第37話 ダンジョン内でのアタシの立場と、そろそろやってくる屑勇者を迎え撃つ

【不可思議な店・キヌマート】は、ダンジョン内では知らぬものは誰一人としていないほど当たり前となり、一般的なキヌマートの働き手は【魔物用】は赤い羽織を、【人間用】は青の羽織を、そして総括者は白の羽織を着て歩く事を義務付けている。

その総括者たちと言うのは言う迄もなく、アタシにカナデ、ピアにトッシュにミツリの5人だ。


時折キヌマートを巡り、売り上げがどんなものかを見て回る為、白の羽織を着てカツカツとヒールを鳴らし歩く姿に、冒険者たちは「キヌ様だ!」と騒ぐ者もいる。

無論他所の売り上げも調べている為、キヌマートのキヌは店の総括者だと思われている節はあるけどねぇ。



「ダンジョン自体は過ごしやすい気温にしているが、最近だと鎧を着ている者たち=ダンジョンにきたての冒険者って感じだね」

「皆さん洋服店でラフな服装で臨んだ方がいいと判断したんでしょう」

「女性陣の華やかな事です事」

「オシャレは大事だと思います」



そういって歩きながら、このダンジョンで長く生活する者たちは鎧を捨て、普段着用の服を購入しラフな格好でカジノで楽しむ。

それも一種のステータスになっていった。

洋服店の在庫は沢山用意してあるし、全然問題はないのだが、最近では女性冒険者に捕まることが多くなった。



「キヌ様!!」

「おや、なんにか要かい?」

「あの、キヌ様のようなお化粧って買えるんでしょうか?」

「ん――……化粧品店ねぇ。魔王様に聞いて相談してみるよ」

「お願いします!!」

「ははは! 女に生まれたからにはオシャレはしないとねぇ?」

「「「「はい!!」」」」

「妖艶な女性になってみたいです!」

「私も――!!」

「自分に合う化粧を探すのは大変だよ? 頑張りな」



アタシこそが魔王だと気づいていない冒険者たちはそうやって相談してくる。

まぁ金を落としてくれるなら安いもんさね、ヒヒヒ。

コンビニも変わり映えが無いのも問題な為、商品入れ替えはちょくちょくしている。

魔族には肉系が人気だが、冒険者も肉系は人気が高い。

とはいえ、野菜類も食えと野菜を置くのだが、野菜類を買うのは女性がもっぱら多いらしい。

困ったもんだねぇ。

野菜スティックは男性陣も買うようなので多めに入れているが、甘いものやお菓子類は特に消えるのが速いそうだ。



さて、ダンジョンがここにきてそろそろ半年、アタシ達はコンビニの裏手に入らせて貰い、カナデに鏡のアイテムを出して貰って勇者たちが今どこにいるのかを確認する。

どうやらやっと最果ての村に到着したようで、一泊してからこちらに向かうらしい。

それなら――と外の受付に向かい、勇者がそろそろ来るが、暴れても入れないようにと再度念押しする。

暴れる可能性も視野に入れて受付嬢の所では受付を守る透明な強化ガラスで守られているが、魔法も通用しない造りになっている。

外で魔法使いが暴れても問題ないようにだ。


そこまで終えたら一旦二層へと趣き、あれから色々と変わった二層は冒険者たちも多く買い物をしている。

そろそろカプセルホテルと言うのを理解している者たちは、ドワーフの店で装備を整えたり、24時間コンビニには、早朝から夕方まではエルフたちがレジをし、午後は魔物たちに変わる。


また、他所の店でもエルフたちは働き、5層のエルフの町にあるスーパーにはエルフスタッフたちが働き、魔王城でも女性陣にはエルフの侍女をつけた。

エルフたちもまた移り住んで仕事をしているのだ。

また、エルフの多くは城で雇っており、メイドとして城を綺麗にして貰っている。



「さてさて、勇者の糞野郎がここにきて追い出されるのを楽しみながらみたいねぇ」

「そうですねぇ」

「私は会いたくないので……」

「ああ、会えば一発ヤラセロくらいはあの糞野郎ならいいそうだもんねぇ」

「最低ですね」

「同じ男と思いたくないです」

「しょうがない。一旦城に戻って様子をみようか」



こうして瞬間移動で城に戻ると、過ごしやすいようにアレンジしたアタシの部屋に集まり果物セットなんかもネットスーパーで購入して勇者たちのボロボロ具合を見ていく。



『こんな田舎に来るのに何日も乗合馬車とかキツイわ……ホーム設定しておこうぜ』

『本当其れ……でもやっと宿屋で寝れると思えば楽かも』

『これだけ体がガチガチだと適当な女見繕って性欲の発散も出来やしねぇ』

『仕方ないでしょ、回復のミツリがいないんだから』

『っち、まぁ、魔王城になんでミツリがいるのかしらねぇが、裏切りだよなぁ? 奴隷に落して俺だけの奴隷にしちまうか!』

『ヤリタイだけの癖に』

『はははははは!!』



元仲間すら奴隷に落すっていうのかい。本当に糞だね。

これで勇者と言うのだから世も末だよ。

犯罪者じゃないか。

そんな事を思いつつ中を覗いていると、宿屋に入り早々に眠りについた勇者一行。

一応風呂は入ったようだが……やだねぇ、デバフが酷すぎてみてられないよ。



「この勇者は元の世界でもこんな性格だったのかい?」

「元の世界でもあまり変わりませんね。性欲の強い男子って感じでした」

「性欲強すぎですわ、気持ち悪い」

「俺も一応性欲はありますが、このサルほどではないですしね」

「あははは! サルとは確かに言えてるね!」



そう言って笑っていると、トッシュも「俺も一応性欲は有りますが、このサルよりは随分マシかと」と苦笑いしている所を見るに、余程男性陣から見ても勇者はサルのようだという事だろう。



「さて、明日の朝にはお目見えだ。中に入れないと分かったテントでも張って頑張るのかねぇ」

「何とか入ろうとはするでしょうが」

「中には入れない」

「数日焦らしてからアタシ達がいつも通り店の巡回に向かい、そこでカナデとミツリがいたとしても騒ぎ立てるだけ騒いで中には入れない」

「んふふ! それ見ものですわ!」



そういって笑うピアにアタシもニヤリと笑うと、明日以降の楽しみが出来たので暫く楽しませて貰おうかねぇ……!




===========================

読んでいただきありがとうございます!

現在毎日更新中です!


続きが気になるや、応援してる等ありましたら

星や♡よろしくお願いします(`・ω・´)ゞ

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る