出会いと衝突




ギーッと古い扉が軋みながら開く音がホール内にひびく


星「!!すごい!北川さん本当にここ使っていいのか!?」


北川「はい!主人から是非使って欲しいとのことです!裏手にレッスン室やシャワールーム、トイレ、ロッカールームとあと小部屋がいくつかありますから泊まり込みでも大丈夫です!僕もサポートしますので頑張りましょう!」



埃を被り薄暗いが立派な舞台のあるホールに2人の人影が足を踏み入れながら

楽しそうに会話をしていた。


星「ほんと!?

ありがと!!」


と軽くジャンプしながら喜ぶ星


北川「喜んでもらえて良かったです!」


星「ステージ立ってもいい?」


北川「もちろんです!」


怪場は北川の許可を合図に舞台に駆け上り中心へと立つと人のいない客席を見渡して大きく深呼吸をした


星「ここが満席になるのかぁ〜楽しみだなぁ。どんな劇やろうか?」

と思いを馳せる


星「……の前にまず掃除しないと」

少し冷静になり埃だかけのホールを見てそう呟く


星「ステージからまず掃除しないとかな?一刻も早く舞台で演技したいけど埃だらけじゃリハーサルする時に埃まっちゃうし滑って危ないから」


北川「確かにそうですね。お客さんを入れるのは劇団のメンバーが揃ってレッスンとリハーサルをして公演日時と集客が終わってからからになりますから当分先になりますし。客席の掃除は時間がある時にゆっくりやって行きましょう!」


星「そ、そうだった劇団if作って伊集院さんに活動場所もらえたのは良かったけど怪場、以外誰もいないんだった。」


と世露骨に膝をつく


北川「あ!その事なのですがすでに募集はかけています!」


星「マジ!?」


北川「はい!マジです!後、主人様の知り合いで演劇に詳しい方が1人いるそうでその方も劇団ifに入団します!」


星「ねねね!どんな人?どんな人??」


北川「名前は物部・R・黒乃(モノノベ・ルカ・クロノ)さん言います。

いろんな国をわたり

たくさんの舞台の手助けをしてキャストとしてもステージ立つお方で

いわゆるオールラウンダーですね!」


星「そんなすげー人が来んの!?……伊集院さんって何者??」


北川「ふふふ、主人様は劇団が好きな唯の資産家ですよ。

物部さん確か今日こちらに顔を出すと電話で仰っていたんですけど…」



と北川が腕時計を確認していると

舞台の向かい側にある劇場に入るための最も大きな扉が開かれた。


??「…………」

濡羽色の髪をした青年が銀色の瞳で怪場を見る


怪場「……??」

目のあった怪場は不思議そうに首を傾げた


??「…伊集院から呼び出されて来てみれば…これはどう言うことだ?北川」

怪場から目を逸らし埃の溜まった劇場を見回してそう問いかける


北川「!物部さん!


こちらの怪場 星さん!

これから劇団を作りこの劇場で活動されるのですがその一員になってほしいと主人様がお頼みしたと思うのですが?」


この黒髪の男が物部がと怪場は興味津々に凝視する。   


北川「あ!怪場さん!こちらが物部さんです!」

と北川は怪場にも物部を紹介した



物部「……いや、俺があいつからここに呼ばれた理由と違うな


…貴様、劇団の名と現在所属している人数、それと今までどこで演技を習った?実績は?」


顔を顰めながら怪場に問いかける


怪場「劇団の名前は【if】、団員は……まだ、怪場とあんただけだよ。


…………うち、貧乏だからそういうところで演技を誰かに習ったことはない…けど別に貧乏だからっていうのを理由にしたいわけじゃなくて!


全部独学でやってみたいって思ったからやってる!!」


物部「…はぁ〜、聞いて呆れるな…劇団員がいないのは愚か団長になる人間が独学だと??」

頭を抱えるようにため息を吐く物部


怪場「はぁ??聞いてれば偉そうに!

そりゃ独学だけど演技ちゃんとできるし!!高校の文化祭でだって好評だったし!!」

と噛みつく怪場


物部「くだらん。

貴様のやっているのは役者ごっこだ。


本物の役者とは独学だけで成立するような甘い世界じゃない。


プロからしっかり基礎を学び、そこから自分の演じかたを見つけるのだ。


今からでも遅くないどうやって伊集院に取り行ったかはしらんが今回の話を白紙に戻して

働きながらどこかの劇団に入って学べ」


怪場「…っ…でもっ!!」


物部「俺は、勢いだけでなんでもできると思っているガキは嫌いだ」


怪場「んだとコラァ!!怪場だって色々考えてだなぁ!?」

物部の言い方に腹を立てて怪場は今にもその喉仏を噛みちぎってやろうかと歯を剥き出しにする。


そんな二人を見て北川はあわあわと不安そうな表情で交互に二人の顔を見る


物部「アメリカに戻る、伊集院にはこの件は断ると俺から言っておく。」

と北川にいう


怪場「おいこら!!まだ話終わってないぞ!!」


物部「これ以上何があると??俺は役者になることを諦めろと言いっていないし、お前が次にすべきことも助言したはずだ」



怪場「……なら………」

拳を強く握りしめてぼそりと何かつぶやく怪場




物部「?」


怪場「その、プロに基礎を学んでからにしろっていうなら!

独学だけの怪場が嫌っていうなら

その基礎ってやつお前が教えろよ!!お前もすげープロなんだろ!!」

次の瞬間馬鹿でかい声でそう言った


物部「断る、俺はこう見えて忙しいのでな。

基礎を知らない、役者ごっこ中のガキを相手にしてられるほど暇じゃない」



怪場「じゃあこうしよ!今からここで演技する!それでお前が怪場を…役者ごっこしてるガキを教えてもいいと思ったらして!」


物部「人の話を聞いているのか??


それに埃だらけの劇場でやろうとする時点であり得ない。


劇場とは役者が最も輝き観客たちが心を奪われる場所だ。こんな埃だらけの場所を劇場とはよばないしここで演技するお前はただ埃を舞い上がらせる唯の迷惑ものだ」


怪場「うぐっ!!」


物部はそういう時スタスタと入って来た入り口から出て行ってしまった。


北川「す、すすすすいません!!物部さんてっきり了承済みだと思ってて!」


物部が出て行った後北川は勢いよく頭を下げて怪場に謝った


怪場「北川さんはなんも悪くないよ。

言い方が気に食わなくて喧嘩腰だったけどあの物部っていう人の言うことも悔しいけど理解はできる…」


北川「怪場さん……」


怪場「……けど、怪場なりに頑張って来たのをごっこ呼ばわりしたのはやっぱりムカつくから意地でも演技見てもらって怪場に基礎を教えたくなるようにしてやる!!」


と怪場は埃だらけの劇場でそう叫ぶのだった




____________________________


一方、劇場のすぐ前でタクシーを捕まえた物部はとある場所に電話していた



??【お?どした?もしかして早速、星は劇団員として活動できそう?】


電話に出たその人物は開口一番そう言った


物部【ふざけるな、伊集院…お前は俺に"才能のある奴がいるからあってほしい"と言ったんだ。


なのにいざ足を運んでみればまだ完成すらしてない劇団に入れだの、ガキの面倒をみろだの。話が違う。】


伊集院【まぁまぁ、そんなこと言わずに!ほんとのこと話したら絶対来ないと思って下手な嘘ついたのは悪かったけど!あの星って子の演技荒削りだけど本当にすげーんだって!



面倒見てやってくれよ!】


物部【断る。この件は終わりだ。】

そう言って物部は電話を切った。


しかしすぐに切ったはずの電話が鳴った



物部【…伊集院…貴様もしつこい…】

伊集院からの折り返しだと思い一様、応対したが


??【しつこいのは分かってやってんだコンニャロ!!】

電話から聞こえて来たのは伊集院の声ではなかった


よく見ると携帯の番号も知らない番号だ


物部【誰だ】


怪場【さっきお前にズタボロ言われた怪場 星ですけども!!】

と大声で叫ぶ怪場に物部は思わず耳から携帯電話を離した


物部【貴様なぜ俺の連絡先を】


怪場【北川さんから聞いた!言いたいことがあってさ!明日の夕方…うーん、16時くらい??もっかい劇場に集合な!それだけ言いたかった!じゃあね!】


物部【おい、待て!勝手に…】

物部が最後まで言い終わるのを待たずに怪場との電話は切れてしまった。


物部「はぁ〜」

物部は深くため息をつくと

タクシーを空港から近くのホテルへと行き先を変更するのだった。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

舞台上の怪物 鴉メルヘン @CaramelA

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ