合縁奇縁・舐犢の愛

 ありきたりで、耳にタコができるほど聞いててさ、昔は斜に構えて鼻で笑ったりしたけどもね、でも、みんなが言うだけあった。本当だった。


 君に出逢って、私の世界は180度変わったんだよ。


 昔はねぇ、要らないと思ってた。面倒だし責任なんかとれないし、一人自由に生きていくのが好きで、これからもそうして行くんだって思ってたのさ。

 もちろんね、一人の時間も悪くなかったよ。いや、宝石みたいに大切で、私の人生に必要な時間だったと思う。楽しかった。

 だけど、あの人と出逢って、恋に落ちて一緒になって。その時ですら、要らないと思ってたんだけどね。君に出逢わないように避けてたのに、お構い無しに君は私たちの間に降ってきたのさ。びっくりしたよ。

 そんでね、それだけ私たちに会いたいなら、まあ会ってもいっか、って決めたんだよ。これも巡り合わせだね、って。


 君の顔を見るまで本当に大変だった。思ってもみないことも沢山起きて、泣いた日もあったさ。君に会うために頑張らなくちゃいけないことも沢山あった。

 でも、君の顔を見て、君と出逢って、私の人生は思ってもみない方向へ進み出したんだ。

 君を待つ間だってとっても大変だったけど、小さな小さな君と家に帰ってからは目が回るような嵐の毎日だった。

 最初の一年は記憶も飛び飛びでね、写真を見てこんなこともあったっけね〜?とかね。でも、みるみる大きくなっていって、そして驚く程に意思の強い君のことがどんどん好きになっていった。

 たまにケンカもしたしこっそりぶぅぶぅ文句言う日もあったけど、私よりも本当のほんとうに優先しようと思った命は、心からそう思ったのは、君がはじめてだったんだよ。


 こんな風に思う日が来ると思わなかった。私は、私の命が一番だったのに!すべて君が変えたんだ。

 笑う顔につられて笑顔になって、服のサイズが変わってゆくことがうれしくて、苦しそうな様子に私も苦しくて、ただの泣き声なのに憎たらしく思って、君に母と呼ばれることがこんなに幸せだと思わなくて、私は君の虜だ。

 色んなことがあったね。うれしいこと、かなしいこと、たのしかったこと、つらかったこと。こんな日が来ると、あの頃の私はちっとも思ってなかったけれど。でも悪くないなって思うんだ。


 君と出逢って、君に出逢えて、共に日々を過ごせて、私は幸せだ。これから先の未来が、不安もあるけど楽しみだと強く思う。

 昨日の君、今日の君、明日の君、毎日違う君をみるのが楽しみだ。いつか、もっともっと大きくなった君を目のあたりにする日をわくわくしながら。健やかに、幸せに、大きくなってくれますように、って。


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