Colors

日乃本 出(ひのもと いずる)

オープニング〜世界一の舞台〜


 出しきった。俺たちは、間違いなく全てを出しきった。


 他のメンバーの表情も、俺と同じように、完全に全てを出しきったというような清々しいものとなっていた。


 思えば、まさかこんな世界の舞台に立てるなんて、あの時には夢にも思わなかった。


 俺は今までずっと一人であることをやり続けていた。


 そのあることとは、ダンス。


 ただ、ダンスと言っても巷で流行っているようなヒップホップダンスではない。


 俺のやっていたダンスはポップダンス。


 周囲にポップダンスをやっているものは一人もいなくて、そしてポップダンスを一緒にやろうというやつもいなかった。


 ダンスってのは一人でやるよりも、大勢でやったほうが表現の選択肢が広がり、それはまた一人では表現できることの限界があるということでもあった。まあ、一人じゃないと表現できないこともあるのだが、俺のやりたいことは数人じゃないとできないことだったのだ。


 だからこそ俺は、一人でポップダンスをやり続けることに限界を感じていた。


 そんな時、なんとなく始めたSNS投稿。


 最初は期待もしていなかったSNS投稿だったが、なんとそこから火が付き、俺はそれなりに有名になり、そして全国にも俺と同じような人間がいるということを知った。


 俺はそういう人たちと交流をし、そしてダメもとで呼びかけてみた。


 一緒に、やってみませんか?


 すると、呼びかけた人たちは、まるで俺からの呼びかけを待っていたかのように、二つ返事でOKしてくれた。


 それから、ネットを使ってお互いの練習状況を交換しあい、月に二度ほど集まって動画をとり、その撮った動画をSNSに挙げるという活動をつづけた。


 最初はそうでもなかった反響だったのだけど、動画の投稿を続けていくことで、海外の有名なアーティストに俺たちが投稿した動画が目にとまり、それを海外のアーティストが紹介してくれたことで一気に人気に火が付いた。


 それからはもう、あれよあれよという間に色んなメディアに呼ばれることになり、そしてずっと夢見ていた世界一のダンスチームを決める大会に出れることになった。


 世界絵も指折りのダンスチームの名前の中に、俺たちのチーム名である『Colors』が含まれているのを見て、メンバー同士で涙を流しながら喜んだ。


 そして今。


 様々なジャンルの集合体である俺たちのチームは、世界大会でのステージを終え、その結果発表を他のチームたちと共にステージ上で待っている。


 どうか、俺たちのチーム名を――どうしようもなかった俺たちが集まった、強烈な個性という色を持った人間が集まった『Colors』の名をアナウンスしてくれ!!


 やがて、アナウンスの声が会場に響き渡り始めた。


『今回の優勝チームは――――』

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

Colors 日乃本 出(ひのもと いずる) @kitakusuo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ