこっちに来てからは全く食べれていない化学調味料の嵐!!


籠をドンッと置いて「お会計お願いします!!」と二人叫ぶと、レジのエルフは笑顔で素早く終わらせてくれて温めまでしてくれた。

それまで終わると袋を持って隣のイートインスペースに向かい、まずはジュースを一気飲みする。



「懐かしい味がするぅぅぅうううう!!!」

「懐かしいなぁぁぁああ!!!」



もうそれからは片っ端から開けて食べて飲んで!!

温めてあるスパゲッティの美味しさと言ったら、本当にここに住んでしまいたいと思うほどで涙を流しながら只管食べた。



「美味しいねキョウスケっ!」

「畜生! ウメェなぁ!!」

「こういうのを……カナデ君とかミツリは食べてるって事だよね……私たちをほったらかして……」

「そうなるな……」

「許せない……」

「カナデの婆さんだか誰かがキヌマートの店長なんだろ? こんないいスキル持ってるなら魔王側につかずに俺の方につけっての!!」

「本当それ!!」



そう言って文句をブツブツ言い合いつつ食べては飲んで、カナデ君とミツリの文句ばかり言いながら食べて飲んで繰り返した。



「とりあえずカナデ君とミツリ探しましょう。ダンジョンを回りつつ二人を探せれば問題ないし」

「それもそうだな」

「残りはアイテムボックスに入れて……そうと決まったらダンジョンの中を見て回りましょう! さっきからゲーセンみたいな音もするしパチ屋みたいな音もするし」

「騒々しいフロアだよなぁ」

「何より、私たち浮いてるわ……」



そう、周囲の冒険者すらクスクス私たちを見て笑うほどに浮いていた。

まるで現実世界の服を着こなした彼女たちや彼らが、アタシ達を田舎者扱いしているかのようで腹が立つ!!



「まずは服装を普通のにしましょ!!」

「そうだな……」



こうして私たち二人は服屋に入り、上から下までトータルコーディネイトで5着ほど購入したり、下着類も新しく購入して全部つけ終えてから武器以外の元の装備は全部アイテムボックスに投げ込んだ。

そうよ、この世界に来る前はこうやってオシャレだってしてたのよ……。

なんで忘れてたのかしら……。

ミツリが元の世界に戻りたいって駄々こねた時、あの時私も元の世界に戻りたいって言えば……今もパパやママと一緒にいて、オシャレして、何時もの生活出来たのに……。



「おい、ユキコそろそろ行くぞ」

「そうね」



そうは言っても私が選んだのはこっちの世界に居る事だった。

今ならまだ……やり直せる?

ミツリと一緒に元の世界に戻れる?

でも、どうやって……??

――そう思い悩んでも、答え何て出てくる筈無かった。





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