風に吹かれて

びょうびょうと風の吹く高原に立っている


太陽は中天をやや過ぎて

光が少しばかり陰り始めていた


まばらに草の生えた岩場に立ち

見下ろす景色はにぶく頭を揺らすよう


笛のような鷹の声が遠くから聞こえる

うつくしい狩人の歌だ


一際強い風が吹いた


バサバサと揺れる髪を何とか押さえつけて

視界を確保しようとする


大風の兄さんよ、手加減しておくれ

自慢の黒髪がこれじゃあ形無しだ


暫くなすすべもなく

風になぶられて


ふっと凪


次いでまた強風


まるで風が踊っているかのようだ


その風が私に囁く

これ迄に乗せてきた音を、命を、景色を

目を閉じてそのおしゃべりに耳を傾けた


肺に潜り込んでは出ていくそれが、

くらりとするほど気持ちが良い


彼らは私の髪が好きみたいだ

いつの間にか髪飾りを付けられていた


ああ、日が暮れる

惜しい事だ


帰路に着く間考える

この命の飾りに寝床を与えれば

どんな花が咲くのだろうかと


もしもうまく花が咲いたなら

きれいにドライフラワーにして

ガラスに閉じ込めて簪にしよう

しゃらしゃらと揺れる飾りもつけて


そして、また見せに行こう

きっとあの時の彼ではないけれど

彼らは私の言葉を乗せて、

彼の風まで届けてくれるだろうから


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