第11話・宇宙の放浪民ピピの正体が判明
カミュたちが船橋にもどると、前方の巨大スクリーンには船体に付着した、放浪島【パラミスト】が映し出されていた。
プルシャが言った。
「久しぶりの放浪島との遭遇だったので、見惚れてしまいました。異世界の方々に説明しないといけませんね。アレは宇宙の放浪島【パラミスト】……多少厄介な存在です」
ビキニアーマーのブラが、ガルムの声でしゃべる。
『宇宙を
イケニエが口を挟む。
「どうしてだ? あんな島ぶっ壊しちまぇば解決だろう」
イケニエの言葉を聞いた、ピピがタコ足触手でイケニエをつかんで、電撃を放ちながらイケニエの体を壁や床に叩きつける。
「ぐがぁぁぁ!」
「電撃ショック! ピピピ、イケニエさん酷いですぅ!」
イケニエを数回叩きつけたピピが、涙声で言った。
「あたしの故郷を壊してしまえなんて! よくそんなコトを平気で言えますね」
プルシャがビキニアーマーのパンツを通して、イケニエに説明する。
『イケニエさんに事前に説明しておくべきでした、放浪島【パラミスト】はピピの故郷なんです』
メリノがプルシャのビキニアーマーの前にヤンキー座りして、質問する。
「そりゃあ、知らなかったとは言え。イケニエの故郷を壊しちまぇは言い過ぎだな……その話し詳しく聞かせてくれ、アタイも島育ちだから興味がある」
『ピピの祖先は元々、パラミストで作られて、バイオ兵器生物だったのです』
「バイオ兵器生物? なんとなく、意味はわかる」
『創造した者たちは滅び、残ったピピの祖先が宇宙に実験施設があったパラミストを大地から離して、浮かべあのような形になりました……今は実験施設やバイオ兵器の生産工場は取り壊されて、自然あふれる平和な町や村の放浪島になったのです』
涙を手の甲で拭き取ったピピが言った。
「祖先は実験で誕生した生物ですけれどぅ、なん世代も経過していますから……すでに確立された一つの種族ですぅ」
スクリーンを眺めていたクーが言った。
「会話中のところを悪いが、放浪島がまた例の捕食をはじめたみたいだぜ」
スクリーンに目を向けると、パラミストからカニバサミのような金属アームが出ていて、プルシャの外装を剥がして口のような部分に運んで食べていた。
蛮族料理人がポツリと呟く。
「うわぁ……ボクらの方が食べられている」
カミュが言った。
「神は死んだ、世界は不条理で満ちている……この先、どうするんだ。なんで島に食べられているんだ?」
プルシャが口で説明する。
「パラミストは、捕食するコトで資源確保をしているんです……このまま黙って食べられているワケにもいきませんから、説得して捕食をやめてもらいましょう……パイ、パラミストへの通信回線を開いてください、ピピ説得お願いします」
「説得はしてみますけれど、今のパラミストのリーダーが誰になっているのか知りませんよ……パラミストの捕食行為が止まればいいんですけれどぅ」
「パラミストの通信回路繋がりました、スクリーンに相手側の顔出ます」
巨大スクリーンにピピとそっくりな、女性の顔が映し出される。
『ピピ555号ファイズ、久しぶり』
「ピピ123号ダー、久しぶり……単刀直入に言う、パラミストの捕食をやめさせて」
『こちらも単刀直入に言う……イヤだ、島の資源が枯渇している』
パラミスト側のピピの傍らから、別の二人のピピが顔を除かせる。
『なになに、あっ、555号じゃないの元気していた?』
「777号ラッキー、111号ワンダフル、久しぶり……あなたたちからも、暴食の捕食やめるように説得して」
ピピたちの会話言語が高速言語体系へと変化する。キュルキュルとしか聞こえない会話が数分間続いてから、元の会話にもどった。
『わかった、その条件で妥協する……船にいる妹たちをよろしく』
通信が終わり、宇宙の放浪島は去っていった。
◇◇◇◇◇◇
パラミスト島の脅威が去った女型要塞の通路を並んで歩いている、イケニエとカミュの姿があった。
歩きながらイケニエがカミュに質問する。
「そう言えば〝船にいるピピの妹をよろしく〟みたいなコトを、パラミスト島のピピが言っていたけれど……アレ、どういう意味なのかカミュはわかるか? ずっと気になっているんだ」
「さあな、直接ピピに聞いた方が早いだろう」
「ピピに直接かぁ、なんか苦手なんだよな……パイとかクーとかピピの宇宙から来た連中って」
イケニエがそんな呟きをしていると、通路前方の角からピピが、ひょっこり顔を覗かせた。
「あ、ちょうど良かった……ピピ、聞きたいコトが……い゙っ?」
ピピの隣から、もう一体別のピピが顔を覗かせる。そして、三体目……四体目……二十体目……三十体目とピピが増えていく、ピピたちが同時に言った。
「「「異物発見……排除」」」
増殖したピピの大群が、電撃を発しながらイケニエに向って襲いかかる、反射的に逃げるイケニエ。
一体のピピが、イケニエを追っている途中で立ち止まって、カミュの顔をじっと見てから一言言って去って行った。
「無害……共存」
ピピの分裂増殖した妹たちは、超異世界女型要塞の船内で生物の免疫細胞のように、侵入してきた異物を排除する役目を持っていた。
ピピの群に追われて逃げながら、イケニエの叫び声が聞こえてきた。
「なんでぇ、オレだけぇぇ!」
遠方からの、イケニエの悲痛な叫び声を聞いたカミュは一言。
「神は死んだ……世界は不条理に満ちている」
そう呟いた。
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