小さき竜と人間の子どもの弟子と梅干しと

藤泉都理

小さき竜と人間の子どもの弟子と梅干しと




「えへへ。これならいくらでも食えるぞ。師匠」

「っぎゃああああ~~~!!!」











 吾輩は、竜である。

 小さきちいさき竜である。

 まあ、小さいとゆうても、大人の人間よりは大きい。少しだけども大きい。

 ゆえに、吾輩を師匠と崇め奉る人間の子どもである弟子は、吾輩の三分の一ほどの大きさである。


 人間の弟子は、吾輩から魔法を習っておる。

 なかなかに、勉強熱心な子である。

 将来はきっと優秀な魔法使いになると今から楽しみにしておるのである。

 そんな自慢な弟子ではあるが、吾輩と意見が一致しない事も多々ある。

 当然だ。

 吾輩は吾輩、弟子は弟子。

 違う生物なのだから、一致しない事があって当然である。

 ゆえに、弟子が吾輩の大好物である梅干しが嫌いでも、まあしょうがないと受け入れておった。

 のに。

 あやや、これはどうした事か。

 弟子が魔法で、梅干しを、真っ赤な梅干しを。


「えへへ。青色にすると酸っぱさがなくなるなんてびっくりだね。師匠!」

「っぎゃあああああ~~~!!!」


 真っ青な梅干しに変えてしまったのである。

 正確には、吾輩と弟子だけ、梅干しの色を赤から青に見えるようにしたようなのである。


 師匠に魔法をかけられるようになるなんて、なんて立派になったんだ弟子よ。

 梅干しと言えば真っ赤である、真っ青にするなんて、なんて事をしてくれたんだガキャア。

 嬉しさと怒り。

 相反する気持ちが同時に誕生する中。

 美味しい美味しいと真っ青な梅干しを食べまくる弟子は、本当に嬉しそうだ。

 どうやら、吾輩の好物である梅干しが食べられなかった事が悲しかったらしく、どうにかして食べられるようにしたかったらしい。

 なんていじらしい弟子じゃ。


 弟子だけ真っ青に見えたらよかったのにと思うも、怒りよりも嬉しさが勝ろうとする中。

 弟子から食べてみてと言われて、真っ青な梅干しを見た。

 真っ青だ。

 だが食せばきっと、いつもの梅干。しではない。

 ブルーベリーだ。

 げに不可思議視覚効果よ。

 早く魔法を解こうぞ。













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