第38話 冒険者のランク★☆

 冒険者組合にはGからSまでランクが定められている。

 それらのランクに応じた依頼が用意されており、一部例外を除いて、自分のランクよりも1つ上と1つ下の依頼までしか行う事が出来ないように設定されている。

 これによって自分たちの実力以上の依頼を受けて危険に合うリスクを減らしたり、ランクの低い人たちの仕事を高位ランクが取っていかないように配慮されているのだ。

  そして依頼をこなしていくと徐々にランクが上昇していく。そのためランクを上げるための試験のような物は殆ど存在しない。逆に失敗を繰り返せば当然、降格もあり得る。そのため自分の特性に合う依頼選びが必須なのだ。


「はい。メイリーさん。これでFランクに昇格です。おめでとうございます。」


 最初は色々と組合とも揉めたが組合としても見た目は兎も角、この魔獣増加において戦力は幾ら合っても足りない。

 そうで無くともこの前、無駄な戦いで1人減ったのだから。そのためメイリーを1冒険者と認め、依頼を斡旋していた。

 駆け出し冒険者がやる依頼の代表が薬草採取なのだが、これがまた難しい。薬草は種類が豊富で素人には見分けるのが難しく、自生地も点在しており、一日頑張っても依頼の株数採取できず、依頼失敗となる者も少なくない。

 しかしメイリーには『鑑定眼』と空間魔法があり、家の手伝いで薬草の自生地にも心当たりがあるので、薬草採取の依頼も楽にこなせた。


「GランクやFランクの依頼はどちらかと言うと雑用的な仕事が多いです。けどFランクになったメイリーさんは、これからEランクまでの依頼を受注することが可能です。Eランクでは魔獣の討伐依頼など、危険な物も含まれますので気をつけて下さい。」

「はい。わかりました。」


 ランクが上がれば魔獣討伐、護衛、盗賊退治など、危険がある依頼が増える。

 逆に言うとそういう危険な依頼が、少し前までここら辺の街では少なかった。そのためランクを上げたいと思う向上心のある者は、この街を離れてもっと依頼の多い都市部に向かうのだ。


 ただ、このステンド領で近年発生している魔獣増加現象により、冒険者業が盛んとは言い難いこの街でも、かなりの数の依頼が出されている。しかしそれをこなせる冒険者は不足している。

 そのため、それらの依頼をこなせる側のメイリーは、想像よりも早くランクを上げていくことになるのであった。


――――――――――――――――――


 テスト週間に突入した。

 いつもは部活動に勤しむ生徒しか残っていない放課後になっても、自習室で勉強したり、VRルームで技能練習に励む生徒たちで、学校は溢れていた。本来なら授業以外で勉強をすることが少ない芽衣は、さっさと家に帰り、ゲームに勤しむのだが、今回は凛の練習に付き合っていた。


「だから、技能試験だと皆、同型の低スペックな『箒』を使用するから、いつもみたいに魔法制御を『箒』に任せっきりだと上手く発動しないんだって。要するに、速度は求めないから、魔法によって起こる現象をしっかりイメージしろ。はい、やって。」

「はいぃー。」


 1年時の、しかも1学期の期末試験など、そこまで難しい課題は出ない。そのため少し練習すれば、そこまで魔法技能が得意でない凛でも出来るようになっていた。


「まあこんな感じでしょ。あとは感覚忘れないようにしてね」

「うん。ありがとう。それにしても芽衣って何だか教えるの上手になったよね。魔法も勉強も」

「そうか? まあ慣れだよ慣れ。」

「慣れ?私そんなに芽衣に教えて貰ってたっけ?」


 芽依の、ゲーム世界での週1日での講師生活によって身に付けた教え方によって、凛の成績は中間試験に比べてぐんっと伸びるのであった。

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