第2話【リアル 池 輝男】

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 大学でできた2人の友達


 ムラ テピョン


 朴木ホオノキ 樹明タツアキ



 この2人は今後の俺の人生において

 なくてはならない存在になっていく



 たぶん…



 だって……



 この俺を慕ってくれているから

 大事にしたいと思う存在なんだ




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【構内のカフェスペース】


 たくさんの生徒たちが

 空き時間を思い思いに過ごす中

 俺はスマホを手にバイトを探していた



 生活が苦しいわけじゃないが

 社会人になると難しそうだから

 学生のうちに色んなことを

 経験したいと思ってて……


 その1つが社会勉強を兼ねたアルバイトだ

 分野を問わず検索をかける

 飲食業界は賄いがあるのが魅力だし

 アパレルは従業員割引きが魅力

 って、そこじゃなくて……

 

 どうせやるなら俺という人間を

 ガラリと変えられるレベルの

  と出逢いたい



「うーん」


 画面を見ながら唸る



 俺の向かいにはテピョンが座り

 白目をむいて船を漕いでいる


 その隣で樹明タツアキ

 いつも持ち歩いている愛読書に

 視線を落としているが

 読んでいるかは怪しいと思っている



 何故かって?



 さっきからチラチラと斜め向かいにいる

 女子たちを気にしているからだ



「ぉ……ここいんじゃね?」


「いいところあった?」


 即座に樹明タツアキが反応する



「18:00~0:00(主な仕事内容:接客)

 日給9,000円

 勤務時間は相談に乗ります

 毎週日月が定休日

 出勤は週1からでOK

 制服貸出あり、能力給あり」


「時給1,500円か……

 能力給でどれくらい稼げるんだろ

 週1からなら他のバイトもできるな」


 言いながら樹明タツアキは本を閉じ

 俺のスマホをのぞき見る



「一度お電話ください

 年齢18歳以上の募集

 女の子と会話したい方

 女の子と上手く話せない方も

 とにかく一度お電話を…」


 ガタッ!


 椅子を鳴らして立ち上がる樹明タツアキ



「俺も行きたい!」


「あぁ、一緒に行こうぜ」




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【大学近くのバーガーショップ】


 窓際の4人がけの席に座り

 バイトの面接官を待つ



「てかさ、面接がこんな所?

 会社も見ないで決める気なの?」


 目の前に座った樹明タツアキ

 不安そうに尋ねてくる



「あ? 会社じゃなくて飲み屋だよ

 てかクラブだからホストクラブ?

 最寄り駅伝えたら ここ指定されたんだ」


「え、大丈夫なのかよ…」


「その店、確か駅2つ先だし

 そんな遠くねぇし?

 来てくれるっつうから

 まぁ、気楽でいいじゃん」


 まだ身元も何も明かしてないし

 怪しいと思えばやめときゃいい


 そう思っていた俺は

 軽い気持ちで面接官を待っていた



「てかテピョンはなんでついて来たんだ?

 夜はぜってー 起きてらんねぇだろ?

 今も既に眠そうじゃん…」


「そう言うなよ空雅クウガ

 テピョンも社会勉強しないと…な?」


「う…む……( ˘ω˘ ) スヤァ…」


 同い年とは思えないほど

 テピョンは幼い…

 純粋過ぎて世の中を知らな過ぎる


 そしてド田舎から通っているから

 朝起きるのが早くて

 昼を過ぎるといつも眠そうだ



 時計を見ると

 そろそろ待ち合わせの時間だった



「電話くれたの君たち?」


 声のした方へ俺と樹明タツアキは顔を向ける


 視線が下すぎて目に付いたのは

 その人が着ている高そうな服



「どうも〜♪」


 少しノイズ混じりだが

 耳障りのいい低音ボイスに軽い口調



 顔を上げるとそこには

 黒いマスクをした男性が立っていた




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 ぬぉおおおおおおお!!!!!



 マスク越しでも分かるレベルの



 リアル【 イケ 輝男テルオ 】登場 !!!


 キタ━(゚∀゚)━!!!!



 黒マスクで顔の半分以上隠れてるけど

 アッシュグレーの短い髪に

 深いブルーのカラコンがよく似合う

 キリッとした涼し気な目元が印象的な

 誰が見ても納得なイケメンだ



「どうも【club月光】から来ました

 代表の三馬ミンマ 心優ミユウです

 君たちもしかして H大生かな?」


「「「 はっ、はいっ!」」」


「はははっ♪

 緊張しなくていいよ」


 くったくなく笑う三馬ミンマさんを

 まさに( ゚д゚)ポカーンと見ていた俺


 ……いや、俺たち3人共に

( ゚д゚)( ゚д゚)( ゚д゚)ポカーンだった



 だって同じ男なのに

 なんだこの色気……

 テピョンもイケメンだけど

 系統が違う

 いや、レベルが違うんだ……



 いったい 小レベルなんだ???



 すると三馬ミンマさんが俺を見て

 少し のぞき込むように腰をかがめると

 目を細めながら優しく低く囁く



「隣り、いい?」


 ズキュ-(//°◽︎°//)→ ン♡


 うわっ!?

 近くで見ると迫力…

 それにすげぇイイ声…



「はいっ!」




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 うぉおおっカッコイイ!!


 マスクを外した三馬ミンマさんの顔面は

 キラッキラして輝いて見える

 こ、これが…か!



 三馬ミンマさんに隣に座られて

 緊張と興奮でテンションが上がった俺は

 至近距離でその尊顔をジロジロ眺めていた



 三馬ミンマさんはこの距離で見られているのに

 何食わぬ顔で俺たち3人を見ている


 てか…テピョンを見ても無反応……


 この人すげぇ……



「えーっと、電話をくれたのは?」


 そして優しい笑顔で問いかけてきた



「あ、俺です…」


 そう言うと三馬ミンマさんはこちらを向く

 俺は恥ずかしくて思わず目を逸らし



「でも、バイトは全員希望です」


「おぉ! そうなんだね?

 3人来てくれると助かるなぁ

 もしこれから時間あるなら

 ウチの店、見においでよ」


「「「 はい是非っ!」」」


 3人声を揃えて返事した



「あはは、元気いいねぇ」


 三馬ミンマさんは目を細めて笑い

 キョロキョロと店内を見回す



「変わってないなぁ」


「来たことあるんですか?」


 三馬ミンマさんの呟きに樹明タツアキが反応した



「駅名聞いて、すぐこの店思い出したよ

 昔、少しの間バイトしてたんだよね」


「そうなんですか

 地元この辺なんですか?」


 今度は俺が尋ねた



「いや、違うよ

 僕 H大卒なの、君らの先輩だよ」


「えっ? マジすか !?

 こんなカッコイイ人

 今の H大にはいませんよ!」


「Oh, Yeah♪」


 素直に出た俺の賞賛の言葉に

 親指を立てウインクした三馬ミンマさん



「Wow…運命かも」


 思わず心の声が漏れた



「あはは、かもね♪」



 ケラケラと笑う

 三馬ミンマさんはとても好印象で


 バイトは三馬ミンマさんに出逢った時点で

 これはもう行くしかない!

 と、俺の中では半分以上決まってた



 この後 三馬ミンマさんは

 懐かしい味を食べたいと言い

 俺たちの分も奢ってくれて



 腹を満たしてから

【club月光】へと向かった






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