KAC20247 黄昏と君。そして僕の心。

久遠 れんり

好きな彼女。だけどぼくは、思いを告げられない。

 中学校の時から好きだった彼女。

 僕とは違い、社交的で明るくて。


 文化祭の話し合いの時だっただろうか、誰かが僕の言葉尻を捉え。文句を言う。

「そんなつまらないもの、やっても駄目だろう」


 僕は、中学生らしい出し物を考えなさい。そう言った先生の言葉に従っただけ。


 それなのに、「皆もそう思うだろう」

 などと言って、奴は、皆を煽る。


 その言葉に、皆が乗りかかったとき、彼女はかばってくれた。

「そんなことを言うのなら、良い案があるのね。言ってみて」

 すくっと立ち、凜とした姿。


 普段はもっと軽い感じだったのに、その時の彼女はかっこよかった。

 きっとその時から、強く意識をし始めた。


 気が付けば、目が彼女を追ってしまう。

 目があえば、それだけでドキドキしてしまう。


 その気持ちの正体に気が付いても、僕は打ち明けるのが怖くて、彼女には伝える事は出来なかった。


 だけど、目標としている高校を聞き、僕も追いかける。

 その位は出来た。


 きっと高校生になれば、何かは変わる。

 そう思ったが、変わることなど無く、僕は彼女を見つめるだけ。

 やがて一年が過ぎ、当たり前のように二年になる。

 そして、夏休みが終わって秋。


 彼女が変わった。

 他の誰もが気が付かなくても、僕にはわかる。

 見た目はおなじ。

 でも……


 何かが。確かに。


 少し時間が経ち、世界が赤に染まり始める。

 中には黄色もあるが、そう。多くの木々が赤く染まる。


 寒さを感じ、暖かさが欲しくなる時期。


 きっと彼女達も、そう感じるのだろう。


 黄昏時の赤とも紫とも判断が付かない複雑な光の中で、待ち合わせをしていたのか、大学生くらいの人が、彼女に手を上げる。

 遅かったことを責めているのか、彼女はそいつになにかを言っている。

 だが、そのふくれっ面は、彼が何かを言った瞬間に、一瞬で笑顔となり。二人は自然な感じで手を繋ぐ。


 黄昏の空がいたずらをして、赤以外の色が急速に色あせていく。


 楽しそうな二人は、僕とすれ違う。だが ――彼女は、僕に気がつきもしなかった。


 自分にとって大事な言葉も、告げる勇気が無い。

 意気地無しの僕は…… 


 もうすでに、きっと消えてしまったのだろう。彼女の意識からも。


 そして、急速に空の色は消え、黒く塗りつぶされていく。

 気がついてしまった、僕の心も一緒に……


 いま、すべての色が消える……

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KAC20247 黄昏と君。そして僕の心。 久遠 れんり @recmiya

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